10月24日のツイート(@rikobook)で西谷J語録として「障害に向くのは芝のマイルで切れる馬か、1800ダートで走っている馬」と紹介したところ、私自身最多のリツイート90、いいね404があった。障害ファンは同業者にも多く、後日、京都競馬場の馬券売り場で鈴木ショータ(競馬伝道師)@SS_Meijiに「あのツイートめちゃめちゃ興味深いですね、どんな観点からですか?」と食い下がられ、反響が大きいからもっと詳しく取材してくるわと約束。西谷Jにふたつ返事でOKをいただき、再取材のうえ、このコラムにまとめることにした。
 西谷J:芝マイルの差し馬は掛かるけど、ためれば切れるから、障害でも切れるよね。また、そういう馬は障害で、道中の行きっぷりがいい馬が多い。
 山田:中距離馬より行きっぷりがいいし、短距離馬よりためやすい?
 西谷J:(手綱を)持てる時間が多いからいい。短距離の場合はうまいこと成功すれば走るけど、ハナ行く馬が多くなる。それから、俺ら(騎手の)のなかでは長距離の馬は保たないっていう認識がある。
 山田:そうなんですか?? 逆に?
 西谷J:長距離でハナに行っていた馬は保つんだけど、後ろから行っていた馬は走らない。ついて回れへんもん、障害では全然。
 山田:障害のペースは、そういう馬にとってはむしろ速いんですね。
 西谷J:案外、未勝利ぐらいでは勝てても、オープンでは全然魅力はなかったりする。ダート1800mで走っている場合は、前に行ける馬は強いよね、障害に行ったら。後ろからより、前に行ける馬がいい。2、3番手とかね。
 山田:スタミナがある?
 西谷J:そう。スタミナがある。平均ペースがうまいんだよね。障害レースって13秒の平均ペースだから、そこを対処してくる。で、ダートの1800mとか中距離で走っている馬は12秒ぐらいのラップを平均的に走れるから、それが(障害の)13秒何ぼになると、距離が延びても楽みたいで。心肺的に。だから凄くそこには適性を感じる。だから障害に転向する時に「(平地で)どれぐらいの距離を走ってました?」って聞く(笑)。1200mとなるとやり方も変えるし。馬の造り方が変わるんやけど。1600mとか、芝の切れる馬とか、まあ1400mとかまでやろうけど、丁寧に造っていかないと暴走するようになることがあるから。
 山田:1200mに使っていた馬だと我慢させる感じに?
 西谷J:うん、ゆっくり飛ばす。リズムを。バンバンバンバンあんまり連続でやったりはしない。
 山田:ダートの1800mも、芝の長い距離も、長い距離になると平地で後ろから行っている馬より、前に行っている馬の方がいいのですか?
 西谷J:うん。いまの障害って、1個目までが速くないといいポジションを取れないから、やっぱりゲートを出ていく馬じゃないと……。ステイヤーはゲートから出さなくていいわけだから、平場は。
 山田:見る側が思う以上に、障害は最初の1個目までがシビアなんですね。1個目までが駄目だと後手後手になって……。
 西谷J:そうそうそう。特殊な子もいるけどね。マサライト(11年4月~15年5月、14年中山新春ジャンプSなど4勝、15年京都ハイジャンプ2着)とかはステイヤーズS(09年5着)に出走していたくらい。でも、あの馬は前に行ってたからね。ゲート速くて前に行けたから良かったのかもしれない。あとはピエナクルーズ(18年8月~19年5月、19年京都ハイジャンプ2着)とか。平場でダート2400mとか使ってて、絶対に出遅れるから後ろからの競馬だったんだけど、障害では出遅れたことなかったからね。よー分からへん(笑)。障害を飛ぶのがうまかったから、ゲートに入って、障害が目の前に見えてるとスパーンって行ってたから。平場の乗り役がびっくりしてたもん、絶対出遅れるのになあって。
 山田:凄く個性が出ている逸話ですね。 

…………と、こんな感じ。芝のマイルの切れる馬、ダート中距離の先行馬の障害転向に注目してみましょう。

 西谷騎手は11月10日福島5Rで落馬し、第1、2、3の腰椎左横突起骨折との診断ですが、「大丈夫です。調教は12月から乗ります。競馬は最終週かその前の中京かやね」とのことです。

栗東編集局 山田理子

山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。