2月末から始まったJRAの無観客競馬は現在も続行中。当初はGⅠが始まる高松宮記念の頃には解除されるとかクラシックが始まる桜花賞の頃には、更にダービーくらいは観客を入れてと希望的観測も流れていたが、そんなことは起こらず、そうかといって少なくとも表面上は大きな混乱もなくここまで無事に開催も進んでいる。まだ宝塚記念こそ控えているが、春の6週連続GⅠも終わってひと区切りついたと言っていいだろう。関東地方ではそのタイミングを見計らったかのように6月11日に梅雨入り。これからしばらくはうっとうしい季節になる。

 春の東京開催を振り返ると、レコードタイム続出となった昨年の春あたりから盛んに馬場の高速化が喧伝されていただけに前半のペースの影響があったにしてもオークス、ダービーがいずれも平凡なタイムになったのは案外だったが、牡牝ともに無敗馬が勝利し、ニューヒーローが登場した。ヴィクトリアマイルではアーモンドアイが復活勝利を遂げて、これが通常の開催であればと悔しい気持ちになるのは仕方ないが、見ごたえのあるレースが続いて全体のムードは悪くなかったと思う。ただ、ひとつ心残りなのは史上初の8つ目のGⅠ制覇を目指して安田記念に挑んだアーモンドアイが敗れてしまったこと。レース前から管理する国枝師が目標にしていたシンボリルドルフの記録を更新することに意義を感じていながら結果的にはそのルドルフの育成にたずさわっていた藤沢和師の管理馬に負けてしまったのは皮肉でもあるが、改めて偉大さに気づかされたのも確か。先日はキタサンブラックがJRAの顕彰馬に選定されたが、若いファンにとってはこういう形で過去の名馬を知ることになるのはいい機会かもしれない。

 梅雨は初めと終わりに注意が必要と言われるが、その通りに梅雨入り直後の東京競馬は今年初めての不良馬場での開催になった。GⅠ開催が続いて盛り上がった気持ちも一旦は小休止。ただ、梅雨の晴れ間には猛暑日になったり、21日には夏至を迎えたりで夏がすぐそこまで来ているのは確かだ。19日から首都圏への移動制限が解除になって野球やサッカーなどのスポーツイベントも遅ればせながら開幕し、来月10日以降は限定的な形ながら有観客での開催も始まるという。その先には当然、JRAの通常開催も視野に入ってくる。本格的な夏が始まるまでの時期は少し頭を冷やして次の展開に備えたい。

美浦編集局 田村明宏

 

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
有効なワクチンが開発されてない現状では新型コロナウイルスの完全収束はまだ見えてないが、徐々にだが、街は活気を取り戻しているし、明るい希望が見えてきたのは間違いない。まだ気を緩めてはいけないが、ここまで1週たりとも開催が途切れることがなかったのは関係者の努力のお陰なので改めてここで感謝したい。今週、月曜には函館滞在中の騎手30人がボランティアで清掃作業を行うという明るい話題もあった。その中で存在感を示したのが前日に函館スプリントSを制した武豊騎手。週末にはキセキに騎乗し、前走からの巻き返しを狙っている。距離短縮で折り合いスムーズなら。