重賞勝ちのタイミングと障害戦の成績(坂井直樹)

 こんにちは、障害戦界隈を熱めに眺める生活を送っております栗東の坂井です。

 先日、障害の角馬場でゴライコウの姿を見かけました。22年のJBC2歳優駿の勝ち馬。障害入りを視野に、小牧加矢太騎手をパートナーに障害練習を始めています。

 最近は平地の上位クラスで活躍していた馬が障害入りすることがそれほど珍しくはなくなり、平地の重賞勝ち馬の入障も少なくはありません。とはいえ、ゴライコウはまだ3歳。小牧加騎手に「早い段階で重賞を勝って、3歳のうちに入障した馬っているんですかね?」と質問されましたが、すぐには思い出せませんでした。調べましょう。

 1986年以降にデビューした馬のうち、JRAの平地で重賞を勝ったあと、今でいう3歳のうちに障害戦でデビューした馬は…私の調査では1頭しかヒットしませんでした。88年の小倉3歳S(現2歳S)の勝ち馬ダンデイアポロ。

ダンデイアポロ
▲ダンデイアポロ(88年小倉3歳S、鞍上は安田隆行騎手)

 東海公営・名古屋でのデビューは旧3歳の6月。2戦2勝で中央へ移籍し、中央初戦のフェニックス賞を6馬身差で圧勝、続く小倉3歳Sも勝って重賞ウィナーとなりました。その後は骨折もあって振るわず、旧4歳12月に障害デビュー。平地を2戦挟んで再び障害に戻ると旧5歳8月に障害戦初勝利。400万条件を勝ってオープン入りするとパンフレットやメジログッテンらと差のない競馬を続け、小倉障害Sでオープン勝ちも果たした活躍馬です。

 2歳(旧3歳)で重賞を勝った馬の障害デビューというと、最近だと、18年の札幌2歳S勝ち馬で、昨年の中山大障害を制したニシノデイジーや、14年のデイリー杯2歳S勝ち馬で、障害重賞を3勝したタガノエスプレッソ、先週の京都ジャンプSに出走したアサクサゲンキも17年の小倉2歳S勝ち馬です。3歳のうちに障害デビューするかどうかはさておき、初めて重賞を勝った時期によって障害戦での成績に差が出たりはしないだろうか?

 再び調査です。障害デビューしたJRAの平地重賞勝ち馬を、初めて重賞を勝った時の年齢別に成績を見てみましょう。1986年以降にデビューした馬のうち、障害戦デビューを果たしたJRAの平地重賞勝ち馬は116頭いました。(年齢は新表記)

【平地重賞初勝利が2歳】
デビュー頭数=18頭
うち勝ち上がり=13頭(72.2%)
オープン勝ち=5頭
重賞勝ち=4頭
JGⅠ勝ち=2頭(ゴッドスピード、ニシノデイジー)

【平地重賞初勝利が3歳】
デビュー頭数=42頭
うち勝ち上がり=20頭(47.6%)
オープン勝ち=6頭
重賞勝ち=2頭
JGⅠ勝ち=なし

【平地重賞初勝利が4歳】
デビュー頭数=14頭
うち勝ち上がり=6頭(42.9%)
オープン勝ち=2頭
重賞勝ち=1頭
JGⅠ勝ち=なし

【平地重賞初勝利が5歳】
デビュー頭数=21頭
うち勝ち上がり=7頭(33.3%)
オープン勝ち=3頭
重賞勝ち=なし
JGⅠ勝ち=なし

【平地重賞初勝利が6歳】
デビュー頭数=9頭
うち勝ち上がり=2頭(22.2%)
オープン勝ち=1頭
重賞勝ち=1頭
JGⅠ勝ち=なし

【平地重賞初勝利が7歳以上】
デビュー頭数=9頭
うち勝ち上がり=7頭(77.8%)
オープン勝ち=2頭
重賞勝ち=1頭
JGⅠ勝ち=なし

 7歳以上馬で勝ち上がり率が突然跳ね上がりますが、おおむね若い時に重賞を勝っている馬ほど勝ち上がり率は高く、成績自体も優秀という印象。2歳重賞勝ち馬から中山大障害勝ち馬が2頭も出ているあたりは強調点です。「若いうちに重賞を勝っている馬は障害でも出世する可能性が高い」。

 出会う機会が少ないパターンだからこそ、チャンスはしっかりものにしたいもの。ゴライコウ、覚えておきましょう。

 

栗東編集局 坂井直樹

坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
 ゴライコウは地方交流重賞の勝ち馬なので今回のテーマで調査した対象からは外れてしまうのですが、目安にはなるでしょう。早熟という表現もされるでしょうが、他の馬の成長に追い抜かれるような形で成績が落ち込んでいるだけで、2歳の時点で重賞を勝てるだけの馬ならそもそも能力は高いはず。小牧加騎手も「そういう馬だと伸びしろは大きいと思うんです」と見ているそうです。ゴライコウは明日(11月16日)にも障害試験を受験する予定。まだまだ若い3歳馬ですから「いきなり」とはいかないでしょうから、焦らず、長い目で注目してみてください。