ローズSは、06年の阪神競馬場の外回りコース新設以来(ローズSでの使用は07年から)、2番目に速い1分45秒2の決着になった。雨の影響があった今開催3日目までより馬場状態が良く、何よりレッツゴードンキが2~8Fを11秒台のラップで逃げたことがその要因だが、同レースにおいて、緩やかな3~4角のカーブで12秒台に落ちなかったのは、今年の他に09年、13年の以下2例となる。ブロードストリートが制した09年の1分44秒7は当時のレコード。デニムアンドルビーが制した13年はどしゃぶりの雨の中での数字で、終い3F11.9→12.5→13.2の急失速ぶりからいかにもキツいペースだったことが分かる。ちなみに逃げ切りはただの一度、07年のダイワスカーレットだが、4F目からの大きなコーナーを12.4―12.4―12.1にダウンしていて、今回のレッツゴードンキの11.6―11.7―11.9とはまるで違うもの。レッツゴードンキは桜花賞で前代未聞のスローペースをつくりながら、ローズSでは速いラップを繰り出した。個人的な見解では、引っ掛かっているというより、スピードの絶対値が上という印象を受けた。鞍上の腕もありコンタクトが取れないほどには見えず、残り3Fでは手綱にゆとりがある。3歳秋を迎えて短距離の母系の血が色濃くなってきたのか、あるいは休み明けで走りたい気持ちが前面に出たのか、興味深い試走となった。
過去の前哨戦との比較で参考にしたいのは、同じ良馬場で、ペースも走破時計も速かった09年。先制したのはそれまで1200mに使われていた1000万クラスのメモリーパフィア(17番人気)で、これに2~3馬身の距離を保って続いた2番手にクーデグレイス(10番人気)。今年のレッツゴードンキのハロン毎の通過タイムはこのクーデグレイスに近い。優勝したのは3~4角で1番人気のレッドディザイアに先んじ、馬場の中ほどから抜けてきたブロードストリート(5番人気)。2着に、中団馬群を進み、残り400mで馬群の外に出したレッドディザイア。3着には、残り300mで逃げるメモリーを捉えて先頭に立った伏兵クーデグレイスがクビ、1馬身差で粘り込んだ。この年の秋華賞はローズS組1、2、3、4着馬が2、1、4、5着を占め、別路線からの掲示板は札幌記念2着から臨んだ1番人気ブエナビスタ(2着入線3着降着)だけ。ローズSは本番に直結するトライアルとして知られるが、本番さながらの序盤から緩みないペースになったことで、相関関係が深まったのではないか。実力・実績、人気も上位だった1~3着馬はともかく、格下のクーデグレイスが続けて健闘したことからも、それは推察できる。留意すべきは1~5着馬はすべて内を回っていたこと。前哨戦で外を回ったレッドディザイア、ミクロコスモスも本番はインのコース取り。外を回っては厳しいが、内を通るとうまく馬群を捌けない恐れがあり、そのパターンに当てはまってしまったのがブエナビスタ(4角で急に外側に斜行)とブロードストリート(被害馬)と言えるだろう。
さて、今年。タッチングスピーチが鮮やかな追い込みを決め、オークス馬ミッキークイーンがこれに次ぐ2着に入り、秋緒戦としては順調な滑り出しだ。だがしかし、2頭は4角で大外を回り、長い直線をふんだんに使って加速をつけてきた。次の京都内回り2000mでどんな戦法に出るのだろうか。クーデグレイスの頑張りようを思い起こすと、レッツゴードンキの逆襲があるかもしれない。
◆15年タッチングスピーチ 良
平均ハロン11.69 上り46.8-34.9 ペースM
[通過タイム]
600m 800m 1000m 1200m 1400m 1600m
35.1―46.7― 58.4―1.10.3―1.21.5―1.33.0
[ラップタイム]
12.5―11.0―11.6―11.6―11.7―11.9―11.2―11.5―12.2
◆09年ブロードストリート 良
平均ハロン11.63 上り46.6-35.2 ペースM
[通過タイム]
600m 800m 1000m 1200m 1400m 1600m
34.5―46.3― 58.1―1.09.5―1.20.9―1.32.5
[ラップタイム]
12.4―10.9―11.2―11.8―11.8―11.4―11.4―11.6―12.2
◆13年デニムアンドルビー 重
平均ハロン11.97 上り49.5-37.6 ペースH
[通過タイム]
600m 800m 1000m 1200m 1400m 1600m
34.6―46.3― 58.2―1.10.1―1.22.0―1.34.5
[ラップタイム]
12.3―10.9―11.4―11.7―11.9―11.9―11.9―12.5―13.2
【参考】◆07年ダイワスカーレット 良
平均ハロン11.79 上り45.7-33.6 ペースS
[通過タイム]
600m 800m 1000m 1200m 1400m 1600m
35.6―48.0―1.00.4―1.12.5―1.23.7―1.34.7
[ラップタイム]
12.9―11.1―11.6―12.4―12.4―12.1―11.2―11.0―11.4
栗東編集局 山田理子
山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。