願わくは……(吉田幹太)

 世間はワールドカップで盛り上がっています。が、そんな中でも自分は野球の方が気になってしまう。

 今はCS放送だけではなく、インターネットを駆使すれば実況を見たり聞いたり、さらには細かい配球まで瞬時に入手することができる。野球を楽しむのには十分に満足できるだけの環境にあり、サッカー一色、なんてことは今の時代にはありえないことなのかもしれない。

 さて、そのプロ野球。今シーズン初の観戦は6月初旬、ロッテ広島の交流戦のナイター。千葉県民としてはロッテにも頑張ってもらいたいけれど、小学1年生から40年以上応援している広島にはひと桁違う思い入れがある。

 1990年代、2000年代と辛くて長い20年を過ごしたせいか、この3年は本当に夢見心地のよう。観戦した試合もお互いに良さが出て、最後は広島が逆転しての勝利。今年は交流戦でもやれそうだと好感触を得たのですが……。その後はすっかり勝てなくなって、まさかまさかの大きな負け越し。

 そして何より広島だけではなく、優勝したヤクルト以外のセ・リーグ5球団が負け越す事態になり、またしてもパ・リーグの勝利数が上回ってしまった。これで9年連続。

 リーグ優勝に関していえばセ・リーグのチームが負けるのは悪くない。しかし、セ・リーグの方が弱いというのはいまや定説になり、連覇中の広島でさえも常勝ソフトバンクとは評価のされ方が違ってしまったように感じてしまう。

 そもそも日本シリーズでもパ・リーグが5連覇中。

 こうなると広島だけではなく、セ・リーグのチーム全体を応援したくなる。

 実際に観戦していてもパ・リーグのチームは容易に負けない。そして、少し弱みを見せるとそこにつけこんで圧倒してくる、ような気がしてしまう。ここまで来ると実際にパ・リーグの方が強いという事実は認めざるをえないのかもしれない。

 なぜ、ここまでセ・リーグが弱くなってしまったんだろうか?素人なりに考えるところでは、交流戦が始まる直前の球界再編問題が大きく影響したとは言えないだろうか。

 球界再編問題はセ・リーグにはほぼ影響はなかったが、パ・リーグには新規の球団を含めて、半分の3チームが新オーナーになり、球団名も変わってしまった。

 結果的にはこれが新しい血を入れることになり、リーグの活性化に繋がったのではないだろうか。

 一方のセ・リーグは球界の盟主ジャイアンツにタイガースと超人気老舗球団がどーんと構えている。

 伝統があるのは勿論、いいことだが、昔からのファンがたくさんいて、黙っていてもお客さんが入り、当時はテレビ中継もジャイアンツ戦以外はほとんどなかった。

 いい選手も金銭とネームバリューである程度は集めることができる。あえてチーム内に新しいものを取り入れる危険を犯すよりは、今までどおりやっていればそれが一番いいという風潮になってしまったのかもしれない。その恩恵を受けてきたリーグそのものが、少しずつ緊張感をなくし、活気を失ったのではないだろうか。

 考えてみれば広島が強くなったのも新しい球場を作って、球団改革に手をつけてからのような気がする。

 もっともこの状況は野球だけではなくて、あらゆる組織に対してもいえるのかもしれない。

 守らなければならない伝統を履き違えてしまうと、新しいことに本気で取り組む姿勢がずれてくるのかもしれない。

 そんなことをいよいよワールドカップが佳境に入ってきたこのタイミングで考えてしまいました。

 通常のリーグ戦に戻ってから広島は順調に勝ちを増やしつつある。それでもファンの自分からすると安心できないような内容ばかりで、これではパ・リーグには勝てない。などと思ってしまう。

 仮に広島でなくてもいい。今年こそ是非、日本シリーズでパ・リーグのチームを負かしてもらいたい。そこに向けて、もっといい試合で切磋琢磨しながらチームの成長を見届けたい。

 そして、本当に強い広島の日本一を球場で見れればこの上なく幸せなんだけれど……。

美浦編集局 吉田幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。