その真っ白い馬体が先頭でゴール板を駆け抜けた瞬間、スタンドの歓声はひと際大きくなった。11月3日東京11R、白毛として人気のハヤヤッコがアルゼンチン共和国杯を制覇。8歳にして3つ目の重賞タイトルを手にした。勝ち時計2分29秒0は2005年以降の過去20年で最速だった。
また翌週、11月10日はアラタが福島記念で重賞初制覇、エリザベス女王杯ではスタニングローズが約2年ぶりの復活勝利を挙げた。さて、ここまで読んでこれら3頭の共通点はお分かりだろうか。
そう、先日重賞を勝ったこの3頭はいずれもキングカメハメハ産駒だった。キングカメハメハに関してはもはや多くを語るまでもないだろう。2004年にNHKマイルC→日本ダービーと変則二冠を達成した同馬は種牡馬としても大活躍。アパパネ、ロードカナロア、ドゥラメンテらを輩出し、今年2024年にJRA顕彰馬に選出された。ちなみに先日のスタニングローズの勝利により牝馬限定GⅠは完全制覇となった。ハヤヤッコが8歳にして好時計で重賞を勝った瞬間、愛読している書物にかつて「キングカメハメハ産駒は高齢になっても渋太く、侮れない」とあったのを思い出し、それならばと福島記念ではアラタに本命◎を打つことができた(珍しく的中)。
というわけでキングカメハメハ産駒の重賞成績を調べてみた(今回はJRAの平地、障害重賞のみ。地方、海外は除く)。
<キングカメハメハ産駒 中央重賞 144勝(11月20日現在 順不同)>
【2歳 11勝】
主な勝ち鞍:リオンディーズの朝日杯FS、ローズキングダムの朝日杯FS、アパパネの阪神JF、コディーノの札幌2歳S・東京スポーツ杯2歳S、フィフスペトルの函館2歳S、レイデオロのホープフルSなど11勝
【3歳 33勝】
主な勝ち鞍:アパパネの牝馬三冠、ドゥラメンテの皐月賞・日本ダービー、レッツゴードンキの桜花賞、ローズキングダムのジャパンカップ、スタニングローズの秋華賞、ルーラーシップの鳴尾記念など33勝
【4歳 36勝】
主な勝ち鞍:レイデオロの天皇賞(秋)、アパパネのヴィクトリアマイル、ロードカナロアのスプリンターズS、ブラヴァスの新潟記念、ディアデラマドレのマーメイドS・府中牝馬S・愛知杯、ヤマカツエースの中山金杯・金鯱賞、エアスピネルの京都金杯など36勝
【5歳 41勝】
主な勝ち鞍:ロードカナロアの高松宮記念・安田記念・スプリンターズS、ラブリーデイの宝塚記念・天皇賞(秋)、ベルシャザールのJCダート・武蔵野S、ホッコータルマエのチャンピオンズC、チュウワウィザードのチャンピオンズC、ジュンライトボルトのチャンピオンズC、ミッキーロケットの宝塚記念、シュトルーヴェの日経賞・目黒記念、スタニングローズのエリザベス女王杯など41勝
特に凄いのが5歳での成績。ロードカナロアが年間6戦5勝、ラブリーデイが年間10戦6勝と無双したのが5歳なら、ベルシャザール、ホッコータルマエ、チュウワウィザード、ジュンライトボルトがダート王者に輝いたのも5歳。この時期に本格化する馬も多いのかもしれない。
【6歳 13勝】
主な勝ち鞍:ペプチドナイルのフェブラリーS、ダイワキャグニーのエプソムC、センチュリオンのマーチS、サクラアンプルールの札幌記念、サクセッションの新潟JS、ケイアイエレガントの京都牝馬S、ヒートオンビートの目黒記念、アドマイヤロイヤルのプロキオンS、グランドシチーのマーチSなど13勝
今年のフェブラリーSを制したペプチドナイルが6歳。これが現在のキングカメハメハ産駒の中央最高齢GⅠ勝利となっている。ちなみにダイワキャグニー、センチュリオン、サクラアンプルール、サクセッション、ヒートオンビート、アドマイヤロイヤル、グランドシチーらは6歳で重賞初制覇だった。
【7歳 7勝】
主な勝ち鞍:アラタの福島記念、ボッケリーニの鳴尾記念、サーストンコラルドの東京JS・東京HJ、スズカデヴィアスの新潟大賞典、トーキングドラムの阪急杯、ヒットザターゲットの目黒記念
5歳で本格化する馬が多く、6歳で重賞初制覇する馬も多いと思いきや、5歳6歳でもまだ若い。アラタ、サーストンコラルド、スズカデヴィアス、トーキングドラムは7歳で重賞初制覇。またヒットザターゲットは4歳時5歳時に重賞を勝った後、7歳にして復活した。
【8歳 3勝】
主な勝ち鞍:ハヤヤッコのアルゼンチン共和国杯、クルーガーのダービー卿CT、ケイアイドウソジンの阪神SJ
ハヤヤッコは3歳→6歳→8歳で重賞勝ち。クルーガーは4歳で初めて重賞を勝ったあと、約4年勝ち星から遠ざかり8歳で復活。ケイアイドウソジンは6歳で初めて平地重賞を勝った後、8歳で障害重賞を勝利した。
やはりキングカメハメハ産駒は高齢になっても活躍する馬が多く、ヒットザターゲットやクルーガー、スタニングローズのようにしばらく勝ち星から遠ざかっていても復活する渋太さがある。今週のジャパンカップにはシュトルーヴェがスタンバイ。そして冒頭に記したハヤヤッコ、アラタ、スタニングローズの3頭はいずれも有馬記念を予定と発表された。ハヤヤッコ、アラタが勝てばキングカメハメハ産駒の中央最高齢GⅠ勝利を更新となる。意外と侮れないかもしれない。
赤塚俊彦(厩舎取材担当)
1984年7月2日生まれ。かに座。千葉県出身。2008年入社。美浦編集部。
X(旧Twitter)やってます→@akachamp5972
今回はキングカメハメハの直仔を取り上げたが、ご存知ロードカナロアやドゥラメンテ、ルーラーシップ、ホッコータルマエらは種牡馬としても多くの産駒を輩出。またデアリングタクトやソダシ、チェルヴィニアの母の父としてもお馴染みで、今やキングカメハメハの血を持つ馬が日本競馬界を席巻していると言っても過言ではない。先週のマイルCSを勝ったソウルラッシュもキングカメハメハの孫だ。自身の成績、そして子供や孫たちの活躍は実に顕彰馬にふさわしい。
現5歳世代がラストクロップとなるキングカメハメハの直仔も段々と頭数が減っているが、個人的には5歳のキングズパレスと6歳のスレイマンの重賞初制覇に注目している。傾向を見ると来年や再来年に初めて重賞を勝つ日が訪れても何ら不思議はなさそう。その時にはちゃんと◎を打てるようにしたい。
私の一番好きな日本ダービーはキングカメハメハの勝った2004年。5月末だというのにとにかく暑かったのをよく覚えている(気象庁のHPによると30度あった)。前を行くコスモバルクを交わし、ハイアーゲームを競り落とし、最後に追い上げたハーツクライを寄せつけず。フジテレビ系列の実況の言葉を借りると、まさに「最強の大王が降臨した」瞬間。ただただ強かった。