いつのことだったか忘れましたが、子供のときのことです。
たぶん、小学生の時の社会科の授業だったのかな?
林業の人の話を聞いた事があります。
林業といえば森で働く仕事です。
ほら、「森林伐採は良くない!自然は守らなきゃいけない!」みたいな教育を受けるじゃないですか。だから林業って、きっと木や森を大切に維持するのが仕事なのだろう、と子供ながらに漠然と考えていました。
しかし、話を聞くとイメージがちょっと違いました。
「木を切る」ことも森を育てる上で重要な仕事なのだそうです。
なぜなら、古い木をそのままにしていると、若い木に栄養や日光が届かないから。しっかり環境を循環させないと、森林がどんどん荒れてしまうのだそうです。
物知りの人だったら当然だと思うかもしれないですが、子供のときの自分には結構衝撃でした。
それから何年も経った今思うのは、これって他のことにも通じる話なんじゃないかってことです。
たとえば、自分の中での競馬観。
入社前の私だと、最強馬といえばディープインパクトかオルフェーヴル、牝馬だったらダイワスカーレットかブエナビスタかなぁ、みたいな感じでした。
でも、入社してからの5~6年でその様相が一変してしまいました。
アーモンドアイがJCで衝撃的なレコード勝ち。GⅠ勝利数も一気に更新しました。
そして、もうこれ以上の馬は出てこないかなぁと思っていた矢先にイクイノックスの登場。
最強馬トップ3を挙げよう、みたいな企画があったとしたら、「え?ディープかオルフェーヴルかどっちか捨てなきゃいけないの?」みたいな状況です。
また、昨年ドバイWCを制したウシュバテソーロが先日のサウジCで勝ちに等しい2着。世界的な高額賞金レースを同一の日本馬が2勝するという快挙まであと一歩のところでした。
もう、日本競馬の進化のスピードに、自分の脳みそがついていかないです。
特にイクイノックスのキャリアの後半なんか、凄過ぎてただ呆然とレースを見ているような感覚でした。その上、それで盛り上がっている人を見ると「ハイハイ、良かったですね」みたいな、ブラックな感情すら出てきます。いやぁ、我ながらホントめんどくさい笑。
これが競馬を見始めたころだったら、もっと純粋に喜べたはずです。
それが年数を重ねる毎に、好きだったはずのものがどんどん淡白になっていきます。別に飽きたとか、嫌いになったとかではないんです。ただ、たとえば「このレコードが凄い」とか「GⅠ○勝の記録が凄い」とか「海外で勝つのはそんな甘いもんじゃない」みたいな自分の価値観があっさりと崩されるのを見ると、寂しくなるというか、今までが何だったんだろうって思っちゃうというか・・・。これって気づかないうちに年を取ってるってことなのかなぁ。
だけど、せっかく凄いものを見ているのに、今までのことに縛られて新しいものを受け入れられないって、やっぱりとっても勿体無いですよね。
人間、今までの経験で得たものとか付き合ってきたものって、どうしても守りたくなっちゃうじゃないですか。
でも、古い木を切らないと若い木が育たずに森林が荒れてしまうのと同じように、自分の古い考えを捨てて気持ちを循環させていかないと、心がどんどん枯れていってしまうのかもしれません。
競馬の世界って、常識が常識じゃなくなるスピードが他の世界と比べて圧倒的に速いですよね。
できればそれについていきたい。
せっかく好きでやってるのだから、楽しまなきゃ損。新陳代謝することで興奮とか感動とかが無理せずスッと心に入ってくるなら、こんなコスパのいい話はないですよね。
美浦編集局 唐島有輝
唐島有輝
1993年7月11日生まれ。2017年入社。美浦調教班。
30年間ずっと実家暮らしでしたが、今年から一念発起して一人暮らしをはじめました。いや、これが何でもっと早くやらなかったんだろうって思うくらい家事のすべてが楽しくてしょうがないですし、自分で言うのもナンですが、結構上手にできています。将来は主夫になろうかなって真面目に考えてます。未来の妻に対して「トイレの便座上げっぱなし!」って怒ってる姿が目に浮かびます。興味のあるキャリアウーマンの方、連絡お待ちしております。ちなみに得意料理は肉じゃが、筑前煮、カオマンガイです。