今年に入ってから海外GIで日本馬が5勝。
久しぶりに世界との距離が縮まったような気もしたのだけれど、ジャパンカップには初めて外国馬が参加しないことになった。
すでに外国馬との力比べというレースではなくなっていたにしても、1頭も来ないとなると全然違ってしまう。
海外から見た日本競馬の位置取りがどうなっているのかも凄く気になる。
世界的に高額賞金のレースができて、わざわざ遠征して狙うほどの価値はなくなっているのだろうか。生産馬は気にしても、競馬そのものには魅力がなくなっていたりするのだろうか。
海外の馬そのものにも興味はあるけれど、それ以上にいろんな国から訪れる厩舎関係者、それに報道関係者など人の交流もなくなってしまうのは残念でならない。
それもこれもラグビーのワールドカップではその人の交流が非常に大きく、終わってからも1カ月半いい時間を過ごせたなと思えたからかもしれない。
自分自身が海外のラグビーファンと酒を酌み交わしたわけではなく、特に話をしたわけでもなかった。それでも少しの間でも同じ環境にいて、言葉や行動を見ているだけでもひどく楽しくて、いろいろ新鮮な発見があった。
例えば世間でも言われていたように、とにかく酒、特にビールをグイグイ飲むこと。試合開始の3時間前から最寄の駅前に陣取って、立ちながらあれこれ話しながら飲んでいる。
試合中は応援しながら飲み、何よりも試合が終わったあともすぐには帰らずに、コンビニの前などに陣取っていつまでも立ったままで飲んでいる。しかも、大抵、何も食べずに、ひたすら飲むだけ。
中には暴れる連中もいるけれど、ほとんどがたまに大声で歌うぐらいのもので、あれやこれや楽しそうに話しているだけ。
日本ではなかなか見かけない光景で、少なくても野球やラグビーが終わったあとに同じように飲んでいる人たちは見たことがなかった。
ほとんどが赤や緑、たまに白い服を着ていたように、欧州、それもアイルランド、ウェールズ、イングランドの人が多かったような気がする。
彼らの普段からの楽しみ方を垣間見たような気がするのとともに、ほんの少しだけ違う国に来たような気分を味わえた。
こんなに楽しいのなら4年後のフランス大会にも行ってみたい。
いままでまったく考えもしなかったことが、頭の中に大きく浮かぶようになってきた。
これを成就できるかどうかは分からないが、自分の視野が広がったのは海外から来た選手やファンのおかげだろう。
果たして、海外から馬が来なくなった日本競馬はどうだろう。
日本馬が海外で活躍して、海外の大レースに出走すれば馬券を買うこともできる。
しかし、それだけで本当の国際化ができていると言えるのだろうか。
自分たちが得られる情報は限られている。
映像や情報に関していえば処理しきれないほどのものが手に入るようにはなっているのだろうけれど、現地の空気や雰囲気までは分からないのではないだろうか。何よりも交流がなければ思いもよらない刺激や視点も増えないような気がしてしまう。
海外から来ているジョッキーを見ているだけでも新鮮な感動があるのだから、本気でジャパンカップを勝ちに来るような馬が増えたらこれほど楽しいことはなかなかないのではないか。
純粋にそんな勝負をまた見てみたい。
いろいろ問題はあるのだろうけれど、東京オリンピックが行われる来年こそは、競馬も海外との交流がもっと充実すれば。
日本馬の勝利も嬉しいけれど、もっと激しい競馬が目の前で見られることを心の底から期待しています。
美浦編集局 吉田幹太
吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。