2019年4月末をもって今上陛下が退位され、同年5月1日から現皇太子が天皇に即位することが決まって、先週、行われた日本ダービーは平成の元号のもとで行われる最後のダービーになった。1週前に終わったオークスに比べて勝ち時計自体は0秒2速くドゥラメンテのレースレコードに劣ること0秒4差なら決して平凡ではないのだが、アーモンドアイの圧巻の走りと比べると少し物足りなさを感じたのは確か。戦前から混戦と言われていて現実に6着までが0秒2差以内だったことを考えると流れひとつで着順は変わっていた可能性があったと思う。福永騎手の悲願のダービー制覇や金子オーナーの4回目の栄冠などみどころは一杯あったし、勝者が称えられるのは当然だが、終わった後も何かモヤモヤ感が残った結末だったように思う。皐月賞不出走で無敗のダノンプレミアム(私も◎でした)とブラストワンピースが1、2番人気に支持されたのは過去に例がない臨戦で常識を覆すような走りを披露し、新時代を築いてくれるのではないかという多くのファンの気持ちを反映したものではなかったろうか。

リアルタイムでの記憶はないのだが、平成最初のダービーはウィナーズサークルが勝ち、その後も例がない芝未勝利馬による制覇だったという。ただし、皐月賞で2着していたので生粋のダート馬という訳ではなかったようだが、その年も今年と同じように混戦と言われた中での勝利だった。その後、平成の期間中にはディープインパクトを始め3頭の三冠馬が誕生し、新たな歴史を作ったのだが、平成の最初と最後のダービーこそがざっくり言って平成という時代を象徴していたような気がする。ダービー馬がその世代の頂点というのはあくまでダービーの時点でということで何もデビューから引退まで絶対王者である必要はないが、揺るぎない存在であってほしい願望はある。激動の昭和が終わって平成(国の内外、天地とも平和が達成されるという意味)の時代に入り、経済面でのバブルの崩壊が起きた。敗戦からの復興が続いていた中での高揚感が途切れて長期不況の時代に入っての沈滞ムード。確かにこの国自体は大きな戦争に巻き込まれることはなかったが、近隣の国々に比べて成長を感じられないハッキリとはしないが、物足りない雰囲気が続いた。「平成最後のダービーはディープインパクトの傑作が締めくくる」これが私のダノンプレミアムに託した思いだったが、そのダノンに弥生賞では完敗だったワグネリアンが逆転というのが結末。勿論、過去の例からいけば皐月賞上位人気馬と皐月賞好走馬の組み合わせで決まった今年はある意味、順当なのだが、平成という時代そのものが過去の枠組から抜け出せなかったと捉えることもできる。

君主の交代による代始改元が主流になったのは明治以降でそれ以前は大きな社会変化や自然災害などがあった時に区切りをつける意味で改元が行われていたという。最近の例で言えば東日本大震災のようなものがあった時に替えていたようだ。今回は陛下の生前退位という人為的な原因だが、君主の交代によって改元され来年のダービーは新元号のもとで行われることになる。何と言う元号なのか分からないし、ダービー馬がどれかも分からないが、来年は新しい時代を象徴するようなダービー馬が出現して世の中の雰囲気もガラッと変わる(勿論、いい方に)ことを期待してこれから1年、ニューヒーローを探していきたい。

美浦編集局 田村明宏

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 O型
今週からスタートする新馬戦でデビュー予定のナーゲルリングは新種牡馬レッドスパーダ産駒。数少ない産駒の中の一頭だが、仕上がりと動きは目立っている。クラシック向きかどうか何とも言えないが、希少性で注目したい。