今年最後の投稿です。
例年ですと、その際のネタと言えば「一年を振り返って」になるのは恒例であり、必定でもあります。
で、今回。さあ書こうと言う前に、今年自分が担当した8回を振り返ってみることにしたのです。
まず1月は前年を踏襲したうえでの所信表明?みたいなことを書き、次に1月31日に亡くなられた元騎手、調教師の郷原洋行さんとの個人的感傷を綴り、4月に入ってからは4回連続で新型コロナウイルス関連ネタを取り上げ、直近の2回は昔話を絡めた競馬(騎手とレース)の話題。やっぱりと言うべきか、半分はコロナ禍のネタになっています。奇跡のようなジャパンカップについて少しだけしか触れていないのは、前後する3週間に担当が回ってこなかったから。かといって、じゃあここで扱うかとなると時期がズレ過ぎます。
やっぱり2020年という特別な一年を振り返るのに、コロナ禍の競馬と自分自身が感じた諸々のこと、というのは避けられないのかなあと思います。
そんなわけで、改めて、ということで。
現在も猛威を振るっている新型コロナウイルス。ヨーロッパでは変異種が確認されたとかで、それはまったく別の種類ではないにしても、新しい型のウイルスであるという捉え方もできなくはなく、まだまだ先が見えません。なるほど〝100年に一度のパンデミック〟との認識を持つべきではあるのでしょう。「アフターコロナ」や「ウィズコロナ」といった考え方は、大なり小なり、求められることになるのかもしれません。
そんなようなことを考えていて思ったのは、様々なシーンで社会全般の変化が感じられたことは勿論、それに対処しようとする意識の持ち方、コロナ禍との向き合い方を観察することで、その人の性質、というか本質が露になるケースも少なくなかった、ということ。自分自身も含めて、という意味ですけれど。
9年前に発生した東日本大震災は〝戦後最大の国難〟と言われました。〝何年に一度〟という表現ではなかったですが、「アフター3・11」という言葉が生まれ、「危機に直面した時にこそ、その人の人間性、度量が知れる」と教えられたという意味で、似ているのではないかと思います。
競馬に関して「アフターコロナ」「ウィズコロナ」で象徴的だったのは、JRAとしての現行体制になってから、初めて採用された〝無観客競馬〟でしょう。2月29日から10月4日のスプリンターズS当日までの約7カ月間、無観客で開催されました。
その間の馬券の売れ方は予想を超えたもので、6月28日の上半期終了時点で対前年比101.5%。
ウイルスの感染拡大防止策として不要不急の外出自粛要請、そして緊急事態宣言の発出と続き、ほとんどの娯楽がストップする中にあって、無観客とはいえ継続的に開催されたのが競馬でした。熱心な競馬ファンでも、それほどでもなくても、要するにコロナ禍唯一の娯楽である競馬に、多くの皆さんが注目した結果、だったと分析することはできます。
できますが、それにしても自分の想像力の拙さを反省するしかありませんでした。下半期は牡牝揃っての無敗の三冠馬の誕生、史上初となる3頭の三冠馬対決の実現などがあって、おそらく年間を通した前年比でもプラスが計上されるのはないでしょうか。新たにネット投票会員になった皆さんにとってみれば、最高のデビューになったでしょうし、きっと〝定着〟していただけるのではないかなと。
無観客競馬については、競馬そのもの、についても、幅広い考察が可能です。
まずは馬の状態面は勿論のこと、人の心理面にどんなふうに作用するのか。そして、そのことが展開とかペースとか、つまり直接的な部分でレースにどう影響するのか、といったような。それがGⅠ全般に堅い決着が多かったことと、どういった相関関係があるのか、みたいなこと。
また、将来的には、従来の開催スタイルの見直し、なんてことも視野に入るかもしれません。騎手や馬の移動、輸送のルールや、開催日数、薄暮やナイター競馬の採用?等々。そうなれば競馬を取り巻く周辺産業の在り方-私どもも含めてですが-の地殻変動も更に大きな規模になるでしょう。
それから、こちらは少々別件になりますが、無観客競馬から派生することとして、現在採用されている入場制限付きの開催について。
最悪の無観客競馬を避けるべくだとしても、これが常態化したりすると、ファンの観戦スタイルが大きく変わってしまいます。これについても大いに気になるところです。
多くのファンがテレビやネットでの観戦を余儀なくされる、いや、当たり前になりかねないのですから。そのことで、競馬の形そのものが変わることになるかもしれない。もしもそうなった時に、はたして元の通り、に戻せることができるのかどうか……。
そんなような暗い気分を抱えたまま緊急事態宣言下からステイホーム期間を過ごし、そして第三波への警戒を強いられるのですから、どうしても日常的にマイナスイメージに捕らわれがちになるもの。それをどうにかこうにか我慢できたのは、やはり競馬があったから、じゃないかと思っています。
実際のところ、春先からこの年末まで、ひとまずGⅠに限ってのことになりますけれど、見応えのある名勝負、或いは純粋に〝名レース〟と呼べるレースが多かった。これは決して、人気馬が人気通りに走るレースが素晴らしいのだ、と主張しているわけではありません。出走馬がそれぞれに力を出せたのではないか、といった印象がある。このことが、先に触れた無観客競馬の影響によるものなのかどうか、はここではさておきます。
とにもかくにも、そういうレースをこのコロナ禍で見せてもらうことができた。どうしたって沈みがちになるところを、救ってくれたのが競馬でした。
これまでも、いろんなシーンでそんなことを感じさせてくれた競馬。この先、世の中がどのように変わっていこうとも、いつものように続く競馬が、また立ち上がる元気をくれる、と信じています。
そう、我々には競馬があります。
美浦編集局 和田章郎
昭和36年生まれ 福岡県出身 AB型
1986年入社。編集部勤務ながら現場優先、実践主義。競馬こそ究極のエンターテインメントと捉え、他の文化、スポーツ全般にも造詣を深めずして真に競馬を理解することはできない、がモットー。
何だかまとまりがない文章で、ややもすれば幼稚な結論になってしまってお恥ずかしい限りですが、新型コロナウイルスが現れて、人間社会に大きな影を落とした2020年。心から競馬があって良かった、と思う年の瀬です。