こんにちは、栗東所属の丹羽崇彰です。坂路の調教取材を担当しています。

今週は中京競馬場で芝1200mのG1、高松宮記念が行われます。

昨年のスプリンターズSの週も私がこのコラムの担当になっていまして、その時にも書いたと思いますが、短距離G1のレース当週の調教は多くが坂路コースで行われます。
更に、短距離(とダート)の重賞は関西馬の勢力が特に強く、今週の高松宮記念も20頭の登録馬のうち、関西馬13頭に対して関東馬が7頭。しかも7頭中2頭が賞金的に除外対象ということで、13:5の出走割合になりそうです。

まあ何が言いたいかと言うと、坂路調教班として今週は重責があるということです。

予習がてら1週前調教を坂路で行った馬を見ていこうと思います。1週前は意外とCW等のコースで追い切った馬が多くて、坂路調教馬は6頭でした。五十音順にいきます。

(1)アグリ
3/16(木) 良馬場 49.8―36.2―23.4―12.0 横山和騎乗 併せ馬0秒8追走0秒6先着 一杯に追う

この週の坂路は時計の出やすい馬場状態だったので50秒切りの時計には特に驚かないけど、いつになく意欲的に追い切ったなというのが第一印象。

テンからそこそこのペースで行っているので、ラップの最速区間が2~1Fの11秒4→ラスト1Fは12秒0とやや失速。苦しくなって少し右にモタれ気味だったが、脚取り自体は力強くて気配は良かったと思う。

その後1日置いて、18日(土)から坂路でキャンターを再開。日曜日(19日)の時計がいつもより遅くてギリギリ15―15になった程度だが、ハードな1週前調教をしたあとだから仕方ないかな。

G1へ向けてきっちり仕上げてきた感じ。

(2)ヴェントヴォーチェ
3/16(木) 良馬場 57.5―42.0―26.9―13.5 助手騎乗 単走 馬なり

個人的に好きな馬だし、もともと軽め調整の厩舎だし、中2週だし……と自分を納得させようとしたが、G1に臨むのならもう少し時計出してもほしかったな~、と思う。

4歳時に福島→函館と中2週で転戦した時でさえ、1週前調教はもうちょっと負荷をかけてた。

動きが硬いとかそういうのはないので、レース当週の調整内容を注視したところ。

(3)ディヴィナシオン
水、木の追い切りはなく、日曜日(19日)の15―15程度。

中山遠征から中2週だけど、それにしても軽め。個人的な超勝手な推測だけど、前走で幸運にも賞金を加算できた(15番人気2着)ので、急遽使うことになったのではないか。厩舎的にもその可能性はありそう。

違ったらごめんなさい。

(4)トゥラヴェスーラ
3/15(水) 良馬場 51.9―37.2―23.7―12.0 丹内騎乗 単走 馬なり

北海道でおなじみの丹内騎手だが、栗東で見ると新鮮。よく見ると背中に「YUJI TANNAI」って書いてある服を着ていて、お優しいなと思いました。

トゥラヴェスーラはずっと赤いメンコを着けていたけど、この中間は知らない間にスッピンになってた。随分と馬の印象が変わるもので、最初はすぐにこの馬と認識できなかった。

レースの1週前に強い負荷をかけるのがパターンで、昨年の高松宮記念1週前調教と時計的にもほとんど同じ。でも、今年の方がいい。本当に8歳馬?ってくらいの躍動感。昨年は鮫島駿騎手騎乗でラストは少し右にモタれてたけど、今年はまっすぐ、力強く登坂。

しかも、レース2週前にあたる8日にも、永島騎手騎乗で4F49.5―1F12.8とびっしり負荷をかけてる。

レースでひと押し欠く場面が増えてきて、年齢的な衰えはあるのだろうが、調教気配に関してはまったくそれを感じさせない。

スッピン効果もあるのかもしれない。知らんけど。

(5)ピクシーナイト
3/15(水) 良馬場 50.3―36.6―24.0―12.1 助手騎乗 併せ馬0秒4追走0秒6先着 一杯に追う

阪急杯を左トモの違和感で回避したので、一旦放牧に出されて再仕上げの形。香港で故障して以来、約1年3カ月ぶりの実戦復帰となる。

大型馬で、他の短距離馬と比べるともともと調教はそれほど軽快って感じには動かない。圧倒的に強かった21年スプリンターズSの時の追い切りと何度も見比べてみたけど、今回の方が少し重い程度。

ブランクが長過ぎて常識的には厳しいだろうが、先入観を持たず、当週の調教はフラットな視線で見ることを心がけようと思う。それで動きが良ければ、狙ってみる価値はあると思う。

(6)ファストフォース
3/16(木) 良馬場 50.3―36.7―23.7―11.7 小崎騎乗 単走 一杯に追う

1週前調教のVTRなし。木曜日の2回目のハロー明けというほとんど馬が来ない時間帯なのに……。
でもまぁ我々には分からない事情があるのでしょう。

15―15で時計になりやすい厩舎。特にこの馬はよくプールにも入るので、調教欄をパッと見ただけでは順調に時計を出されているのかよく分からん。今回は順調そうだけど。

騎手騎乗でハロー明け直後という走りやすい条件ではあったが、1F11秒7は優秀。力感のこもった動きで、間隔が開いた影響は感じさせない。

好調の範囲だろう。

以上、1週前調教を坂路で行った馬の個人的感想でした。

G1に出走するくらいの馬はそこにピークが来るように念入りに調整されているので、基本的に皆良く見えるんですが、生で見ていると微妙な違和感とか雰囲気とか感じることがあります。

新聞に記載されるレース当週の坂路調教の原稿も私が担当しますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

では皆さん、良き週末を!

 

栗東編集局 丹羽崇彰

丹羽崇彰(調教担当)

1989年2月1日生まれ。2013年、キズナがダービーを勝った年にケイバブックに入社。普段は栗東坂路の調教や編集作業を担当。夏場は北海道に出張します。週刊誌の新馬紹介のコーナーを担当しているので、新馬の観察に特に熱を入れている。

 

12月から続いた関西のダブル開催も今週でようやく終わりです。高松宮記念は多くの関西トラックマンにとって、繁忙期の終了を告げる風物詩的なレースになっていると想像しています。
1週間開けて今度は関東のダブル開催が始まるわけですが、気持ち的には大分ゆっくりできるなというのが本音です。

ダブルの4カ月、マジで長かった……

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