春場所観戦にて(吉田幹太)

 早朝、6時台のこだまに乗車。

 空いている車内には外国人観光客ばかり。

 指定席の仕組みをよくわかっていないお客さんもちらほらいて、車掌に促されて車両や席を移動している。

 東京で行動していても観光客の多さに困惑してしまうが、仕事で乗ることはない非日常の東海道新幹線の車内。しかも早朝からこんなに……思わずため息が出た。

 今、海外旅行に行くにあたっての大きな障壁は円安ではないだろうか。

 海外に行った人から聞く水や食事の値段を聞くと日本にいた方が存分に楽しめそうなな気がしてしまう。

 日本に来ている外国人の方にしてみれば真逆。日本はなんでも安い。

 ひと昔前、自分が年に1回くらいのペースで海外に行っていたときはまさにこんな感じ。向こうに行けば安い料金で何でもできる。そう考えると観光で外貨が稼げるというのは何とも悩ましいこと。

 さて、こだまに乗って出かけたのは大阪に行って春場所を観戦するためにほかならない。

 こだまを使ったのは“ぷらっとこだま”という割り引きチケットで経費を少しでも浮かせるため。その分、現地でおいしいものを食べる。旅行に行く回数もうんと減ってしまったので、せっかく行った時くらいはお金を気にせずに遊びたい。

 そもそも相撲のチケットも非常に取りづらくなっている。

 相撲人気が爆発しているのは確かだが、ここでも海外観光客需要の影響も少なくない。国技館などは四方を外国人観光客に囲まれていることもよくある。

 日本の文化を感じ取ってもらえるのはうれしいのだけど……オーバーツーリズム問題は確実に身近に迫っている。

 この状況はすぐには解決しない。となると自分がこの問題にどう慣れて、うまく対処できるようになるかが課題になる。

 排除できれば気分は楽になるのだろうけど、今の日本経済を支えているひとつは間違いなく外国人観光客。それで潤っている業界もある。潤った人たちが競馬をしてくれれば……我々にも還元されるはずだ。

 こだまで大阪まで行こうとすると結構、時間がかかる。その間、こんなことをもんもんと考えながら車窓を眺めていた。

 大相撲協会は今、何やら怪しい雰囲気になっている。

 今回の件、正直、どこまで罪が深くて、どの罰がふさわしいのかは分からない。

 しかし、何やら起こったことではなくて、妙な人間関係が影響しているような気がしてならない。

 自分が相撲に熱中したのは今から40年以上前。その間、平成の相撲ブームを牽引した若乃花、貴乃花が協会を去って、同じ時期に活躍していた曙も協会に残らなかった。

 一人横綱で数年頑張った朝青龍は素行が悪く、結局は引退勧告を受けて協会を去っている。

 いずれも自分の仕方ない部分はあるのだろうけれども、横綱が残れないこと自体が問題なような気がして、非常に残念。

 そして、またひとり弾かれそうな雰囲気がある。

 自分自身を顧みると嫌なものからは距離を取って、できれば排除したい。気分良く生きるためのすべともいえるのかもしれない。

 しかし、これを組織内でやろうとすると……

 伝統を守ることの大事さがどの程度、重くて大変なのかは良く分からない。

 それでもいろいろなものを吸収して、もっと高い次元に伝統を昇華できる可能性もあるような気がする。

 競馬も海外からいろんな人や馬が来て明らかにレベルは高くなった。

 血統などはその最たるものかもしれない。

 相撲協会は今、大きな岐路に立たされているような気がする。

 今の盛り上がりが維持できるように、是非とも冷静な判断をしてほしいと願うばかり。

 自分が観戦した春場所2日目は椅子席までびっしりと埋まる超満員御礼。

 トイレに行くのも外へ出るのも大変だったが、やはり、相撲はお客さんがたくさんいてこそ盛り上がる。

 取沙汰されている問題はともかく、非常に満足できる一日を過ごすことができた。

 そして、今、自分にとっての問題は馬券が当たらないことと大阪で増えてしまった体重をいかに落とすかとうこと。

 この問題はずっと解決しないのかもしれないな~

美浦編集局 吉田 幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。