有馬記念が終わって、今週は最後の日に定着しつつあるホープフルS。

 毎年、あっという間に終わったような気もするけれど、今年に関してはそれなりに長く感じたような気もする。

 個人的には豪遊できるほど儲かった訳ではないけれど、潰滅的にやられる日も少なくなった。前向きに馬券検討ができる日が多かったことで、充実感はあったのかもしれない。

 そして何よりも今年はただでさえ変則開催が多かったのに加えて、関東圏では2月と10月に開催が中止順延になったのが長く感じた原因のひとつかもしれない。

 我々の仕事の場合は曜日によってやることが決まってくる。今日が何日なのかははっきり認識していなくても、曜日だけはほとんどのトラックマンが認識しているといっていい。そうなると急に月曜競馬、もしくは火曜競馬となると感覚がずれて凄く時間を費やしたような感覚になってしまう。

 その意味では少し長くて、例年以上にほんの少し疲れた1年だったかもしれない。

 開催だけではなく競馬に関して、いろんな大きなニュースもあった年ではないだろうか。

 海外馬券を売るレースがうんと増え、日本馬が8勝を挙げたのは大きな出来事だといっていいのだろう。ディープインパクトが若くして死んでしまったのもあらゆる意味で非常に残念だった。そして、自分の中で一番印象的で、大きなことだったのは女性騎手の減量制度が成立したことだろうか。

 実際にどうかは別として、動力が人じゃない競馬で女性騎手に優位な減量制度ができたのは大きな改革だったといえるのではないだろうか。この制度がずっと続いていくことでどうなるのかが、今後の自分の馬券戦略にも大きな影響があるだろうはずで実に興味深い。

 藤田菜七子騎手に関して言えば騎乗数以上に、騎乗馬の質が明らかに良くなった。

 現時点で地方を含めて年間48勝、通算100勝越えの大きな力になったのは間違いがなく、女性騎手初のJRA重賞制覇にもつながったといえるだろう。

 今後、騎手を目指す女性には大きな希望になる制度で、競馬学校を受験する人数も増えるかもしれない。そうなれば女子レーサーが約1割を占める競艇と同じになるような時代が来る可能性もある。

 反面、少し気になるのはそれ以外の新人騎手にも、どうやって注目や話題が集まり、チャンスが与えられるのか、ということか。

 現時点では地道に騎乗して勝ち鞍を挙げても、もうひとつ注目を集めていないような気がしてしまう。

 勿論、どんどん勝って、評価が上がればそんな不安は杞憂に終わるのだろうが、現状ではチャンスそのものが以前より少なく、今後、減量のある女性騎手が増えればますます騎乗機会に恵まれない事態になりかねない。

 女性騎手が増えることは大賛成だが、それ以外の若手にもチャンスのある制度ができればもっといいのではないだろうか。

 日本馬が外国で席巻したこと。そして久しぶりに外国馬の来日が1頭もいなかったということも含めて、後々振り返ると節目だったのかもと思わせる1年になるかもしれない。

 そんな1年の残りの1日。美浦では多くの馬が元気一杯に追い切りを消化して、おそらくフルゲートのレースが多くなるはず。

 さらにはヤングジョッキーズシリーズの最終決戦も行われる。

 若手が大きく育ってこそ、将来の競馬の未来も明るくなる。

 競馬界を背負って立つであろう若手騎手が素晴らしい勝負を繰り広げてくれることを期待して、そのレース振りをしっかり確認したいと思う。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。