有馬記念は好きな馬を(山田理子)

 競馬ファンにはスペシャルな1週間。お決まりの文句は「有馬記念は好きな馬を買いましょう」というフレーズであり、今年もすでに目にし、耳にしている。私にとっての「好きな馬」とはLIKEやLOVEではなく、予想屋として説明しづらいけど「好きに買いたい馬」がしっくりときて、それで言うなら今年はパフォーマプロミス。週刊トレセン通信がこのタイミングで回ってきたので、平成最後の有馬記念で「好きなように」書いてみたい。

 まずはみなさんもご承知の通り血統的なバックボーン。ステイゴールド産駒は有馬記念で(4.1.2.10)。ドリームジャーニー(09)、オルフェーヴル(11、13)、ゴールドシップ(12)の3頭で4勝している。近2年の中山芝2500mは(5.9.7.28)。出走数49自体が最多であり、1、2、3着回数がいずれも最多なのは分母の大きさがもちろんあるが、連対率.286も優秀な数字だ。

 次に宝塚記念からマイナス1Kの斤量57K。牡馬にしては小ぶりで春のグランプリの時は450Kを割っていたこともあり、初めて背負う58Kは少なからず応えていたのではないか。しかも、雨でタフな馬場では尚更キツかったと推測する。これまで57Kでは⑥⑥⑥①③着。ハンデ戦(54~56K)で①②②①①③①着だからベターは56K以下だが、取消明けで上がり3F11.1-11.0-11.2の上がり勝負だったアルゼンチン共和国杯(56K)の勝ちぶりから今なら1K増でもと思う。

 そして、昨年有馬記念の前日のグレイトフルS(1600万、芝2500m、56K)の内容。バイオンディップスが20馬身ほど引き離して逃げるレース展開のなか、最内枠を最大限に生かして終始インを立ち回り、4角でロスなく外目に進路を確保する最高の立ち回りで勝利している。小社成績欄の“次走へのメモ”には「直線で内の悪いところを避けたギリギリロスのないところまで持ち出す」との記録。このあたりの臨機応変さがまたいい。

翌日の有馬記念と数字を比較すると

【勝ちタイム】
2分34秒1(グレイトフルS)
2分33秒6(有馬記念)

【レースラップ】
(グレイトフルS)
7.0-11.5-12.1-12.0-12.2-13.0-12.8-12.7-12.3-12.4-12.6-11.7-11.8
(有馬記念)
6.8-11.6-11.9-12.2-12.3-13.3-13.2-12.8-12.2-12.1-11.7-11.2-12.3

【200m毎の通過タイム】
(グレイトフルS)
36.6-48.7-1.01.3-1.14.2-1.27.0-1.39.5-1.51.8-2.04.3-2.16.5-2.28.2
(有馬記念)
36.4-48.7-1.01.5-1.14.7-1.27.7-1.40.2-1.52.4-2.04.3-2.15.7-2.27.5

 グレイトフルSは大逃げの展開だったのでラップの比較は難しいが、単純に2000m通過は2.04.3で同じ。有馬記念でハナを切ったキタサンブラックが残り3F→2Fで11.7を刻んだのに対し、グレイトフルSで逃げた馬は脚が上がって12.6にラップが落ちている。パフォーマプロミスはこの区間で先頭から7、8馬身の差を3馬身ほどに詰めてスパート。ラスト1Fはキタサンブラックを上回り、また、これと1馬身半、ハナ差の3着シュヴァルグラン(走破タイム 2分33秒8 注:直線で不利はあったが)と遜色ないと推察する。

 結論としては、うまく事が運べば足りてもという位置づけ。外、外を回って差し込む力はなくても、小回りが利くのが今年のメンバーで大きな強みとなる。内枠なら最高だが、そうでなくても、キセキが引っ張る縦長の馬群になれば、バラけた好位を淡々と進む好走パターンに持ち込めるのではないだろうか。

栗東編集局 山田理子

山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。