ひょっとすると(吉田幹太)

 この原稿、アメリカ大統領選挙の速報を見ながら書いています。

 信じられないことが起こることには慣れているつもりでも、今年に入ってからはイギリスの国民投票といい、にわかには信じられないことばかりが起きている。

 勿論、これは他国の現在の情勢だけではなく、文化、歴史に対しての自分の認識不足が原因。それにしても、なんともきな臭く、波乱含みの世の中になってきたのは間違いないような気がします。

 他国のことを良く知らないという意味では、競馬も一緒なのかもしれません。ある程度の情報は入ってきて、実際に行ったことのある国の競馬ではあっても、細かいことは分かっていない。ここ3回の海外馬券の結果でつくづく、そんなことを感じさせられました。

 しかし、当たるにせよ当たらないにせよ、海外の情報が今までとは段違いに入ってきて、実際のレースもライブで見られるようになったのは歓迎すべきこと。他のスポーツでも世界レベルのものを楽しめるのと楽しめないのとでは、競技としてひとつレベルが違う。そんな印象もあるのではないでしょうか。

 馬券が一番なのは自分も同じですが、現地のロケーションや調整過程までの情報が入ってくるのがいちいち面白い。特にメルボルンCは24頭立ての多頭数。日本の競馬ではありえない頭数での馬券発売の中で、3連単で無投票の組み合わせがなかったのには驚きましたが、それ以上に、実際に馬券を買って見る24頭立てのスタートからコーナーに向かう緊張感。4コーナーから直線に向かう映像にも圧倒もされました。

 凱旋門賞が行われたシャンティイは、実際に行った人の話をレース前に聞いていただけに、シャンティイ城や美術館の前を馬が走っている姿を見て、あらためてヨーロッパの歴史の重みや威厳を感じ。ブリーダーズカップが行われたサンタアニタ競馬場は21年前に実際に行ったことがあるだけに、競馬の中身だけではなく、スタンドやロケーションの美しさが相変わらずだな~とあらためて見とれてしまいました。

 生産者の方や厩舎の人達とは違い、自分やファンにできることは予想をして馬券を買うこと。それによって覚えることがたくさんあり、それゆえにいろいろなところに目が届いていく。更には結果の分析もしっかりとできて、海外競馬への知識や理解が深まるのは間違いないでしょう。

 世の中の情勢は不穏になっているだけに、実際に旅行で行くのは少しハードルが高くなっている気もしますが、日本にいてこれだけ情報が入ってくるのだから、実際に行ったように分かる。本当に便利なことだと思う一方、ひょっとすると競馬も時代の節目を迎えているのではないかと感じずにはいられません。

 これからの10年くらい。いい時代なのかどうか、自分には到底判断できませんが、競馬にとっては明るい未来があるような気になってきました。

 自分もしっかりと時代の変遷に対応して、しっかりとしたスタンスで向き合いたいと思いを新たにしました。

 まずは次に馬券を売るだろうと思われる香港競馬。シャティンには実際に2回ほど行ったことはあるのですが、香港Cデーではいい思いをしたことがなくて……その反省を踏まえ、しっかり予想をしなければ。好配当でなくてもいい、何とか馬券をものにしたいと思っています。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。またJRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、恐らく、専門紙中でも指折りの国際派。