春のGⅠシリーズが終了。この春も数々の名勝負、名シーンがありましたが、そんな熱戦の余韻に浸っている間もなく、競馬の方は新たな世代の新たな戦いがスタート。北海道シリーズの開幕も来週に迫り、一気に夏モードに突入します。

 さて、夏競馬と言えば、サマーシリーズが風物詩のひとつ。このコラムでも過去に書いていますが、各カテゴリ別に3つあるサマーシリーズの中でも、特に、〝暑い夏を戦い抜いた〟、そう感じさせてくれるのが、計6戦で覇を競うサマースプリントシリーズ(以下サマーSS)ではないでしょうか。
 ちなみに、この話題に触れたのは今から5年前の2012年。『7年目の本気』と題し、創設以来、牝馬席巻の時代が続いていた同シリーズに変化の兆候が見え始めた、そんな話題を取り上げました。
 果たして、この年のサマーSSは6戦中5戦で男馬が優勝。その前年の5戦全敗(前年までのサマーSSは全5戦)という不名誉な記録から大きく巻き返すとともに、パドトロワが男馬として初めて、シリーズチャンピオンに輝いています。
 更に、翌2013年にはハクサンムーンがシリーズを制し、2年連続で男馬のサマーチャンピオンの誕生となりました。特に、この年のハクサンムーンはシリーズ期間中に3走してCBC賞②、アイビスSD①、セントウルS①の好成績。サマーSS史上、最高得点となる27ポイントを獲得して王座を決めています。

 

 こうして、男馬の時代到来を思わせたサマーSS。しかし、翌2014年には北九州記念、セントウルSに2勝を挙げたリトルゲルダが総合優勝を果たし、牝馬がチャンピオンの座を奪還。続く2015年も、同じく牝馬のベルカントが、これもシリーズで2勝を挙げチャンピオンに輝くと、翌2016年、つまり昨年もそのベルカントがCBC賞③、アイビスSD①、北九州記念②という安定した走りを見せて、2年続けて夏の女王の座に就きました。しかもこれらの3年、シリーズ2位もすべて牝馬でしたから、サマーSSにおける〝男馬の時代〟は実に短く、そして儚いものだったことになります。

 

 ここで改めてシリーズの歴史を振り返ってみると、創設からの11年で牝馬のチャンピオンは計9頭。対する男馬は前出の2頭のみ。やはり、夏の眩しい太陽に似合うのは男馬より女馬なのか……。そんな思いを抱きながら迎える12年目の夏。果たして今年のサマーSSはどんな争いが繰り広げられるのでしょうか。

年度  順位   馬 名       性齢 年度  順位   馬 名       性齢
2006  1位  シーイズトウショウ  メス6歳  2012  1位  パドトロワ      牡5歳 
    2位  ビーナスライン    メス5歳      2位  エピセアローム    メス3歳 
2007  1位  サンアディユ     メス5歳  2013  1位  ハクサンムーン    牡4歳 
    2位  アグネスラズベリ   メス6歳      2位  フォーエバーマーク  メス5歳
2008  1位  カノヤザクラ     メス4歳  2014  1位  リトルゲルダ     メス5歳
    2位  キンシャサノキセキ  牡5歳       2位  ローブティサージュ  メス4歳
2009  1位  カノヤザクラ     メス5歳  2015  1位  ベルカント      メス4歳
    2位  アルティマトゥーレ  メス5歳      2位  ウリウリ       メス5歳
2010  1位  ワンカラット     メス4歳  2016  1位  ベルカント      メス5歳
    2位  メリッサ       メス6歳      2位  ソルヴェイク     メス3歳
2011  1位  エーシンヴァーゴウ  メス4歳 
    2位  カレンチャン     メス4歳 

美浦編集局 宇土秀顕

宇土秀顕(編集担当)
昭和37年10月16日生、東京都出身、茨城県稲敷市在住、A型。昭和61年入社。
 内勤の裏方業務が中心なので、週刊誌や当日版紙面に登場することは少ない。趣味は山歩きとメダカの飼育。
 GⅠシリーズの終わりが見えると夏山に向け調整再開。体がなまっているだけに、まずは手頃な筑波山へ……。と、毎年毎年、同じことを考えるようで、過去9年中6年で安田記念週に筑波山に登っていたことが判明。何の役にも立たないデータを見つけた気分です。それはともかく、この時季の筑波山麓は麦秋の盛り。風に揺れる金色の麦穂の波と、その向こうに浮かぶ紫峰の姿は見事なもの。ちなみに、今年も安田記念週に施行されたのが「麦秋S」。競馬に携わる人間にとって、特別レース名が〝季節の歳時記〟であることを改めて感じます。