第22歩目 研究発表会を聴講してきました (唐島有輝)

ジャパンC翌日の11月25日、両国のKFCホールで行われた「第66回 JRA競走馬に関する調査研究発表会」を聴講してきました。この会に参加したのは初めてでしたが、大学の卒論発表会と似たような雰囲気だったので、新鮮さと懐かしさの両方を味わうことができて、とても楽しかったです。

演題は1~26まであって、もちろんどれも興味深い発表だったのですが、特にプログラムナンバー1の

「トラッキングデータから見るレース中のストライド頻度に与える要因(高橋佑治・Thilo Pfau・鶴岡史隆・吉田年伸・Brent Edwards・向井和隆)」

これが自分にとってはもう抜群に面白かったです。1発目からいきなりコレだったので、休日に参加費1万円を払った価値があったなと。

あまり研究発表の内容を書くのはマナー違反だと思うのでそこは割愛しますけど、大前提となる背景部分だけでも知らなかったことばかりなので、ここで少し紹介したいと思います。

 

JRAでは昨年からトラッキングシステムを導入していて、ターフビジョンの下方に各馬の位置情報が可視化されるようになりました。また、最近では速度も表示されるようになっています。ただ、センサーによって分かるのはそれだけではありません。各馬の走る速さをすごく細かく見ると、蹴る瞬間が一番速くて、空中に浮いている瞬間が一番遅いです。これらを使うことによって、各馬のストライドの頻度とストライドの長さが計算できます。

この技術を用いて、いろいろな条件(馬場や距離、性別など)によってストライドに影響が出るのかを研究したのが上の講演の内容でした。

 

私も含めてファンにとってトラッキングシステムは「ターフビジョンでどの馬がどこにいるのか分かりやすいな」くらいなもので、もちろんそれだけでも便利なことでありがたいですが、我々が知らないところですごい活用がされているのだなと思いました。まず「この馬はピッチ走法だから~」とか「この馬はストライドが大きいから~」などトラックマンが目と感覚だけで判断していた各馬の走り方の個性が可視化できます。そしてもっと言えば、将来的にストライドの変化によって故障の前兆も分かるようになるかもしれないです。たとえば調教中に「いつもと走り方が違うからこれ以上負荷をかけるのはやめようか」とか。

トレセンと競馬場を行き来するだけの今までの生活だけだと、今回のような知識を得ることはできなかったので、何度も言いますが本当に行って良かったと思いました。私の場合は1番目の演題に興味の引っ掛かりがありましたが、他の方の場合だと別の演題がツボかもしれません。毎年ジャパンCの翌日に行われているようですし、一般の方も参加可能なので、来年は皆さんもぜひ。

 

美浦編集局 唐島有輝

 

 

唐島有輝

1993年7月11日生まれ。美浦調教班。

発表会には多くのJRA関係者が出席していましたが、学生さんたちも多数参加していました。名札をチラ見したら東大の方でした。私がチンプンカンプンだった内容でもウンウン頷いていらっしゃったのですが、なるほど、どうりで。彼らがいれば日本競馬の将来は明るいですね。競馬専門紙の将来を明るくするために、私も負けずに頑張ります。