血統閑談#019 キズナvsエピファネイア府中の陣(水野隆弘)

 この春は桜花賞G1をエピファネイア産駒ステレンボッシュが勝ち、天皇賞(春)G1は勝ったのがリオンディーズ産駒のテーオーロイヤルで2着はエピファネイア産駒ブローザホーン、NHKマイルCG1では10番人気のリオンディーズ産駒ロジリオンが3着となりました。エピファネイアもリオンディーズも名牝シーザリオの産駒です。複数の産駒が競走馬として成功するだけでも難しく、それぞれが種牡馬として成功するのは輪をかけて難しいことですから、母としてのシーザリオがいかに偉大かが分かります。そのような流れからヴィクトリアマイルG1ではエピファネイア産駒のモリアーナを本命にしたところ、ご存じのように同じエピファネイア産駒でブービー人気のテンハッピーローズが勝ちました。まあ、そんなものです。馬券は外れましたが、シーザリオの血を引くもの、とりわけエピファネイア産駒のこの春の大活躍という流れは続いています。
 エピファネイアといえば、それを2013年の東京優駿(日本ダービー)G1で差し切ったのがキズナです。同期のライバルであった2頭は種牡馬としても同期で、エピファネイアが初年度産駒から三冠牝馬デアリングタクト、2年目の産駒から年度代表馬エフフォーリアと牡牝の大スターを送り出して先行します。一方、キズナの初年度産駒はアカイイトが4歳秋にエリザベス女王杯G1に勝ってG1初制覇を果たし、2年目の産駒ソングラインは4歳で安田記念G1に勝ち、5歳を迎えてヴィクトリアマイルG1と安田記念G1を連勝します。そして、今年はジャスティンミラノが皐月賞G1に勝ちました。待望のクラシック馬、牡馬のG1勝ち馬です。今年の産駒のグレード勝ちはエピファネイア、キズナそれぞれ7勝で拮抗していますが、エピファネイアはG1に2勝、キズナは1勝と内容的には前者が優勢といえますが、キズナは7つのうち5つが3歳限定戦で、この世代の豊作ぶりが窺えます。
 さて、この2頭の産駒が父たちの現役時同様ワンツーを決めた例はいかほどかということは以前にこちら(血統閑談#006)で書きました。代表的な例としては2021年有馬記念G1の1着エフフォーリア、2着ディープボンドがなどありますが、結論としては、ワンツーフィニッシュが特に多いわけでも少ないわけでもなく、そればかり決め打ちしていたら普通に損をするという盛り上がりに欠けるものでした。まあ、そんなものです。とはいえ、今年は種牡馬ランキングの首位をキズナが走り、エピファネイアは3位とはいえ前述の通りの質と勢いを誇ります。今回は過去の全レースを調べて盛り上がりに欠ける結果だと詮ないので、重賞に絞って産駒のワンツーを書き出してみましょう。
 
●京成杯-G3 2020年1月19日 中山
 1着クリスタルブラック(キズナ)7人気
 2着スカイグルーヴ(エピファネイア)1人気
  単勝2,090円 馬単8,220円
●マーメイドS-G3 2021年6月20日 阪神
 1着シャムロックヒル(キズナ)10人気
 2着クラヴェル(エピファネイア)5人気
  単勝2,050円 馬単21,960円
●有馬記念-G1 2021年12月26日 中山
 1着エフフォーリア(エピファネイア)1人気
 2着ディープボンド(キズナ)5人気
  単勝210円 馬単2,070円
●京都新聞杯-G2 2022年5月7日 中京
 1着アスクワイルドモア(キズナ)8人気
 2着ヴェローナシチー(エピファネイア)7人気
  単勝1,780円 馬単17,150円
●日経新春杯-G2 2024年1月14日 京都
 1着ブローザホーン(エピファネイア)1人気
 2着サヴォーナ(キズナ)4人気
  単勝410円 馬単2,890円
●クイーンC-G3 2024年2月10日 東京
 1着クイーンズウォーク(キズナ)1人気
 2着アルセナール(エピファネイア)3人気
  単勝310円 馬単1,500円
 
 これだけ見ると5年で6例と1年1回強の率のものが、今年は既に2回出ていますので、もうないなという見方もできます。しかし、今年はキズナもエピファネイアも好調だということを考えると、早くも2回出現するほどの特異年なのではないかということもいえます。
 例えば今週の優駿牝馬(オークス)G1の登録馬はエピファネイア産駒がステレンボッシュ1頭、キズナ産駒はクイーンズウォーク、タガノエルピーダ、ライトバックの3頭。来週の東京優駿(日本ダービー)G1はキズナ産駒がサンライズジパング、シックスペンス、ジャスティンミラノ、ジューンテイク、ショウナンラプンタの5頭出しで、エピファネイア産駒はダノンデサイルとビザンチンドリームの2頭。これ以上ない最高の舞台で、それぞれに豪華な布陣による総力戦といえるのではないでしょうか。
 
栗東編集局 水野隆弘
 
水野隆弘(調教・編集担当)
昭和40年10月10日生まれ、三重県津市出身
1988年入社。週刊誌の編集、調教採時担当。前回の当番の際には「2歳ゼッケン緑の21番がゲート練習しているのを見つけました」と書きました。今朝、5月16日には320番を見つけました。JRAでの2歳戦が始まるまで、もう1カ月を切っています。「週刊競馬ブック」の今週号(5月13日号)の「東西2歳登録馬」と来週号(5月20日号)の「トラックマン総力取材! 2歳注目馬紹介」でひと足先に楽しみましょう。