函館に来て約2週間が経ちました。

レンタカーで国道5号を札幌方面から南下して(高速もあるのだが、景色が単調でつまらないから極力乗らない)、駒ケ岳、大沼、函館山と見えてくるとテンションが上がってきて……

というのは出張3年目くらいまででしたね。2017年から来ている函館は今年で8年目。地元に帰ってきたような感覚のため、一気にテンションが上がるようなことはなくなりました。小学校に上がった娘と離れるのがつらすぎて最初はホームシックになっていましたが、徐々に元気も出てきましたね。

私が滋賀県の家を出てくる時は娘も寂しそうにしていましたが、函館に着いてから電話をすると「インスタ見てるとこだったから」と1分で切られてしまいました。子供は切り替えは早い。

そんなこんなで寂しくも仕事に取り組んでいるわけですが、私は北海道(と冬の小倉)限定でグリーンチャンネルのパドック解説に出演しています。

前置きが長くなりましたが、今日はパドック解説の仕事について書いていこうと思います。

グリーンチャンネルの土日の競馬中継を見ている方なら分かると思いますが、どの競馬場でもすべてのレース前にパドック解説が流れます。スポーツ新聞の記者の方や我々専門紙のトラックマンが出演していますが、北海道や冬の小倉では滞在している専門紙の人間が出る場合が多いですね。

今年の北海道競馬も函館6週+札幌7週の13週で、私は1週目から隔週で7回パドック解説に出演する予定です。

【準備編】
私の場合、担当するレースに出走する馬の前走時のパドックVTRは少なくとも確認します。関西馬の場合は普段から見慣れているのでそれでいいのですが、関東馬の場合はイメージが湧きづらいので、前走よりもっと前の映像まで確認する場合がほとんどです。

成績が上昇している馬の場合は上昇する前と現在を見比べたり、逆に着順の悪い馬は成績の良かった頃と見比べたりします。
出走馬の過去の成績や、厩舎のコメント、レース後のメモなども確認して、その馬がどんな特徴を持っているかの把握に努めます。

私は競馬ブックのプリント新聞を拡大コピーして余分なところを切り、B4サイズに印刷します。

写真で見ていきましょう。

6月9日(日)、1回函館2日目1Rのものです。左は私の紙面上の印、右側の余白に主に前走時のパドックの様子をメモしています。一番右の数字は当日の馬体重の増減。一番下にある丸囲みの数字が、放送で挙げた推奨馬の番号になります。

トラックマンのなかにはまったく何も準備しない方もいます。過去の蓄積があったり、当日見た時のインスピレーションを大切にできる、などと理由を聞いたことがあります。人それぞれのやり方があるのだなと思いますが、私の場合頭が真っ白になるのが怖いので、準備していかないと不安ですね。何が正解とかなくて、本当に人それぞれだと思います。

【放送編】
6月9日はメインレースにG3函館スプリントSが組まれていたので、朝はパドックブースから顔出しでの放送がありました。グリーンチャンネルの全レース中継が9時スタートなので、8時55分までにはパドックブースに来るようにとの指示。

パドックブースは私、ディレクターさん、馬名を読み上げるアナウンサーさんの3人で、基本的にどの競馬場も3人体制だと思います。ちなみにこの日読み上げを担当していた犬堂さんのご子息と私は同い年で、なんと大学も同じということが昨年判明しました。海外で建築の仕事でご活躍されているようで、日本国内でも大きな賞を受賞されたそうです。不思議なご縁があったものです。

9時10分過ぎから10分弱、東京のスタジオにいる小堺さんとやり取りしたあと、5分ほど置いて函館1Rのパドック解説が始まりました。

私の本命の(6)ニシノシャミナードは細身でイレ込む馬なのですが、プラス16キロの数字を見てガッツポーズしました。3カ月の休養でリフレッシュに成功したようです。この日は本来の6番を外れて後方を周回していましたが、前走より落ち着きがあっていい感じです。

