自分が記憶する限り、この10年でもっとも盛り上がっているのではないかと思われる大相撲の秋場所。
稀勢の里が戻ってきただけではなく、大関取りの御嶽海に白鵬、鶴竜の両横綱も絶好調で、弟分の高安も交えて優勝争いが白熱。千秋楽に向けていろんな展開が想像できるのが、こんなに楽しかったのかとしみじみ感じています。
八百長問題に賭博問題。その挙句に大阪場所が中止になったのが2011年。それから10年も経たないうちに全盛期に近い活気を取り戻すとは思いもしなかった。
そもそも国技。日本人になじみ深いことが大きな要因だろうけれども、いろいろな問題にしっかり対応してきたことの集大成とも言えるような気がする。
チケットは取りづらくなったのは辛いけれども、ここまで盛り上がってくれればうれしさの方が断然上回る。
そして自分にとってはただのファンではなく、実生活につながり、支えて行かなければならない競馬はどうだろう。
売り上げはジワジワと戻ってきて、競馬場には若い人の割合もうんと増えてきたような気がする。
大きなレースがない土曜日でも、一般席が大方埋まるくらいの感じがあり、日曜日の午後に入ると開いている席を見つけるのが大変なほど。
このまま上昇線を描いて、自分が会社に入った頃の活気を取り戻すことを願わずにはいられない。
しかし、ここにきて少し気になることも。
ここ数年、顕著になってきたオープン馬の使い分け。これは3歳戦に色濃く出ていて、さまざまな路線が確立されてきたことがあるにしても、早い段階からクラシックに挑戦することをやめてしまっているような馬が多いような気がする。
4月までの皐月賞やダービーを目指す路線の重賞に関して言えば、フルゲートのレースはひとつもなかった。
使い込むことによっての馬の故障を避けるのは当然だとしても、激しい競馬が少なくなり、その結果としてせっかくの素材が磨かれないような状況が生まれているのではないかと思うこともある。
何よりも皐月賞がフルゲート割れ。結果的には厳しい競馬にはなったけれども、この状況が続くのはいいとは思えない。
昨年の香港カップデーは日本馬8頭が遠征したものの3着が最高。そして今年のドバイワールドCデーには14頭もの日本馬が遠征しながら、ヴィブロスの2着が最高だった。
もちろん、海外の一線級の馬を相手に互角に渡り合うだけでも立派だとは思うけれども、すぐに手が届きそうだった凱旋門賞も少しずつ距離が離れてきたような印象すらある。
その原因のひとつに、国内の競馬の内容があるような気がしてならない。
まずは国内の競馬で切磋琢磨しながら素質を磨き、その結果としてチャンピオンホースが海外に遠征する。
少し考え方が古いのかもしれないけれども、これが本来あるべき姿なのではないかと思う。
もっとも、今のルールでは日本馬が1頭でも使っていなければ売ることのできない海外のGI。
1頭でも遠征してくれるのはありがたくて仕方がないのだけれど……。
しかし、その前に誰もが納得するような競馬を目の前で見せて欲しい。そう、今年に関して言えば3歳牡馬戦線がもうひとつだったのに比べて、牝馬のレースは充実していた。
特にオークスは各馬がやるべきことをやったような素晴らしいレース。
となると本来はアーモンドアイあたりがフランスに遠征していれば面白かったような気もしないではないけれど……。
まあ、その楽しみは来年にとっておきましょう。
美浦編集局 吉田幹太
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。