師走競馬に突入しても番組上はまだ秋季。それでも、秋の東京・京都開催が終了した先週が、気持ちの上ではひとつの区切りということになるでしょう。この秋も、タ-フではGⅠの熱い戦いが続いてきました。関東で5週連続GⅠが施行される春とは違って、秋シーズンは実にほどよい日程。時間的にも気持ちの面でも、春よりはずっと余裕が生まれます。それ故、掉尾を飾ったジャパンCもテレビ観戦とはいえ、それなりにレースを堪能することができました。

 自分にとってのジャパンCは、〝傾いた西日に向って走る〟というイメージが強烈で、それはまさに〝金色に眩しく輝く決戦〟といった趣(最近でいえばジェンティルドンナの2012年)。残念ながら今年の府中の空は午後から雲に覆われ、その楽しみはお預けになってしまいましたが、各馬が横に広がっての攻防は、たとえ曇り空の下でも見応えのあるものでした。
 
 カレンミロティックの逃げで始まったレースは、前半3Fの入りが35秒2で後半3Fが35秒3。流れが落ち着く傾向にあるこのジャパンCで、たとえコンマ1秒でも前半3Fの方が速かったのは、最後に外国馬(アルカセット)が優勝した2005年以来。また、1000m通過タイム59秒3は、中山代替の2002年と重馬場だった2003年を除く過去20年の平均を1秒2も上回るものでした。ここ数年のジャパンCであれば、おそらくラブリーデイの競馬で〝ドンピシャ〟だったはず。しかし、今年のこの流れでは、そのラブリーデイより後ろにいたショウナンパンドラ、更には、内で脚を残していたラストインパクトの方に利が働いたということでしょう。
 これで09年以降の7年では、牝馬が5勝2着2回の好成績。近年のジャパンCは完全に〝牝馬のためのレース〟になった感があります。ただ、この牝馬の活躍の背景には、スローで上がりの勝負になりがちな近年の傾向もあると考えていたため(それゆえ、どの年も僅差の接戦)、今年のこの流れの中で、男馬相手に地力を発揮したショウナンパンドラには格別の評価を与えていいかもしれません。

 ところで、1着ショウナンパンドラ、2着ラストインパクト、3着ラブリーデイ、4着ジャングルクルーズ、そして、5着サウンズオブアースと、今年もまた着順掲示板をすべて日本馬が占める結果となりました。これで、今年を含む過去10年間で7回目となる日本馬の掲示板独占です。また、日本馬が10年連続で優勝、同じく10年連続でのワンツー、そして、9年連続で上位3着までを独占と、ジャパンCにおける日本馬の勢いは一向に止む気配がありません。

 対して、4頭が参戦した外国馬ですが、最先着を果たしたのはサウンズオブアースにクビ差で続いた6着のイラプト(仏)。以下、ナイトフラワー(独)が11着、トリップトゥパリス(英)が14着。先団につけて、レース中盤までは存在感を示したイトウ(独)も、結局は最下位の18着に沈みました。勤皇の志士であり、若かりし頃は攘夷論者だった伊藤博文にあやかって命名されたというイトウですが、自身が日本にきて攘夷討ちに遭ってしまうとは何とも皮肉な話……。
 とにもかくにも、外国勢は今年もまた、その実力を発揮することができませんでした。

 2011年の秋、ジャパンCが第31回を迎えるにあたってここで取り上げたコラムでは、ジャパンCの歴史を振り返って、「外国馬が優位に立った最初の10年、両者がほぼ拮抗した2度目の10年、そして、日本馬が圧倒した3度目の10年……。これを受けて、今年から始まる4度目の10年は果たしてどのようなものになるのか」と結んでいます。しかし、それから4年。日本馬優勢の状況はまったく変わることなく、いや、更に加速の度を増しており、もうこのジャパンCにおける力関係が大きく動くことはないのでは……、そんな思いにもとらわれてしまいます。

 創設当初、私達に大きな夢を与えてくれたジャパンC。外国馬の奮起によって、国際舞台と呼ぶに相応しかった昔日のあの輝きを、もう一度取り戻してほしいものです……。

美浦編集局 宇土秀顕

宇土秀顕(編集担当)
 昭和37年10月16日生、東京都出身、茨城県稲敷市在住、A型。昭和61年入社。内勤の裏方業務が中心なので、週刊誌や当日版紙面に登場することは少ない。『リレーコラム』から『週刊トレセン通信』となり、内勤編集員という立場で執筆者に残ることは肩身が狭いが、競馬の世界、馬の世界の面白さを伝える、そんなコラムが書けたらと考えている。趣味は山歩きとメダカの飼育。
 さて、ひと月近く前の話になってしまいますが、昨年ここで紹介した望月の草競馬に今年も行ってきました。昨年同様、絶好の秋晴れ、そして紅葉の真っ盛り。更には、予想していなかった相馬野馬追の甲冑競馬(詳細と写真はブックログのこちら美浦編集局の方に)。次に観戦に行けるのが5年後であることが本当に残念です。