4月10日に施行された第71回桜花賞はディープインパクト産駒マルセリーナが直線弾かれたように颯爽と駆けて栄冠を手に。3月11日の東日本大震災発生から1カ月、まずはG1レースが無事開催されたことに安堵し、そして、この先行き不透明な状況の中、55,899人ものファンの方が桜花賞を生観戦するために阪神競馬場に足を運んでくださったという事実に、競馬に関わるひとりとして喜びを感じています。

 2011年の桜花賞は平常とはいえない特殊な状況下で行われました。その最たる例が開催中止、代替競馬によるトライアルの日程変更ですが、大本命馬の戦線離脱もありました。後の資料とするためにも、頭を整理し、書き留めておきたい事柄が数多いので、個人的感想も交えながら雑記・覚え書きとして綴ってみたいと思います。

【臨戦過程】
3月11日東日本大震災発生、12、13日の中山、阪神、小倉の3場とも開催中止
3月19日阪神、小倉で競馬が再開 阪神は21日(月・祝)代替を含む3日間競馬
・13日阪神のフィリーズレビューは21日(月・祝)阪神で(本番までの間隔は中3週→中2週に)
注:関東馬フォーエバーマークは11日(金)に阪神に入厩済み。12日(土)に栗東入厩
中山競馬は3月12日から4月17日まで開催中止
・12日中山のアネモネSは取り止め
・19日中山のフラワーCは26日阪神で代替(本番までの間隔は中2週→中1週に)

 結果的に臨戦過程の面で影響を受けなかったマルセリーナ(エルフィンS)、ホエールキャプチャ(クイーンC)が1、2着となったが、マルセリーナはチューリップ賞を見送ってゆったりと間隔を取ったこと、暖かくなってきたことで馬体も動きも見違えるほど良くなっていたし、ホエールキャプチャにしても栗東に早目に入厩し、坂路で1F11秒台を連発して気迫溢れる動きを見せていた。仮に他のトライアルが通常通り行われていたとしても、この2頭は間違いなく勝ち負けになっていたと思う。ただ、惜しむらくは3着にトレンドハンター、6着にハブルバブルが入線したフラワーカップ組。平年の中2週でさえ、楽ではないと思われるステップだ。輸送時間の短い阪神での代替施行だったとはいえ、中1週でG1は厳し過ぎたと思う。特にフラワーカップへ連闘で臨んでいたハブルバブルはそこから中1週だから超ハード。6着なら大健闘ではないだろうか。師が「凄い精神力」と褒め称えるこの馬、どこかで大仕事をやってのけるかも知れない。

 頭の片隅においておきたいのがチューリップ賞について。一般的には主流トライアルの位置づけであり、開催中止の影響も受けなかったのだが、今年は多くの陣営が無敗の2歳女王レーヴディソールを避け、メンバーが手薄だった感が拭えない。過去10年間の桜花賞トライアルで最も少ない12頭立てで行われ、レーヴディソールの単勝支持率81.4%が84年のグレード制導入後、重賞で最も高い数字だったということも、他の有力馬が別路線に回ったことが起因しているのだろう。

【大本命の回避】
 そのレーヴディソールは始動戦のチューリップ賞を馬なりで、2着馬に4馬身差つけて圧勝した。競馬ファンならずとも、あのゾクッとする勝ち方に感動を覚えたはずだ。実際、私の周囲にもさほど競馬に興味のない女性が「これからレーヴディソールを応援する!芦毛可愛い~」などという人が現れた。しかしながら、同馬は30日の1週前追い切り後に右トウ骨遠位端骨折を発症(6カ月以上の休養を要する)していることが明らかに。大本命の戦線離脱により、一転して新聞メディアでは「混戦」の文字が躍った。

【関東馬の栗東滞在】
 桜花賞のデータカプセルでも強調した栗東滞在の関東馬の成績。2009~10年にかけてはアパパネが栗東に滞在して阪神ジュベナイルF、チューリップ賞、桜花賞、秋華賞に出走して、史上初となる世代限定牝馬4冠を完全制覇。昨年の秋華賞ではアパパネ、アニメイトバイオ、アプリコットフィズが、現3歳世代では阪神JF2着のホエールキャプチャ、同3着のライステラス、チューリップ賞2着のライステラス、フィリーズレビュー1着のフレンチカクタスがこのパターンだった。桜花賞に栗東滞在で臨んだ関東馬は以下の3頭。
2着ホエールキャプチャ(阪神JF2着時に続いて2度目)
9着フレンチカクタス(フィリーズレビュー1着時とそれ以降)
12着ライステラス(阪神JF3着時、チューリップ賞2着時とそれ以降)
なお、7着ダンスファンタジアは阪神JF(9着)の時は栗東に入厩して調整されており、今回もそのプランもあったが、繊細な面があるとのことで直前入厩で臨んでいた。

【ディープインパクト産駒】
 記録ずくめの種牡馬デビューを飾ったディープインパクトは桜の舞台に3頭を送り込み最初のクラシックでいとも簡単に初戴冠を成し遂げた。他にもメデタシ、ハブルバブルが4、6着に入っている。マルセリーナは4コーナーそこのポジション?直線出てこられるの?というところから、一瞬できたスペースを逃さず、その道を滑走路にして飛ぶように加速。身体能力と競走センスがズバ抜けていた。同馬はエルフィンSからの直行だったが、前走から2カ月レースが開いての桜花賞制覇は84年のグレード制導入後では最も長い間隔とのこと。ディープ産駒は体がスッとしていて、手先が軽く、また、走ることに前向きな馬が多いので休み明けでもいきなり戦闘モードに入れるようだ。

【馬場状態】
 桜花賞当日の日曜は朝から〈良〉だったが、前日土曜は金曜から土曜早朝にかけての雨の影響が残り〈稍重〉→〈良〉。日曜は外からの差しも決まるようになったが、全般的には内有利の傾向が見られた週だった。2着ホエールキャプチャは16番枠、3着トレンドハンター17番枠。枠順による不利はあったかも……。

【時計比較】
 桜花賞と翌週のマイラーズカップとの時計の比較。リニューアル後、外回りで施行されている07年以降を比較すると次の通り(すべて良馬場)。
    桜花賞              マイラーズカップ
07年ダイワスカーレット1分33秒7   コンゴウリキシオー1分32秒2(レコード)
08年レジネッタ    1分34秒4   カンパニー    1分33秒6
09年ブエナビスタ   1分34秒0   スーパーホーネット1分33秒9
10年アパパネ     1分33秒3   リーチザクラウン 1分32秒9
11年マルセリーナ   1分33秒9   ????
 ブエナビスタ、アパパネは遜色ないタイム。今年のマイラーズカップの勝ち時計はさて?

栗東編集局 山田理子