1月6日にJRA賞が発表された。年度代表馬オルフェーヴルをはじめ、各部門の最優秀馬はご周知の通り。2歳牡馬部門は朝日杯FSのアルフレードとラジオNIKKEI杯2歳Sのアダムスピークが拮抗するかと考えていたが、投票結果はアルフレード279票、アダムスピーク3票、ディープブリランテ2票、オーブルチェフ1票というアルフレードの一人勝ちだった。もちろんこの結果に異論はないが、この差はG1とG3という勝ったレースの格の違いが主な理由としても、アルフレードが3戦3勝なのに対し、アダムスピークとディープブリランテは2戦2勝だったという部分もかすかに影響していたのかもしれない。実際、「啓衆社賞」時代から昨年まで歴代の最優秀2歳牡馬に2戦のみで選ばれたものはいない。そもそも1戦1勝で朝日杯に臨んでも勝てない。そのあたりの厳しさが1986年のドウカンジョー、昨年のジョワドヴィーヴルと2頭の2戦2勝馬が選ばれている牝馬との違いであるのかも知れない。
 そこで最優秀2歳牡馬の平均戦歴を調べてみた。54年から昨年までの59頭(1986年にメリーナイスとゴールドシチーの2頭選出)の平均は4.84戦。だいたい5戦近く走っているのが平均的だ。しかし、直近の5年は3.4戦。昔に比べるとたくさん走って2歳王者の座につく馬は減ってきているということになる。2002年エイシンチャンプの9戦、2003年コスモサンビームの7戦というのは珍しい例だ。そこで、たくさんは走らないが、2戦2勝ではダメという微妙なバランスが最優秀2歳牡馬には要求されることになる。たとえばアダムスピークにしても、ディープブリランテにしても、彼らディープインパクト産駒にとっての2歳戦はクラシックへの助走に近い。かつてのサンデーサイレンス直仔のクラシック候補にもその傾向が強かった。2戦2勝馬にはあくまで目標は先にあり、2歳タイトルは求めてないもんね感が漂うわけだ。そういった意味では、速い流れでバテたり、逆に引っ掛かったり、3~4コーナーでぶつかったり外枠に泣いたりと問題の多い中山1600mも、最優秀2歳牡馬というタイトル獲得の試練としては、逆説的だがよく機能している。
 ちなみにアメリカでは、1952年ネイティヴダンサー、1972年セクレタリアト、1997年フェーヴァリットトリックの3頭が最優秀2歳牡馬と同時に年度代表馬のタイトルを得た。ネイティヴダンサーは4月にデビューして9戦全勝、セクレタリアトは7月デビューの9戦7勝、フェーヴァリットトリックは4月デビューの8戦8勝だった。このようなスピードと力に任せて連戦連勝という成績にともなう爽快感は2歳ならではのもの。近年のJRAの競馬ではそういった存在を見ないが、地方競馬にも視野を広げると、2009年のラブミーチャンは圧勝の連続で5戦全勝。全日本2歳優駿を制してNARグランプリの「2歳最優秀馬」と「年度代表馬」に選出されている。また、タイトルとは無縁だが、地方時代のハイセイコーやオグリキャップは今思うとまさにセクレタリアトやネイティヴダンサー的な2歳チャンピオンだった。

栗東編集局 水野隆弘