対抗の(8)ベアゴーゴーも10キロ増でしたがまったく太くなく、いつも通りの雰囲気。

ということで推奨馬も6、8、…の順番で挙げました。

予想の段階でもパドックを見ていてそれを印に反映していますが、どうしても当日に馬を見た時にアレッと思うことがあります。そういう時は紙面の印にこだわらず、放送では推奨馬を挙げるようにしています。

レースの結果は(8)ベアゴーゴーが快勝して(6)ニシノシャミナードが2着でしたが、ニシノは直線で行き場がなくて進路ができたのは最後の最後だったので、スムーズだったら結果も変わっていたかもしれません。

ともかく、紙面上の印が当たってパドック解説でも推奨1、2番手で決まったのでホッとしました。ただ、この日は1~5Rの担当で的中が2レースだけだったので、結果としては微妙ですね。5Rの新馬戦で自信のあったメイショウホダワラも、実戦では若さを見せて結果が出ませんでした。

頑張って予想や準備をしても、全然当たらない時もあります。こういう時は見てくださっている方に申し訳なく、段々と気持ちが重くなっていきます。「さっき外れてたのに、エラそうに解説するな!」という視聴者の心の声も聞こえてきますが、だからといって仕事を放棄するわけにはいきませんし、ボソボソ喋るのもアウト。自分を奮い立たせて頑張っていますが、気に入らないときはミュートなどで対応していただければと思います。

ひとつ言い訳をさせてもらいたいのですが、それはパドックを見る時間が少ないということ。グリーンチャンネルの放送を見ていると、前のレースが終了するとすぐに次のレースのパドックをやりますよね?

たまに東京のスタジオから「先頭の馬が入場してきたら教えてくださーい」と内線が来ます。放送のスケジュール上できるだけ早く映像を流したいのでしょうが、この内線が来たらピンチです。ごくごくたまにですが、全馬が入場する前にパドック解説の放送が始まっちゃったりして、もうそりゃ大変です。焦る気持ちを抑えて1番の馬から解説し、それと同時の後方の馬もチラッとチェックします。肉眼、双眼鏡、手元のモニターを使ってそれこそ全集中で乗り切ります。

これは極端な例ですが、基本的にはゆっくり馬を見られる場合が多くないので、頭がホワイトアウトしないようにそれぞれの馬のポイントを押さえて放送に臨むわけですね。

レース間隔が詰まったりして中継のスケジュールがタイトな場合に「早回し」というパターンが登場します。
6月9日は2Rが「早回し」でした。単純にパドック解説の放送時間が少なくなります。なので1頭につき短めのコメントでテンポ良く解説していきます。たまに「このレースのパドック解説、なんかそっけないな」と感じることがあるかもしれませんが、それは「早回し」のレースにあたっているわけですね。

以上がパドック解説の解説でした。

ほかにも放送と平行して私は次走へのメモを書いていますし、1レース毎にパドックブースから記者席へと戻りレースの成績をつけているトラックマンもいます。
会社の仕事も疎かにできないわけですね。(ちゃんとやってますアピール)

とにかく予想とパドック解説の精度を上げることが、出演させていただいている身としてはすべて。今後お目にかかる機会があれば、是非注目して見てやってくださいませ。

本当は北海道駒ケ岳に登山してそれをブログにしようと思ってましたが、休日の天気が冴えなかったでまた別の機会にしようと思います。(毎年登りたいと思い、登ることなく既に7年が経過しました)

 

栗東編集局 丹羽崇彰

丹羽崇彰(調教担当)

1989年2月1日生まれ。岐阜県出身。2013年、キズナがダービーを勝った年にケイバブックに入社。普段は栗東坂路の調教や編集作業を担当。現在は函館出張中。8年連続の函館で、他社さんのメンバーもほぼ同じ。とても1年ぶりに来たとは思えないほどスムーズに仕事に入れました。