こんにちは、栗東の坂井です。

 障害戦に使う馬は、初めて出走する馬はもちろんですが、最後に障害戦に出走した時から1年以上が経過すると、実績に関係なく、改めて障害試験を受験する必要があります。今年に入って、先週までに栗東で障害試験を受けた馬はのべ128頭。そのうち11頭がこの再試験でした。

 そんななかの1頭、先月29日にこの再試験を受験したのが、今週の東京ハイジャンプに出走を予定しているマーニです。昨年9月18日の阪神ジャンプS以来、1年1カ月ぶりの出走。今回は北沢騎手が初めてコンビを組みます。

 重賞・京都ハイジャンプの勝ち馬。今更飛越に問題は…と思いきや、再試験では大きな生垣障害の前で減速する場面がありました。長期休養の影響があるのか? 試験でも騎乗した北沢騎手に疑問をぶつけてみます。

 「(もともと主戦で、昨年で引退した)三津谷(騎手)が作っていた時から生垣だとふわっと飛ぶところがあって。再試験でも踏み切る直前に気を抜いてたから」

▲障害3勝すべてが置き障害コースのマーニ(21年京都HJ、鞍上は三津谷騎手)

 マーニはこれまで障害で10戦して3勝、2着と3着は1回ずつ。馬券の対象となった5回は、いずれも大きな生垣のない置き障害だけの新潟と中京でのものでした。さて、今回は生垣のある東京が舞台ですが…

 「東京の(生垣)は片面だからね」

▲固定障害の例。上段左から中山、東京、下段左から京都、阪神、小倉(JRA資料より抜粋)

 固定障害のある中山、東京、京都、阪神、小倉の障害を確認すると、東京以外の固定障害には生垣の背面の奥にも100センチ弱の奥行きがあるのですが、東京だけはそれがありません。なるほど。北沢騎手は続けます。

 「(東京は)エーシンホワイティでもこなしたんだし、マーニはそれよりバネがあるから、大きい障害も大丈夫でしょう」

▲エーシンホワイティの障害戦戦績(画像は競馬ブックweb)

 エーシンホワイティ。意外な展開で懐かしい名前が出てきました。障害戦フリークなら知らない方はいないのではないでしょうか。平地では短距離を中心に使われてオープン1勝を含む19戦5勝と活躍。2014年に障害入りすると以降14戦はいずれも北沢騎手が手綱をとり、同年に新潟ジャンプSを制覇。障害通算6勝を挙げました。

▲障害通算6勝を挙げたエーシンホワイティ(写真右、2014年新潟jS)

 6勝のうち3勝をレコードで挙げているほどの快足馬。同馬が2勝目を挙げた時の北沢騎手のコメントが「スピードがあるだけに置き障害が合っている」。そんなタイプのエーシンホワイティでも東京は大丈夫だったのだから、マーニなら、と。8月末に帰厩し、坂路、コース、プールを併用しながら入念に調整を進めてこられました。同騎手のジャッジは「あとは息だけだね」。

 相手は超のつく強豪オジュウチョウサンや、目下重賞2連勝で充実著しいホッコーメヴィウス、他にも多くの強敵の名が並び、ある騎手は「ここ数年で一番のメンバー構成」とも。一方のマーニは1年ぶり。結果よりもまずは無事にという一戦となりますが、個人的には期待をもってレースに注目したいと思います。

栗東編集局 坂井直樹

坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
今年の東京ハイジャンプには、こちらも長期休養明けから立て直してきたスマートアペックスも出走します。以前、中村将騎手に他の馬の感触を尋ねたところ、スマートアペックスを引き合いにジャッジをしてくださったことがありました。ジョッキーそれぞれが自分なりの「『走る馬』の基準」を持っているのだなあと、改めて感じさせられる北沢騎手のお話でした。