夏なのに……(吉田幹太)

 夏は小さな旅行に行くことを楽しみにしている。季節がら北海道や野球を観るのに広島へ行くことが多いのだけど、今年はどうも行けそうにない。

 というのも安いホテルは軒並み一杯で、泊まれるホテルは驚くほどの値段になっているというのが大きな理由。2、3年前まではここまで苦労することはなかったのに、3カ月前でもほとんど予約が取れないのだからうんざりしてしまう。そして、もうひとつの大きな原因が経済的なこと。

 大怪我こそしなかったけれども、現状を一気に好転させるようなヒットもなかった福島開催。美味しいものを食べて、1開催戦い続けられただけでよかったといえばよかったのだが、起死回生とは言わないまでも、スカッとした当たりが欲しかった。

 予想の成績も良くなかったが、こと馬券に関して言えば実は予想が当たらない時の方が儲かっていたりする。つまり、馬単の目では外していても、単勝が思いのほかの高配当だったりするのがよくあるケース。もうひとつ、自分が主に買っている枠連ならではの恩恵にあずかることもよくある。

 それなりにキャリアのある方なら1度は経験があるかと思う。初めて競馬場に来た人がびっくりするような馬券を当ててみたり、ほとんど競馬を知らない人に頼まれた馬券が当たってみたり。しっかり検討したからといって、必ず馬券が当たるわけではなく、かなりのところまで読めていても当たらないのが競馬の切ないところで、面白いところなのだろうと思う。

 ある1日、1レースに関して言えば、しっかり検討した人も、好きな番号や馬名で買った人も、当たる可能性はそれほど差はないのかもしれない。そう考えると、必死に取材して、調教を見て、成績を調べる必要もないように思えるが、そんなことはない。そのひとつのレースがどういうものだったかをしっかり理解するためには必要な作業で、それこそが競馬を楽しむことではないだろうか。

 そして、この積み重ねが、実は当たりに近づくのも確かなのだろうと思う。同じ馬券を買うにしても、しっかり理解して、納得して買うのであれば自信を持って買うことができる。先ほどとは逆説的になるかもしれないが、自信を持って買える分だけ、当たった時の大きさが違うのではないだろうか。

 野球にたとえるのなら、仮に同じセンスのあるもの同士なら、しっかり練習をして自分のスイングを作り上げた人の方が、当たった時のボールの飛び方が違うのと一緒ではないかと思うのである。

 我々がしているのは読者の皆さんに検討するための情報を提供して、自分なりの見解を示すことが大きな仕事ではあるのだけど、実はそれ以上に大きいのはレース後のしっかりした分析ではないかと思う。

 徐々に結果が出だしている2歳戦などはその最たる例ではないだろうか。現場でひとつひとつのレースを見て、数字は当然としてもそれだけでは判らないレベルや可能性を分析する。勿論、新種牡馬産駒の傾向や質の判断などは、速く的確にできたものの方がいい馬券を取れる可能性もうんと増えることになる。

 この積み重ねが暮れの2歳ステークスにつながり、更には来年のクラシックレースにつながる。これこそが競馬の醍醐味といっていいのではないか。

 今のところ、どうもこの2歳戦の判断を間違ってしまっているケースが多く、その分だけ、馬券の調子も上がってこないような気がしている。

 関西馬がうんと増える新潟競馬は、新馬戦のレベルも格段に上がってくる。来年のダービーを見誤らないためには、しっかり見ておかないといけないレースも当然増えてくる。まずはこれまで以上に緊張感を持って挑むしかない。

 そして、急きょ、高額なチケットやホテル代を払っても旅行に行けるくらい、思いっきり儲かればいいのだけれども……。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。