この季節の悩み事(和田章郎)

 一日毎に寒さが厳しくなる今日この頃。12月は毎年慌ただしいものですが、中旬を過ぎると余計に気が急いてきます。

 自分の場合、その一番の要因として、この時期に必ず悩まされる二つのことが挙げられます。ひとつは年賀状の図案、文面をどうするか。そしてもうひとつが、翌年に使う日記帳の選定です。

 毎年のことですし、時期もわかっているのですから、前もって動けばいいだけなのですが、原稿を書くのが締切間際になりがちの人間には、なかなか簡単にはまいりません。そうでなくとも、暮れに向かうにつれて忘年会が連続してみたり、仕事の面でも年内に済ませておきたいことや、年明けの作業の準備やらと、公私ともども時間に追われる時期ですんでね。

 だから、と言っては言い訳になりますが、つい年賀状については大まかなことを家人に任せるケースが多くなります。しかし、日記帳の方はそうはいきません。何しろ一年間、毎日使うツールですから、やっぱり自分が気に入ったモノでないと。
 結論、自分で探すしかなく、これが実に厄介なのです。

 継続的に書き始めたキッカケというのは、子供の成長を記しておこうと思ったから。もう20年以上も前にスタートしたことになりますが、その当初は問題はなかったのです。とても気に入ったモノがあって、毎年それを購入すればよかったので。
 その製品は日記帳というか、見開き1週間のデスクダイアリー形式で、左ページに月~水曜の3日分、右ページに木~日曜の4日分のマスがあるもの。この型ですと、普通はマスの中は横罫だけですが、この製品が独特だったのは、マスの中央に縦の罫線が入っていて、その左右のスペースに横罫が入っていたことです。他と比べて、しっかりと書き込めるようになったモノでした。
 それが、20世紀の終わり頃に姿を消しました。

 馬鹿なこだわり、と言われると身も蓋もないのですが、発行元に直接電話して問い合わせました。すると、「その型式はもう製造していない」という絶望的な答えが。ここから年末の悩みがひとつ増えることになったのです。

 やむなく他の会社の製品に切り替えましたが、似たタイプはあっても、前述の通りマス内は横線だけ。少々レイアウトやスペースに物足りなさがあって、だから自分で縦線を書き込んでみたりもしましたが、逆に書きにくく、読みにくくなったりもして、どうしてもしっくりきません。
 それで毎年毎年、「今年こそは新製品が出ていないか」と書店、文房具屋さんを見て回ることになったわけです。紙製品は手に取ってみないことにはわからないですから。

 それでもなかなか気に入ったものがなく、妥協しながら数年を過ごしましたが、今年の分を選ぶ際に、心機一転。同じ見開きタイプですが、マス内に何も書かれていないモノを試してみることにしました。まったくの白紙ですから、字の大きさも書く量も適当になってしまいがちですが、これが案外、悪くありません。
 「変に意固地にならず、新しいことにはチャレンジしてみるもんだな」

 なんてことを、自分のことながら感心しつつ、これで年末の苦労がひとつ解消された、などと思っていたらとんでもありませんでした。
 こともあろうに、その製品をどこで購入したかがわからないのです。昨年の日記を開いて購入した日は判明したのですが、そこに購入場所が書き込まれていなかったのです。一体、何のために日々のことを綴っているんだか…と呆れるやら愕然とするやら。

 そう、時代は変わりましたからね。現在使っている日記帳の会社に直接ネットで申し込む手はあるのですが、気に入ったはずの製品に、どこかでまだ不満があるのかもしれません。ネットで注文するくらいなら、いっそ新しいモノに替えてみてもいいのかな、と。

 そんなわけで、また今年の師走も、開いた時間を使っての書店、文房具屋巡りを続けているところです。成長がないというか、進歩がないというか…。
 でも、結局のところ何にどう出会うかがすべて、というところはないですか。人であれ何であれ、です。そのために日々を送っている、と言ってもいいくらいで。

 公私ともに今年もいろいろな出会いがありました。いいトシをして、新しい出会いがあるというのは幸せなことだと思います。その時々でお世話になりっぱなしで、反省や自戒の念は相変わらずですが、今はただ感謝の気持ちでいっぱいです。
 “心機一転”とか、“新しいことへのチャレンジ”。そういった気づきを胸に一年を終え、新しい一年につなげたいと思っています。

美浦編集局 和田章郎