間もなくに迫った競馬の祭典・日本ダービー。当初は混戦模様と言われていたこの世代も皐月賞の驚異的なパフォーマンスでソールオリエンスがひとつ抜け出した形か。またスキルヴィングも3連勝で青葉賞を制し、ダービー候補に一躍名乗り。大一番が近づいている。

 

 そんな日本ダービーに関して、昨年のレース後にひとつ面白い話を聞いたので紹介したい。話の主は美浦の小桧山悟調教師。何でも自厩舎の出走のあるなしに関わらず、調教師になってからというもの、ダービーだけは毎年必ず現地で生観戦してきたという師。曰く、東京競馬場の調教師席に、そこに座って見ていた調教師の馬がよくダービーを勝つという席があるというのだ。

 

 小桧山「勿論、毎年必ず全部ではないけどね。勝った馬を見ると、不思議とその席にその馬の調教師が座っていることが多いんだ。今年(2022年)、小島のところの馬が使っていてちょっと話題になっていただろう。だから、是非座ってみなよと提案したんだ」

 

 小桧山調教師がそう話す小島というのは勿論、美浦の小島茂之調教師。昨年のダービーで小島厩舎と言えば、ご存知オニャンコポンである。その愛らしい名前と、有名な漫画のキャラクターにちなんだことからネットを中心に人気を集めていた。というわけで真相を確かめるべく小島調教師に話を聞いた。

 

 小島「ははは。いや、そうなんですよ。小桧山先生が是非にと教えてくれたのでね。折角の機会ですし、その席に座ってダービーを観戦させてもらいました。残念ながらその椅子の力を借りてもダービーを勝ち切れるほど今のオニャンコポンにはまだ力がありませんでしたが、そういったものも含めてやっぱりダービーは特別ですよね。雰囲気を楽しませてもらいました。また来年もダービーに馬を出走させてこの席に座れるように頑張りますよ」

 

 さすがは前向きな小島調教師。熱い思いとともに、実際に席に座ってレースを見ていたことを教えてくれた。残念ながら今年の出走予定馬の中に小島厩舎の馬の名前はないが、そもそも出るだけでも容易ではないのがダービー。また来年の出走に期待したい。

 

私「・・・と小島先生、言ってました」

小桧山「そうだろう」

私「なるほど、面白いですね・・・。あ!じゃあ小桧山先生がスマイルジャックで2着した時もその席に座って見ていたんですか?」

小桧山「・・・」

私「・・・」

 

小桧山「え?何?」

私「だからディープスカイに差されちゃったんじゃないですか・・・(困惑)」

 

昨年のダービーを制したドウデュース オニャンコポンは8着

 

赤塚俊彦(厩舎取材担当)
1984年7月2日生まれ。千葉県出身。2008年入社。美浦編集部。

Twitterやってます→@akachamp5972

 

 「ダービー馬のオーナーになることは一国の宰相になることより難しい」などと言われますが、毎年7000頭近い馬の中から出走できるのは僅か18頭。出走するだけでも大変なダービーが迫っています。ちなみに小桧山調教師は2008年にスマイルジャックとベンチャーナインでダービー2頭出し。それぞれ2着、9着と健闘し、戴冠まであと一歩でした。来年定年を迎える師にとって今年は最後のダービーでしたが、プリンシパルSで出走権を得られず、残念ながら出走馬はなしとなりそうです。

 私の担当厩舎からは武井厩舎のハーツコンチェルトが出走予定。小島厩舎のロードクエスト、古賀慎厩舎のアジュールローズと2頭出走した2016年以来のダービー取材に力が入ります。

 さて、今年「その席」にどの調教師が座っていたか、レース後にでも小桧山調教師にこっそり聞いておこうと思います(笑)