2013年激戦のクラシック(山田理子)

 2月6日の水野隆弘編集員による当コラム「春まだ浅いインパクト」を読んで以来、3世代目がクラシックを迎えるディープインパクト産駒のことが気になって仕方がなくなり調べてみた。父サンデーサイレンスの3世代目(94年生まれ、クラシックシーズンは97年)、2世代目のディープインパクト産駒(09年生まれ、クラシックシーズンは12年)との比較。すると、3世代目の現3歳のディープインパクト産駒が凹んでるのは明らかだった。3年目に種牡馬成績が落ちるケースは少なくなく、実際、サンデーサイレンスも3年目の成績は芳しくなかったが、それでも年明けのオレンジピールによるクイーンCとチューリップ賞に、ビッグサンデーのスプリングSの重賞3勝があった。3年目のディープインパクトは3月半ばを過ぎてカミノタサハラの弥生賞1勝のみ。ヴィルシーナのクイーンCで、東京スポーツ杯2歳S(ディープブリランテ)から、阪神ジュベナイルF(ジョワドヴィーヴル)、ラジオNIKKEI杯2歳S(アダムスピーク)、ジェンティルドンナ(シンザン記念)、京成杯(ベストディール)、きさらぎ賞(ワールドエース)と重賞出走機会7連勝を遂げた昨年とはえらい違いだ。種付け頭数をいえば、サンデーサイレンスの1年目から6年目が77→84→99→118→142→183。ディープインパクトが215→232→171→219→229→246。09年のディープインパクトの種付け頭数は前年比61頭減となる自身最少の171頭だが、決して少なくはない。207頭だったシンボリクリスエスから大物エピファネイアが出たし、203頭のフジキセキからはメイケイペガスター、タマモベストプレイの重賞勝ち馬が出ているあたり数の優位もあるのだろうが、それにしてもディープの1勝は淋しい。母父SSと他のSS後継種牡馬と戦わねばならないディープインパクトをその心配がなかったサンデーサイレンスの3年目と比較するのは気が引けるとしても、2年目から急失速している事実は否定できない。

 クラシックを目前にした10年生まれの現3歳の異変として挙げられるのが、この世代から産駒のJRA重賞初勝利となるケースが多数あること。ブラックタイド、ケイムホーム、テイルオブザキャット、ローエングリン、ロサード、オンファイア、スズカマンボがそれ。フラワーカップを制したサクラプレジールとて、父サクラプレジテントにとっては2週前のオーシャンSを勝ったサクラゴスペルに続いてまだ2頭目のGウイナーだ。これらの躍進によりディープインパクト産駒が振るわないのか、ディープインパクト産駒の不振によりこれらが台頭しているのかは定かでないが(私自身は後者と思う)、リーズナブルな種付け料の馬たちが旋風を起こしているのが長引くデフレの世を反映しているようで、それもありかなと面白い。ただ、重賞初勝利となれば人気を背負ってクラシックレースに向かう前例もない訳で、見ている側は信頼し切れない部分がある様子。弥生賞、チューリップ賞の主流トライアルを終えても、「牡馬も牝馬も確固たる主役が不在」が大方の見方だ。

 サンデーサイレンスの3年目は結局、クラシックレースと秋華賞の6冠でタイトルのないまま終わった。皐月賞、日本ダービーを制したサニーブライアンを筆頭に、マイネルマックス、シルクジャスティスがいたブライアンズタイムの当たり年であり、思い起こせば、ブライアンズタイムだけでなく、他にクラシックホースを出したメジロライアン、ダンシングブレーヴも2歳夏から3月半ばまでに重賞勝ち馬を複数送っていた。混沌としたなかにも種牡馬の傾向はあり、それが結果として出たことになる。とするとクラシックホースはこの世代で重賞を2勝以上しているキングカメハメハ、ローエングリン、ハーツクライ、フジキセキ、クロフネから出るのか。はたまた、一連の流れから「JRA重賞初勝利」組が一気に頂点を極めるのか……。
 と、ここまで書いて、じゃあ、ディープインパクト産駒は切りましょうとなればキレのあるコラムになるのだが、カミノタサハラだとそうはいかない。何しろディープインパクト産駒はガサがあって馬力があるタイプがG1まで上がっていくからだ。リアルインパクトの安田記念が494K、ディープブリランテの日本ダービーが496K(ちなみに当時3着のトーセンホマレボシが504K)。牝馬でもマルセリーナの桜花賞が452K、ジェンティルドンナの牝馬三冠+ジャパンカップが456K、460K、474K、460Kで、小さかったのはジョワドヴィーヴルぐらい(阪神JF時418K)。ダート走る母系で骨太で、510K以上あるカミノタサハラは怖い。いろいろ調べて書いてみたけど、要するに今年は難しいね、ということです。

栗東編集局 山田理子