昨年末か、年明けだったか。コロナウイルスのニュースを初めて聞いたタイミングさえ覚えていないくらい、よその国の話だろうとしか感じていなかった。

 それが自分の生活にここまで影響を与えることになろうとは……。到底、想像もできなかったし、緊張感のかけらもなかった。

 仕事にまともに影響のある土日の無観客競馬は勿論、休日に公営ギャンブル場に行くこともできなくなった。

 学校に行けない小中学生にストレスが溜まっていることが問題になり、あれこれ対策が取られ始めているけれど、土日の競馬場や場外に行けなくなったお父さん方や、平日の公営ギャンブル場に行けなくなった方々のストレスも互角といってもいいくらい大きくはないだろうか。

 ギャンブル場に行くとおじさんたちの不思議な集まりができたりしていて、実際の馬券の購入、観戦以外にも、そこでの会話がいいストレス発散になっているような気がする。

 それに加えて、刺激もあるのだから、体だけではなく、心の健康にも大事なのではないだろうか。

 かくいう、自分もギャンブル場に行けなくなったストレスだけではなく、年に一度の大阪場所が無観客で行われることになり行けなくなってしまった。

 飛行機のチケット代こそ戻ってきたが、お金の問題だけではなく、目一杯遊ぶことを想像していただけにますますストレスがたまることに。

 唯一、電車が空いているのはいいことだと思っていたけれど、その電車の中でさえセキをするのに気を使うほど。世の中全体が倦怠感に包まれていて、何だか息苦しくなってきた。

 逆に言えば、こんな時こそいかに普段の平和な毎日が貴重だったかと気づかされる。

 当たり前にどこにでも行けて、競馬も野球も相撲も頑張れば観戦して、楽しむことができる日々。

 今はどれだけお金を積んで、あれこれ努力をしても、競技そのものが行われていないか、会場に入ることができない。

 それほど大人数ではない飲み会なども延期の雰囲気が漂っており、夜の街で発散することもできない。

 どこかの国の首相が戦争だ、などといっていたけれど、自由が奪われつつある現状は平和が失われているといっても過言ではない。本当に恐ろしいと思う。

 さて、JRAでは即PATの会員が増えたらしい。そして、その中のひとりに自分も入っている。

 常に現金でやり取りすることがモットーだったのだけれど、買う手段がないのでは仕方ない。

 電話投票の印象が強い世代としては、ほんの数分で手続きできて、すぐに投票できたことには心底、驚いて、こんなことも知らなかった自分にあきれてしまった。

 これで馬券購入の段取りはできた。あとは馬券を当ててストレスを発散するだけなのだけれど、その当たりがなかなか来ない。

 さらには今までのようにマークカードを塗って、窓口に行くという手順が要らない分だけ、ついつい思いつきで馬券を買って取り返そうとしてしまう。

 思いつきだからそれほど大きな額ではないのだけれど、これが意外とボディブローのように効いてきて……。

 ここ3週はメインレースの前には大抵、入金して、更に被害を広げてしまっている。

 今週末の3日競馬までは無観客競馬継続が決まった。

 そろそろ、即PATとの付き合い方も考えて、うまくならないと大変なことになってしまいそうだ。

 いずれにしても、この騒動がいい勉強になったと言える日が早く来ることを願わずにはいられない。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。