去る1月30日、東京競馬場では海外GⅠを3勝したラヴズオンリーユーの引退式が執り行われた。国内GⅠは3歳時のオークスのみだったが、昨年の活躍ぶりは記憶に新しく、近年の牝馬優勢の時代の中でも間違いなく歴史に名を残す一頭だった。昨年末から年明けにかけては活躍馬の引退が相継ぎ、時代の転換を感じさせる日々が続いたが、その一方で引退式が行われることもなくひっそりと現役を退いた牝馬もいた。結果的に秋の天皇賞が最終戦になったカレンブーケドールだ。

 通算成績は(2.7.3.5)。GⅠ2着が3回もありながら重賞勝ちさえなく大舞台では主役になれなかったが、同世代のトップ牝馬の一頭だったのは間違いないだろう。カレンという冠名から連想されるよりは遥かに力強い走りを見せ、牡馬に混じっても気後れしない存在だったが、デビュー戦が頭差の2着。だが、勝った馬が昨年の安田記念勝ち馬ダノンキングリーだったことがこの馬のその後を暗示していたように少しばかりツキがない面もあった。初勝利にも手間取った分、スイートピーSを勝ってようやくオークスへの出走権を手にしたが、本番では強気の先行からラヴズオンリーユーに捕まりながら見せ場十分の2着。これならGⅠ勝ちも時間の問題と思っていたが、3歳秋の秋華賞ではクロノジェネシスの2着。果敢に挑んだジャパンカップは重馬場の中でもスワーヴリチャードの2着。4歳秋には同厩の名牝アーモンドアイが勝った伝説のジャパンカップで4着。5歳春にも天皇賞3着と長く活躍し続けた。

 天皇賞の後にジャパンカップに参戦の予定が、繋靭帯炎で回避。その後は年明けのAJC杯を目指すプランもあったが、検査の結果、予想以上に症状が重く、そのまま繁殖入りに。担当厩舎の所属馬でもあるだけに今度こそ、今度こそと肩入れし続けたが、幕切れはあっけなかった。ついに3勝目を挙げることなく5歳の暮れに引退が決まった。だが、同期のラヴズオンリーユー、クロノジェネシス、グランアレグリアらと互角に戦った姿は色褪せるものではない。引退が決まった後にデビュー以来、調教に乗り続けた中村助手に話を伺うと「彼女はいつも精一杯走っていたし、コロナ禍の中での競馬を盛り上げることができたのは誇りに思っています。それにこれからはお母さんとしての役割もありますからね」と前向きに語ってくれた。先輩のアパパネやアーモンドアイに比べると実績は物足りないが、いつも間近で取材していた私の記憶から忘れることはないし、いつかその血が大舞台で日の目を見ることを待っていたい。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
今週はカレンブーケドールも出走し、4着に終わったが、素質の片鱗を見せたクイーンCが行われる。重賞実績馬もいるが、注目しているのは1戦1勝のプレサージュリフト。まだ、抽選対象で出走は確定してないが、新馬戦の直線の伸びは桁違いだった。地味な血統だが、いいフットワークで走る。記憶しておいて損はない。