なぜ変わった?ホエールキャプチャ再考(山田理子)

 ヴィクトリアマイルの馬券は難しすぎた。ホエールキャプチャは買えなかった。たとえ人気薄にこられても、たいていの場合、走られた後ならあれやこれや好走の理由を思いつくものだが、今回のホエールキャプチャはそれがなかった。完敗で頭が真っ白。解決しないままじゃ前に進めないから、何か買えたヒントがあったのか、考え直す必要がある。

 ホエールキャプチャ。5歳牝馬。父クロフネ、母グローバルピース、母の父サンデーサイレンス。レーヴディソールが単勝1.6倍の圧倒的支持に応えて優勝した阪神ジュベナイルFで半馬身差の2着。絶対的存在だったレーヴディソールの戦線離脱で混沌とした世代の最前線でクラシックを戦い抜き、マルセリーナ、エリンコート、アヴェンチュラが三冠を分けた2年前の桜花賞、オークス、秋華賞を1、2、1番人気で2、3、3着。三冠を終えた直後に年長を相手にしたエリザベス女王杯ではひとつ着順を落として4着。休養を挟んで4歳になると3月の中山牝馬Sから始動(5着)し、叩き2戦目で臨んだヴィクトリアマイルで悲願のGⅠタイトルを手にした。08年生まれの現5歳の牝馬でトップクラスの力を示し、昨年の覇者であったにもかかわらず、12番人気単勝44倍の低評価にとどまっていたのは、その後1年間の成績不振に尽きる。以降の5戦は14、11、10、13、14着の負けっぷり。06年の創設以来、リピーターがウオッカとブエナビスタしかいないレース傾向もあり、牡馬が気圧されるぐらいのパフォーマンスを見せていた2頭と同等の評価はなかなかできるものではない。綿密な検討対象からアッサリと外されてしまったケースは多いのではないだろうか、WIN5を的中させた周りの2、3人に尋ねてみても「(勝った馬がヴィルシーナではなく)ホエールキャプチャなら外れていた」が同一の答えだった。

 完敗だった1年間を振り返ってみよう。

【2012年6月24日宝塚記念14着】現役トップクラスと初対戦。牡馬相手は2歳10月の芙蓉S(1着)以来のこと。最終週で芝はボコボコ。好位直後で、少し行きたがるぐらいの道中。3~4角でペースが上がった時の攻防で後れを取り、盛り返す場面がなく後退してオルフェーヴルから4秒2差離れての入線となる。着差が大きく負けすぎの感はあるが、メンバーを考慮すれば仕方ない面はある。

【2012年10月13日府中牝馬S11着】3カ月半の休み明けのうえ、斤量はメンバー中最も重い56K。大外枠で道中の行きっぷりは良すぎるぐらい。残り400mまでは鞍上が手綱を持ったまま。追われてからの反応の鈍さはレースが開いていた影響か、残り200m地点では圏内だったが、そこからどっと交わされてしまう。ラストはもう無理していない感じ。コンマ6秒差で11着でも、成績から受ける印象ほどの完敗のイメージはない。

【2012年11月11日エリザベス女王杯10着】朝から雨。気象庁の記録によれば当日京都市の15時~16時の雨量は3mm/h。たっぷりと水を含んで見た目に馬場は重く、レース中、水しぶきと泥が跳ね上がっていた。中団追走。折り合いはついた。3~4角で周りが仕掛けた時に動かずに直線向いたが、いざ追われて反応が悪い。残り200mを過ぎると完全に脚がなくなり脱落。

【2012年12月5日クイーン賞13着】初ダート。57.5Kのトップハンデ。スタートで躓く。中団で流れに乗るも鞍上が仕掛けつつで楽には見えない。向正面では追いたくっての追走に。結局見せ場はなく、先頭から2.9秒差の大敗。

【2013年4月6日阪神牝馬S14着】昨年と違い、ステップレースに中山牝馬Sでなくこちらを選択。他より重い56K。当日は低気圧の影響で終日雨だった。良発表でも見た目に馬場は悪い。2つ前の9R白鷺特別(芝2400m)で、それまでダートしか勝ち星のなかった馬が勝っていることからも力を要する馬場だと推測できる。1馬身弱ほど出遅れるも好位直後。気負い加減にも見えるが、行きっぷり良く進む。ただ、直線半ばでGOサインが出されても無反応。抵抗する場面なく急失速してしまう。

 こうして検証するとなるほどいくつか思い当たる。以下に好走できる状況下になかったと思われる材料と、それに該当したレースを列挙してみた。

・これまで1800mを超える距離で連対したことがない(宝塚記念、エリザベス女王杯は2200m)。

・昨年ヴィクトリアマイルを勝った後、定量のGⅠを除いては常に一番重い斤量を背負わされていた(府中牝馬S56K、クイーン賞57.5K、阪神牝馬S56K)。

・行きっぷりのいいタイプなので前に馬を置けない形だとラストに脚を残せないことが多々ある。休み明けだとなおさら。斤量を背負っている分もある(府中牝馬S)。

・ダートのクイーン賞での負けっぷりを見ると、本質的にタフなレースは不向きなのか。古馬になってからは、斤量を課せられていることもあり、道悪(良でも雨の場合)でまったく結果を出せてない(エリザベス女王杯、阪神牝馬S)。

 以上から、この1年間の5走は力を出せる条件下になかったという見方は成り立つ。休み明けだったり、距離が長かったり、道悪だと馬が最後は無理してないケースもあったか。それが実際の力以上に開きのある着差と着順になり、今回、盲点になった要因なのかも知れない。後から考えれば東京マイルではクイーンCに、ヴィクトリアマイルの2戦2勝だった。持ち時計もある。

 ところで3歳の2月に設定されているクイーンCだが、2年前の1、2着がホエールキャプチャ、マイネイサベル。昨年の勝ち馬がヴィルシーナ。今回の1~3着はすべてそこで連対している馬だった。おー、3頭で3連複35,770円、3連単193,570円もついているではないか!

 「予想屋さん、先に言ってよね」って聞こえてきそうですね。……すみません。

栗東編集局 山田理子