競馬好きで知られる著名アナウンサーが、「競馬の何が魅力ですか」との問いに、「ひとりになれるところ」と答えておられるのをテレビで見て、妙に納得したことがある。「ひとりになれる」というのは、予想している最中のことと理解した。出馬表を見ながら思いを巡らせ、馬券検討に没頭する行為はなるほど「ひとりきり」の時間だと思う。ただ、ご多分に漏れず、競馬の業界も最近は情報が多いので、私自身は果たしてひとりになれているのだろうかと自問自答する。ふと疑問が湧いたとき、自分で考え抜くのではなく、どこかで得たネタをパズルのように当てはめ、安易に答えとしてはいないだろうか。気をつけねばと自らを戒める次第だ。

 7日(日)の開催日は競馬場ではなく坂路小屋へ(隔週で担当)。これは馬とじかに向き合える、貴重で濃密なインプットの時間であり、予想、馬券検討の大きな比重を占める。調教時間は5時から10時。トータルで500頭以上が15―15以上になるところを乗られた。このときと、本日10日(水)にいいチェックが続き、適性に合った(と思う)条件に出走してくれば買いのリスト。今回は2頭紹介してみたい。

■ハギノパトリオット(13日新潟4R障害OP予定)
 先週は水曜にCWで追い、土曜に坂路2本目に56.5―12.5のハードトレ。にもかかわらず、日曜もヘタッた様子はなく、今日(10日)もいい表情でラクに動けていた。障害での成功は母系サドラーズウェルズ~オペラハウスもバックアップが大きそう。年齢的にもまだまだ奥がある。

■マコトクラダリング(来週の新潟でしょうか)
 祖母に99年秋華賞のブゼンキャンドル、姉にOP2勝のマコトナワラタナ。今季は障害練習を併用し、叩き2戦目で3着に入線。初勝利以来1年ぶりの好走となった。鞍上の高田騎手は障害練習を通して成績が低迷している馬を復活させており、最近の例では本馬と29日の京都で500万を快勝したニシオボヌールがそれ。角馬場でカッとした面を見せていたが、障害練習用の角馬場→CWへと出て、スムーズな走り。使ったばかりでも元気が良く、これまた顔つきも良く、上昇気流に乗ったムードがある。

 2歳馬の入厩も格段に増え、本日はトゥザフロンティア(父ロードカナロア、母トゥザヴィクトリー)がゲートを出していた。こちらはおいおい報告していきます。

栗東編集局 山田理子

山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。