深酒して記憶がないのに、何故か家にたどり着き、パジャマに着替え、コンタクトまでとってベッドで眠っていたということはありませんか? これ「手続き記憶」というらしく、経験の繰り返しによって体が覚えているからで、自転車、楽器、スポーツ、パソコンのブラインドタッチなどと同じなよう。趣味のバドミントンで、スムーズなフットワークができないとずっと思い悩んできましたが、週1プレイヤーでは反復練習が絶対的に足らず、それは当たり前ということに気づきました。まったくの初心者から一歩踏み出し、練習では脚運びができるようになったとしましょう。でも、試合中の咄嗟のときにはまだまだ。シャトルが来る方向、高さに合わせてとなると半身で下がれず、ドタドタと真後ろに下がってしまって、アオられて終わりです。

 逆に小、中学生時代にバスケットボールに日夜励んでいたことで、止まって打てない、シャトルを打つ相手の正面に立ってしまう、ラケットの長さの分を勘定に入れずシャトルに近づいてしまうなど「手続き記憶」の弊害があり、バド仲間には、学生時代にソフトボール部でファーストを守っていたため左足がどうしても後ろに残ってしまって困っているという笑い話も。一方で、学生時代にバド経験があるプレイヤーに「今の腕、こう動いてましたよね?」などと聞いても、彼らはすでに体得していて無意識であるから、「え?分かんない」と返答することがしばしばあり、それにも合点がいきます。

 意識して反復することが、無意識なスキルとなる。これを大きな事と考えず、何となく暮らしてきたことを最近実はちょっと後悔しています。行動のすべてをもっと丁寧に重ねてくれば良かったと……。多方面で雑にやってきたということは、長年、雑な反復をしてきたわけで、子供の頃は器用だったのに、今は手先が不器用だと感じるのも、無関係ではないような気がします。もっと綺麗な字を書けたかな、料理もうまくできたかな、もっとミスなく仕事できたかななどと、思い当たることは多いですね。

 ところで、これまで一番、何に情熱を注いで繰り返し行ってきたかと自分に問えば「競馬」ですが、果たしてどんな無意識なスキルがついているのでしょうか。年末年始のゆっくりした時間に一度考えてみたいところです。あ、確かなことはひとつ。英数字の羅列が大の苦手な私でも、PATの加入者番号と暗証番号だけはいつもスラスラ入れられます。

栗東編集局 山田理子

山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。