勝負事はやっぱり勝たなきゃあかん。

 会社に入ったころ、先輩に言われたようなつぶやかれたような……

 最近、それを痛感する日々が続いています。

 先週は中山、阪神、福島と馬券を買い続けて、日曜の中山9Rまでひとつも馬券が当たらなかった。

 この状態になるとすべて自分の流れが悪いことが原因のように思えてくる。

 帰り際に雨が強くなり、コンビニで会計に手間取っていたらバスに行かれてしまったり、ひと足先にトイレに入られたり……

 ツキだけの話ではないのに、何をやっても今はダメなんだと思い込み気分がどんどん塞ぎ込んでしまう。

 ところがひとつ馬券が当たると一変。

 さっきまで塞ぎ込んでいた気持ちがパッと明るくなって、体の中の活力が復活してくる。

 さらに立て続けに当たったりした日にはもう、何をやってもうまくいくんじゃないかと。

 自分はちょっとした病気なんじゃないかと思ってしまうけれど、勝負事で一番効く薬はやはり結果が出ることなんだなと思う。

 デビューしたばかりの新人ジョッキーが次々と勝ち上がっている姿を見ると心底良かったな~と感じる。

 100キロ近くも体重のある自分がジョッキーの気持ちがわかるのかと問われれば、分からないことの方が多いだろう。

 それでも初めて社会に出て、いきなり結果が求められる状況で勝てないという辛さは勝負事をかじっている自分にもわかるような気がする。

 ほかのスポーツとは違って、アマチュア時代とは全く別物という競馬の特性も辛さの一員になるのかもしれない。

 そうなると大事になってくるのは周囲にいる人のケアになる。

 早い段階で馬の特性や能力を見抜くことが我々の商売だけではなくて、競馬人にとっては大事なスキル。

 そのせいか新人ジョッキーを見るときも早い段階で判断しがちな気がする。

 ひとつの判断や発言が、まだ20歳前後の可能性を大いに秘めた若者の一生を左右するようなことにもなる。

 自分たちの商売にしても勝手に判断して馬券を買う分には問題ない。しかし、早い段階での身近な人間同士の会話にしても気をつけなければならないだろう。

 ジョッキーの現役寿命が延びているのは間違いないが、今のトップジョッキーすべてが20年後もトップでいることはさすがに考え辛い。

 となれば今の20代以下の若者たち、もしくは、まだ学校にも入っていない少年少女に託すしかない。そして現状以上に世界で活躍する人材がいる可能性だってある。

 我々などの報道関係者を含め、競馬人のすべて支えて、伸ばしてあげる方向に持っていければ一番いいのかもしれない。

 その点、自分の好きな相撲では最近、順調に若手が伸びてきて、幕内以外でもかなり面白い取り組みが増えてきた。

 ひと頃の暴力事件などで騒がれたような劣悪な部屋が減って、しっかり指導しようとする若い親方が増えてきたのが大きな要因ではないかと個人的には思っている。

 それもその親方たちがみんな横綱だったりするのだから、教えてもらう方も素直に受け入れやすいのかもしれない。

 その意味で言えば2月に引退した福永祐一現調教師には大いに期待できそうだ。

 馬は勿論だけれども、是非ともあとを継いで競馬界を支えるようなジョッキーを育ててもらいたい。

 さてさて、その先週の競馬。日曜中山の9Rに続いて、福島、中山、阪神の10Rと立て続けに単勝が当たって、これは一転して大儲けの一日かと。

 しかし、WIN5が福島のメインレースで崩れてからは、桜花賞などずぶずぶとハズレ続けて……

 やっぱり勢いだけでもダメなんですね。

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。