今週末にはサウジアラビアでサウジカップG1が行われます。総賞金2000万ドル、1着賞金1000万ドル。1ドル130円として勝てば13億円ですが、1着賞金が総賞金の50%と普通の競走(だいたい60%)よりも低い比率であることから分かるように、下の着順まで厚い賞金が受け取れるような配分になっています。2着で350万ドル、3着200万ドル、4着150万ドル、5着で100万ドルですから、ここでもフェブラリーSG1に勝つよりも賞金は高いです。以下、6着60万ドル、7着50万ドル、8着40万ドル、9着30万ドル、10着20万ドルと続きます。招待競走といえども、いろいろと経費というものはかかりますから丸儲けというわけにはいかないでしょうが、こうなると札束でひっぱたくというより金塊でぶん殴るくらいの力がありますね。
それだけの高額レースですから簡単には勝たしてもらえません。2020年に行われた第1回サウジカップは米国のケンタッキーダービーG1の1位入線馬マキシマムセキュリティが勝ち、日本から挑んだゴールドドリームは6着、クリソベリルが7着でした。第2回は仏ダービー馬ミシュリフが勝ち、チュウワウィザードが9着に終わっています。第3回でG1の格付けを得た昨年は地元のエンブレムロードが勝ち、カントリーグラマーが2着でした。カントリーグラマーは次にドバイワールドCG1に勝ちます。日本からはブリーダーズCディスタフG1の勝ち馬マルシュロレーヌとチャンピオンズCG1に勝ったテーオーケインズが挑戦し、それぞれ6着、8着でした。今年は昨年の1、2着馬が出走してきます。更に米国のボブ・バファート厩舎の強豪、G1・3勝のテイバも出走してきます。まるで歯が立たないのでしょうか。歯が立たない可能性もありますが、歯が立たなくもないのではないでしょうか。まず、出走見込みの13頭のうち、半分近くの6頭が日本調教馬です。競馬は団体戦では勿論ありませんが、戦いにおいて数の優位は大事です。
レーティングに関しても見てみましょう。IFHAから発表された「ワールドトップ100G1レース2022」のリストを見るとトップはブリーダーズCクラシックG1のレーティング126.75(上位4頭の最終レーティングの平均値)です。ドバイワールドCG1が121.00で15位タイ。これは日本のトップである皐月賞G1と同じ順位です。昨年のサウジカップG1は118.00で51位タイでした。日本のダートのトップであるチャンピオンズCG1は116.25で93位タイですから、こういう計算が正しいかどうかは疑問もありますが、その差は1.75。つまり上位4頭のレベル差は1馬身3/4に過ぎないといえるのです。何とかなりそうな気がしませんか? 「ワールドベストレースホースランキング」における昨年の勝ち馬エンブレムロードのレーティングは[120]でした。2着カントリーグラマーはその後ドバイワールドCG1に勝ったので[121]となりました。テイバには[123]のレーティングがついています。日本調教馬のレーティングはパンサラッサ[120]、ジオグリフ[119]、ジュンライトボルト[118]、カフェファラオ[117]、ヴァンドギャルド[117]、クラウンプライド[116]とすべてワールドベストレースホースランキングに掲載されています。日本のダート競馬のレーティングが総じて辛い(と筆者が思っているだけですが)ことを考慮に入れれば、決して歯が立たないということはないような気がしてきませんか。
日本調教馬はジオグリフが祖母の父がサンデーサイレンス、ジュンライトボルトは母の父がスペシャルウィーク、ヴァンドギャルドは父がディープインパクト、クラウンプライドは父リーチザクラウンの父がスペシャルウィークと、それぞれサンデーサイレンスの血を引いています。パンサラッサは父ロードカナロアから、クラウンプライド、ジオグリフ、ジュンライトボルトもキングカメハメハの血を受けています。いざというとき頼りになるのはサンデーサイレンスとキングカメハメハという結果になるといいですね。
栗東編集局 水野隆弘
昭和40年10月10日生まれ、三重県津市出身
1988年入社。週刊誌の編集、調教採時、フリーハンデ担当。1月末の大雪の日には弊社トラックマンの1名が肘を骨折しましたが、ケガはなくとも転倒した者は私を含めたくさんおりました。人生の折り返し点を過ぎてからの骨折はいろいろと大変ですので、まずコケないことが肝要です。四足歩行のウマたちからすれば「ツルツル滑るのにええカッコして二足歩行してるからちゃう?」と思っているかどうかは分かりませんが、こればっかりは遥か昔に先祖が決めたことですから仕方がありません。