2008年超えなるか(坂井直樹)

 こんにちは。栗東の坂井です。

 先日の宝塚記念のあと、「GⅠ感想戦」と題して宝塚記念の振り返り動画を足立TMとやってみました。現場で直接取材して感じたこと、現場にいるからこそ気づける出来事などをその日のうちにお伝えできれば、ということでスタートした企画です。もうご覧になられましたでしょうか。まだの方がおられましたら、この機会に是非ご視聴いただければと思います。

 さて「感想戦」でも触れましたが、上半期は牝馬がJRAの牡牝混合GⅠで4勝を挙げました。この上半期、牝馬の出走があったJRAの牡牝混合GⅠレースと、出走した牝馬の着順は次の通りです。

◎高松宮記念
 1着モズスーパーフレア
 2着グランアレグリア
 11着アウィルアウェイ
 14着ナックビーナス
 15着ノームコア
 16着ラブカンプー
 17着ダイメイプリンセス
 18着アイラブテーラー

◎大阪杯
 1着ラッキーライラック
 2着クロノジェネシス

◎天皇賞(春)
 11着メロディーレーン

◎NHKマイルC
 2着レシステンシア
 3着ギルデッドミラー
 6着シャインガーネット
 9着ボンオムトゥック

◎安田記念
 1着グランアレグリア
 2着アーモンドアイ
 4着ノームコア

◎宝塚記念
 1着クロノジェネシス
 6着ラッキーライラック

 のべ20頭の出走で(4.4.1.11)。出走6レースのうち5つのレースで連対馬を出し、3着内入着率は実に45%。安田記念の3頭出走①②④着という成績などは素晴らしいの一語に尽きます。

 JRAの牡牝混合GⅠにおいて牝馬が4勝したのは、グレード制導入の1984年以降では、年間5勝を挙げた2008年以来12年ぶり2回目。年間3勝を挙げた年は4回ありました。

【5勝】
◎2008年
 安田記念(ウオッカ)
 スプリンターズS(スリープレスナイト)
 天皇賞(秋)(ウオッカ)
 マイルCS(ブルーメンブラット)
 有馬記念(ダイワスカーレット)

【4勝】
◎2020年(続行中)
 高松宮記念(モズスーパーフレア)
 大阪杯(ラッキーライラック)
 安田記念(グランアレグリア)
 宝塚記念(クロノジェネシス)

【3勝】
◎2005年
 NHKマイルC(ラインクラフト)
 宝塚記念(スイープトウショウ)
 天皇賞(秋)(ヘヴンリーロマンス)

◎2007年
 NHKマイルC(ピンクカメオ)
 ダービー(ウオッカ)
 スプリンターズS(アストンマーチャン)

◎2015年
 スプリンターズS(ストレイトガール)
 ジャパンC(ショウナンパンドラ)
 チャンピオンズC(サンビスタ)

◎2019年
 宝塚記念(リスグラシュー)
 天皇賞(秋)(アーモンドアイ)
 有馬記念(リスグラシュー)

 GⅠレースの母数そのものが違うので単純比較はしづらいですが、1984~2004年の21年間で1度もなかった出来事が、以降の15年半で6回。これは牝馬の地力強化の表れと見ていいでしょう。2019年→2020年と2年続けて3勝以上を挙げたのは、ウオッカやダイワスカーレットが出現した2007年→2008年当時と同じですが、前年の勝ち馬が1頭もいないのが異なる点。今年の4勝はそれぞれ違う馬でのもので、特定の強い1頭が勝利数を稼ぐのではなく、牝馬全体の地力が底上げされていることが見てとれます。この数字を上半期だけで叩き出した今年の牝馬の水準は過去のそれと比べて非常に高いのは確かでしょう。

 2008年の年間5勝のうち4勝は下半期に挙げたもの。2015年は3勝すべてが、2019年も3勝のうち2勝が下半期で、過去の例からは「下半期こそ牝馬が強い時期」と言えるかも。牝馬の牡牝混合GⅠ勝利数の新記録樹立なるでしょうか。もちろん、牡馬の巻き返しも待たれるところです。

栗東編集局 坂井直樹

坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
2004年入社。週刊競馬ブックのコンテンツ「上半期GⅠプレイバック」は今年で6年目を迎えました。先週7月6日発売号の栗東の牟田TM・山田理TMによる3歳牝馬戦線を皮切りに、今週7月13日発売号は美浦の吉岡TM・林TMの3歳牡馬戦線、そして来週7月20日発売号では栗東の西村TMと私で古馬戦線を振り返ります。是非こちらもご高覧いただき、春のおさらいと秋競馬へ向けてのお力となれれば幸いです。