前回は何を書いたっけ?と思うのは毎度のことですが、今回は〝夏休みキッズチャレンジ〟についてだったな、としっかり覚えておりました。
が、それだけ余計に、『週刊トレセン通信』担当日の本日が、すっかり秋になっていることに愕然としつつ、改めて時の経つのは早いなあ、と思わされるばかりです。
とはいえ、年内にもう一度担当が回ってきますので、一年の個人的総括はその際にするとして、今回は直近の話題を。
秋の東京開催は3日間競馬でスタートしましたが、全3日間を通して行われた場内イベントが『うまと親しみ、うまと楽しむ3日間!今日はうま日和』でした。
その最終日の8日。競馬博物館の特別展示室で〝馬たちのセカンドライフ〟と題したシンポジウムが開催されました。
16年の秋、初めて関東圏でサンクスホースデイズが開催(馬事公苑)され、昨年秋は、JRAの競馬場として初めてとなる東京競馬場で開催。そういった潮流の中で迎えた今年。日吉が丘公園前のスペースには、今年も関連する団体のテントブースがズラッと並び、たくさんのお客様と直接やりとりする光景が見られました。
シンポジウムも勿論ですが、それぞれの活動をピーアールする絶好の機会として定着しつつあるようです。
例によって、なるべく邪魔をしないように顔を出してきたわけなんですが、関連団体の皆さんとは決してしょっちゅう会えませんし、ついつい長居してしまったり、これも例によってですが、終わってから反省することは少なくありません。
そんなような会話の中で、ちょっと身につまされる、というか、気をつけないと、と思わされるエピソードを耳にしました。
イベント会場でのことではなくて、普段の日の話。活動に興味を持ってくださる皆さんとのやりとりの中で、思いもよらぬ事態が起きることがあるんだそうです。
例えば、ある牧場さんに、アポなしで見学に来たお客さんがいたとしましょう。見学はお断りしています、とホームページなどで発信していても、です。
とはいえ、そのことを知らずに遠くからわざわざ来たお客さんをムゲにもできず、特別措置ではないですけれども、何らかの対応をしたとします。好意のつもりで。
そこまではいいのですが、非礼を詫びつつ感激したお客さん。そのことをSNSで発信します。「飛び込みで対応してくれました」と。嬉しさのあまりのことであって、これ自体に悪意はないと思われるのですが、それを見た他の人が、同じような行動(アポなし訪問)を取った場合にどうなるか。
一日に何組かの方がみえたとして、「あの時は例外で、基本は見学はお断りしてますので」とでも言おうものなら大変。ここでまたSNSに出番がやってきます。
「あの牧場はこういう態度を取った」やら「来訪者を差別する」だの、あげく活動そのものについても「信用できない」などと発信。不思議なことに、こういう悪情報というのは拡散するのが早いのだそうです。
ロクに内情を知りもせず、義憤にかられた正義の味方よろしく、徹底的な糾弾を簡単に発信できてしまうツールの恐ろしさ。
多かれ少なかれ似たようなことを知らず知らずのうちにやってしまいかねない。身につまされる、とはこのことです。
そして更に性質が悪いのは、上記の例のように最初の発信が悪気があったスタートではないのに、その内容について初めから悪意を持って絡んでくる人々がいること。その際、フェイク情報を混ぜたりするのは常套手段なのですが、ひとたびデマが拡散し始めると、ひとつひとつを修正していくのは至難のワザです。
それこそ、先の沖縄県知事選で、新知事陣営が対抗策として行ったという〝いい情報〟の徹底拡散効果について、一部の新聞で報じられていましたが、そこまで組織だった動きというのは、それはそれでなかなかできることではないでしょう。
でも、じゃああきらめていいのか、という話。
例えばここで「微力ながらでも〝いい情報〟の手伝いができるのであれば」という私個人の発信が、人によっては悪意を持って取られるケースもあるかもしれない。その恐ろしさを覚悟しつつ、何をどう発信するべきか、を問い続ける必要性と重要性……。
今更ながら、発信する側、受け取る側のリテラシーの重要さは言うまでもなく、改めて今回怖いなあと思ったのは、何気に発信したことが、デマだのフェイク情報だの火種、発端になりかねない、ということ。
ネットの中で話題になっている意見が、民意だとか大衆の総意だとか、私どもの世界で言えば「読者の声」だとか、声高に言う人が多い時代。しかも、そのネット内で起きている現象を根拠に自説を展開しようとする-まあ言ってみれば卑劣な-行為がまかり通る時代です。さて偽情報、或いは悪意に満ちた情報から身を守るにはどうすればいいのか。
「一切遮断してしまう」
これ、最も有効かもしれない手段だとは思いますが、私どもにはそれこそ最も難しい手段であるかもしれません。
となると、やっぱり受け取る側もバージョンアップが必要なのでしょうか。
少なくとも、そういう感覚を常に持ち続ける、ってことから始めるしかなさそうです。
美浦編集局 和田章郎
昭和36年8月2日生 福岡県出身 AB型
1986年入社。編集部勤務ながら現場優先、実践主義。究極のエンターテインメントである競馬を真に理解するには、他の文化、スポーツ全般にも造詣を深めることが重要、がモットー。