年明けのウインタースポーツはもっぱらテレビ観戦になりがち。でも、月曜日の成人の日だったから、行こうと思えば現場に行けたラグビーの大学選手権の決勝は凄い試合だったようで、新年早々、ちょっとだけ痛恨の念を感じることになってしまいました。

 その〝成人の日〟と〝ウインタースポーツ〟のワードを絡めますと、今年真っ先に思い浮かぶのは、やっぱりスキージャンプの高梨沙羅選手です。

 ソチの頃と比べると、何だかすっかりお姉さんになった感じ(当たり前か)ですが、ピョンチャン五輪のプレシーズンに、競技者としても益々進化した活躍を見せています。
 今季も「本番に取っておこうよ」と言いたくなるくらいの絶好調ぶりですけど、何しろ20歳ですから伸びしろの方に期待するべきでしょう。あとはバラエティー番組出演などには目を向けず、しっかり前を見据えて欲しい…などと思うのは余計なお世話か、な?。

 それはさておくとして、彼女、試合後のインタビューを英語でこなしてます。テニスの錦織圭選手やゴルフの石川遼選手などもそうで、活躍の場を世界に広げたいとなると、必要なスキルとして英語力(拠点を置く国の語学力も同様)が求められるのはわかります。これからの時代、どんどんそうなっていくんでしょう。

 ただ、公式の記者会見の席や、競技会場を離れてインタビューを受ける時などは、また別の方法を取っているようでもありますが。

 このあたりの話で思い出すのは、英語での日常会話をスムーズにこなせるイチロー選手や松井秀喜選手が、インタビューは基本、通訳を通していたこと。それは「誤解されて伝わるのが嫌だ」という理由からだと何かで読みました。

 プレースタイルはそれぞれ違いますが、自分が発信する言葉への責任の持ち方、という〝競技者の姿勢〟として、共通している考え方のように感じられます。

 さて上記の〝拠点を置く国の語学力〟ということで言うと、2015年にJRAに移籍したデムーロ、ルメール両騎手には、移籍に際しての免許取得試験で日本語が必須でした。つまりは公的にスキルとして認められた、ということになります。

 が、そうは言っても、通常のインタビューを日本語で行う必然性のようなものが、はたしてあるのでしょうか。重賞レース後の〝勝利騎手インタビュー〟などを見るたびに、つい思ってしまいます。時々、不快に感じることもあるくらいで。

 不快なんて書くと誤解されかねないのでお断りしておきますが、決して彼らの日本語が拙くて聞き苦しい、などと思っているわけではありません。

 サービス精神旺盛な2人ですから、できる限り日本語でファンの皆さんに感謝の気持ちを伝えたい、というのはあるでしょう。理解できます。
 ただ、では本当に彼らが言いたいことが言えているのだろうか、伝えたいことをきちんと発信できているのだろうか、とも思うのです。
 これは彼らに対する同情、というだけではなく、聞いているファンにも「そんなインタビュー内容でいいんですか?」と思ったりすることでもあります。世界を股にかけたトップジョッキーの、レース後のコメント、ですからね。

 例えばレースを振り返る際に、仕掛けどころのポイント、その判断とか、狭いスペースを捌く時に注意したこととか、「あそこはどうだったの?」みたいな問いかけをしたくなる時があります。
 その時に、もしも、ですが、聞き手側が彼らの日本語力に気を使ったりすると、そういった質問は出てくることはないでしょう(日本人の騎手が相手でもそんな質問がされることはない?その指摘はひとまず脇に置かせてください)。
 どちらが本当のファンサービスになるのか。或いは、どちらも大事だけど両立させるためにはどうするべきか、などの議論をもっと掘り下げてやってもいいように思います。

 日本語が堪能なスポーツ選手というと、大相撲の力士達が突出していますが、彼らの多くは思春期に来日して、毎日を相撲部屋で過ごし、幅広い世代の日本人と接することで日本語を身につけていきます。奥さんが日本人という力士もいますし。
 そういう環境で育まれた海外出身の力士達と、試験で合格した外国人騎手の語学力を同等に並べて云々できるでしょうか。

 それこそ元大関の小錦さんやサッカーのラモス瑠偉さんのように、単に日本語が堪能どころか、日本独特のギャグとかまで理解してしまう凄い人達もいますが、そこまでのスキルをすべての外国人アスリートに求めるのは酷です。

 いや、そんなような議論以前に、騎手の場合、他のアスリートとは決定的に違っているところがありますね。
 そう、ファンのお金が彼らに賭けられているのです。

 だとすれば、レースの結果や自らの騎乗ぶりについて、きちんとした言葉で発信する行為は最低限の義務、といった捉え方がむしろ自然なようにも思えます(話さない、なんてのは論外)。

 勿論、検量室前でのレース毎のインタビューと重賞の勝利騎手インタビューとを同じようには扱えないですし、GⅠともなればまた違った対応が求められるでしょうから、すべてをひと括りに考えるのは無理です。でも、議論する価値はあるはず。
 少なくとも、GⅠだけでもいいですから、他のスポーツでは当たり前に見られるプレス向けの〝記者会見〟が行われてもいいのかな、とは思います。無論これは外国人、日本人に関係なく、ですけれど。

 ごちゃごちゃと身勝手な願望ばかりを書いてきましたが、逆の立場で取材する側の語学力アップや、質問のノウハウ的なスキルアップについても、当然もっと議論されてしかるべき事案。
 このあたりはしっかりと認識して自らにも言い聞かせつつ、情報の発信のあり方について、今後も考えていきたいと思います。

美浦編集局 和田章郎

和田章郎(編集担当)
昭和36年8月2日生 福岡県出身 AB型
1986年入社。編集部勤務ながら現場優先、実践主義。競馬こそ究極のエンターテインメントと捉え、他の文化、スポーツ全般にも造詣を深めずして真に競馬を理解することはできない、をモットーに日々感性を磨くことに腐心。今年は今一度足下を見つめ直して、喫緊の課題をひとつひとつこなしていくべく試行錯誤中。