いつのまにかサザエさんの父、波平さんの設定年齢に近づいてきた。
テレビで見ていた影響かも知れないけれど、きっとその年齢になればもっと落ち着いた生活を送っていて、何事にも動じずに対処できる人になっているもんだと子供の頃は思っていた。
現実はと言えば、落ち着きとは程遠いい日々。仕事に関しても、調教も予想も、そしてパドックで馬を見ているときも、ちょっとしたことが気になって不安になって迷ってしまう。
それなりにキャリアと年齢だけは重ねているのに、達人の域にはまだたどり着けそうにない。
この秋のGI戦線、ここまでの結果を見るとそんな迷い多き精神状態がまともに影響しているような惨憺たる結果。
何よりも自分を迷わせている大きな原因は関東馬の好調さにある。
秋華賞、菊花賞、天皇賞秋と関東馬が3連勝。これは2018年のアーモンドアイ、フィエールマン、レイデオロ以来の3年ぶり。ただし、その前となると30年以上さかのぼった1987年。秋華賞が設立される前で、該当するエリザベス女王杯をタレンティドガールが勝ち、菊花賞をサクラスターオー、天皇賞がニッポーテイオーの年だった。
この時はまだ入社前。トレセンに出入りすることなどもちろんなく、自分のキャリアとしては2回目の貴重な出来事だった。
そして言い訳するのであれば、前2回と違って3頭とも1番人気ではないどころか、関東馬の中でも2番目の人気だったこと。更に関東馬で1番目の人気だったファインルージュ、オーソクレース、グランアレグリアと3頭とも馬券にしっかりと絡んでいるように、判断が難しかったこともつけたしておいた方がいいのかもしれない。
ただ、嘆いているのではなくて、これが何を意味するのかということ。
今年に入ってから、更に関東馬の層が厚くなってきたという証拠になるとは言えないだろうか。
関西馬に対抗できる関東馬を探すのではなく、関東馬の中の順列をもっと見極めなければならない時代になってきたのかもしれない。すくなくても、そういう感覚が必要になってきたのは間違いないのだろう。
自動計測に伴ったウッドコースの改修など、美浦トレセンの改修工事がどんどん進んでいる。
坂路の延伸工事も進んでおり、来週から南馬場は新スタンドに移って調教を見ることにもなる。
そんなひとつひとつが、馬にも人にもいい効果があるのかもしれない。
対応しなければならないことは山積しているが、関東馬が強くなって仕事のやりがいも大きくはなってきた。
結果が出なくて落ち込んでいる場合ではない。目の前に解決してくれる馬が走っているのだから、もっと目を凝らして、間隔を研ぎ澄まさなければいけない。
何事にも動じないのではなくて、落ち込んでもしっかりと立ち直って、再び進んで行けることこそが年齢を重ねた意味かも知れない。
そして、この秋の失敗をしっかりと糧にする。
これこそがトラックマンとしてのキャリアなのかもしれない。
とはいえ、ちょっと負けが込んできたな~
今週末はGIこそないけれども、重賞が目白押し。更に未明に行われるアメリカのブリーダーズカップもある。
頭も体もすっきりさせて、ぼちぼち結果を出していかなかれば。
美浦編集局 吉田 幹太
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。