春競馬本番(青木行雄)

 大阪杯も終わり、今週からはいよいよクラシック。春競馬本番と言えるだろう。今年も牝馬、牡馬ともに混戦模様。以前のように牝馬ならチューリップ賞、牡馬なら弥生賞という王道のローテーションが崩れており、最近はステップレースがバラつく傾向。年明け緒戦で臨むのも当たり前になっており、この一冠目の予想というのは本当に難しくなっている。

 最終的な印を決めるのはもう少し先になるが、ここではこの2戦を占ってみたい。まずは今週末に迫った桜花賞。中心はクイーンCの勝ち馬クイーンズウォークで考えている。未勝利を勝つ前から坂路でもかなりの存在感があった馬。牝馬ながらも500kを超える雄大な馬格の持ち主。とにかく大きなフットワークが印象的。本来はオークスの方が向いていそうな印象もあるが、広々とした阪神の外回りならマイル戦でも問題ないだろう。1週前の動きも軽快で仕上がりに関してもばっちりだ。

 相手候補はまずはチェルヴィニア。10月のアルテミスS以来で、ここがぶっつけ本番となったが、早めの栗東入厩でしっかりと仕上げられている。陣営のコメントを見ると少し慎重な印象だが、動き自体に重苦しさは見られない。怪我のためルメール騎手が騎乗できなくなったのは痛過ぎるが、前走内容はかなり強かっただけに、底力に期待したい。スウィープフィートはチューリップ賞が鮮やか。結構続けて狙っていた馬だが、武豊騎手に乗り替わった途端、あっさりと快勝。永島騎手も頑張っているが、ここは格の違いを見せつけられた印象。引き続き好勝負だろう。あとは3戦3勝、阪神JF以来の出走となるアスコリピチェーノか。こちらも早めの栗東入り。今回、実に5頭もの関東馬が栗東にやってきた。美浦も立派な坂路ができただけに、もっとこれを活用すればとも思うのだが。まあ、有力関東馬を直接見ることができるのは有難いと、前向きに捉えたい。で、そのアスコリピチェーノ。どこまで強いのか正直まだ分からない部分もあるが、前走でも初めての関西遠征、初めての右回り。しかも夏以来の一戦で勝ち切ったあたり、相当な素質の持ち主であるのは間違いない。とりあえずはこのあたりの馬に注目か。

 続いて皐月賞。こちらは更に混戦模様の印象だが、ちょっと穴っぽいところでルカランフィーストを本命にと考えている。スプリングSが価値ある3着。収得賞金は900万円だったので、4着馬とのハナ差の接戦を制したのは大きい。京都2歳Sは関西への長距離輸送と揉まれる競馬になったことで力を出し切れなかったが、スプリングSは頭数こそ少し落ち着いていたものの、一応は揉まれる競馬でも我慢して最後はよく伸びていた。この馬で最も印象的だったのは前々走の若竹賞。後方待機から直線大外を豪快に突き抜けた脚は強烈。本番は頭数がフルゲートになることを考えれば、思い切って下げてしまうのもありだろう。開催最終週ということもあり、皐月賞は内めの馬場が荒れがち。ならば昨年のソールオリエンスのような競馬が見られるかも。

 相手はまずシンエンペラーか。賞金は十分持っているにもかかわらず、スプリングSを使ってきたあたりは、とにかく実戦を経験させたいということだったのだろう。まだ走りには若さも見られるだけに、レースを重ねるごとに良くなっていくのは間違いない。ダノンデサイルは中間の雰囲気が凄くいい。以前は京成杯からの直行というのはイメージが湧きづらかったが、昨年のソールオリエンスがあっさりとクリア。右回りでは一度も大崩れしておらず、ここも十分勝ち負けになりそう。サンライズジパング、メイショウタバルあたりは荒れ馬場が合いそう。雨でも降って道悪になるようなら、俄然怖い存在に浮上する。

どちらもなかなか難しい一戦になりそうなクラシック第一冠だが、馬券的には非常に面白そう。特に今年の桜花賞は競馬場の桜もタイミングがばっちり。大阪杯でも入場者数は3万人弱でコロナ前に比べるとまだまだ淋しい印象を受けたが、今週は4万人くらいは入ると見た。プロ野球に負けないくらい、大いに盛り上がってほしいもの。

 

青木行雄(調教取材担当)

昭和44年8月7日生 大阪府出身 A型

1993年入社。坂路調教担当。北海道開催時と西のローカルでは本紙予想も担当。開催日はMBSラジオ「GOGO競馬サンデー!」、BS11「BSイレブン競馬中継」に出演。高松宮記念の週に久しぶりに動画の競馬ブックTMトークに出演したが、司会を降りて約3カ月ぶりの出番とあり、何か妙に楽しかった。毎週、司会を担当していた時は結構な負担に感じていたが、不思議なものである。今度はまた3カ月後。高松宮記念は的中とならなかったので、今度こそはバシッと決めたい。