勝ち馬に乗れ、ヨハネスブルグ産駒(山田理子)

 先週の小倉2歳Sでホウライアキコが優勝し、ヨハネスブルグ産駒がJRAで初めての重賞タイトルを手にした。日本軽種馬協会が購入し、2010年より日本で供用。2011年生まれの現2歳が本邦初産駒だが、8月17日の新潟、函館の新馬戦でスナークマスカラス、ネロ、ペプチドスピカが立て続けに1着で走り抜けて話題を集め、先週日曜は小倉2歳Sに先んじて施行された同日函館のすずらん賞でもフクノドリームが圧巻の逃げ切り。9月3日時点で2歳総合首位(2位ディープインパクトに305万円差)、2歳中央2位(1位ディープインパクトに812万円差)となっている。勝負の鉄則は「勝ち馬に乗れ」。注目度が増せば馬券の妙味は軽減するが、末永くいいおつきあいをしていかなければならない種牡馬だ。

 ヨハネスブルグ産駒は6月から始まったJRAの2歳戦で既に7頭で9勝しており、勝ち馬頭数、勝利数ともディープインパクト(9頭で10勝)に次ぐ数字。アーニングインデックスはディープが2.15に対して、2.16と僅かながら上回っている。現2歳の全成績は(9.6.5.37)で、勝率.157、連対率.263、3着内率.350、単勝回収率48.4%。7頭のうち4頭がデビュー勝ちを決めており、2頭が2戦目で、1頭が3戦目で勝利。9勝の内訳は条件別で、芝1200=6、芝1400、ダート1700、ダート1000=各1。性別で、牝馬=5(オープン2勝)、牡馬=4。9勝はいずれも上位人気でのもので、施行順に1、3、1、1、2、1、1、1、2番人気だった。仕上がりが早く、新馬勝ちするような馬は何せ調教でよく動く。ネロはデビューする週の坂路調教で1F11秒9を馬なりで出していたし、スナークマスカラスにしても、栗東で3本目の時計だった7月21日の坂路で53.7―39.4―25.5―12.9のタイムをあたかも57~58秒ぐらいの楽な息遣いでスーッと上がってきて、スピードの絶対値、心肺の高さを示していた。人気するので穴党には興味を持たれないが、実戦でキッチリ答えを出してくれて確実なリターンあり。1~3番人気に支持されたケースの成績は(9.4.4.5)、勝率.409、連対率.590、3着内率.772、単勝回収率125.4%となり、どの数字も一気に跳ね上がる。コツコツと稼ぎたい地道馬券派とは相性がいいだろう。

 馬体の印象はまちまちで、ホウライアキコのような腹構えがスッとした馬もいれば、馬っぷりが良く、重量感のある馬も。ただ、デビューした28頭のうち新馬戦で体重が470K以上あったのは5頭だけなので、短距離に強い成績から受けるイメージほど大型馬は多くない。走ることに対して前向きなようで、気持ちも乗っていて(前向き過ぎるタイプは注意!)、攻めと実戦が結びつく傾向強し。ゲートあるいは二の脚が速く、レース序盤ですぐさま好ポジションをとれるのが強みで、スピードと集中力は持続し、新馬勝ちを決めたなかには更に終盤でギアを上げられるタイプが複数いるから奥の深さを感じる。父の戦績で驚かされるのが2歳5月のデビューから5カ月間で7連勝(G1・4勝を含む)したタフネスぶり。今回、勝ち上がっている7頭の足元をVTRで今いちど確認してみたが、蹄に程よい高さがあり(ちなみに6頭が父同様の4本黒蹄)、繋の長さ、しなり具合とも適度。このあたりも連戦に耐え得る強さや、スピード決着にも極悪馬場にも対応できる幅の広さの要因かもしれない。種付け頭数が117頭(2010年)→37頭(2011年)→23頭(2012年)と減少しているのが残念だが、本邦初年度産駒の活躍を受けて来年は頭数が集まるはずなので、2015年生まれの産駒への想いを胸に秘めつつ、長い目で注目しましょう。

◆ヨハネスブルグ(父ヘネシー、母ミス、母の父オジジアン)は99年生まれ、米国産。2001年5月30日にデビューすると10月27日までの5カ月間に英愛仏米の5F~8.5Fで7連勝(G1はBCジュベナイル、ミドルパークS、モルニ賞、フィーニクスSの4勝)。欧州米国双方の最優秀2歳牡馬を同時受賞した。3歳は3戦未勝利で競走生活にピリオド。種牡馬としては06年北米ファーストシーズンサイヤーで勝馬数1位、2010年、2011年米総合勝馬数1位。主な産駒にスキャットダディ(フロリダダービー)、セージバーグ(イスパーン賞)、ワンスウェアワイルド(AJCオークス)などがいて米仏豪亜でG1ホースが輩出している。

栗東編集局 山田理子