もうひと花(山田理子)

今週は豪華4重賞。皐月賞はもちろん、中山グランドJにも大注目だ。
昨年暮れの中山大障害での、オジュウチョウサンとアップトゥデイトの熱いバトルに胸打たれた人は多いはず。オジュウを負かすにはスタミナ勝負しかないと大逃げの策に出たレジェンド林(障害最多騎数更新中)とアップトゥデイト。引き離された2番手でリズムを崩さず徐々に間合いを詰め、4角で射程に入れてゴール前でこれを捉えた石神Jとオジュウチョウサン。長いタフなレースは2頭とふたりの世界で流れ、「前王者か、現王者か」のラジオNIKKEIの山本直アナウンサーの名実況とともにクライマックスを迎えて、現王者の8連勝で幕を閉じた。

オジュウチョウサンとアップトゥデイトの長い戦いは15年暮れの中山大障害に始まり、昨年の中山大障害までに前者4勝、後者1勝。15年の中山グランドJ、中山大障害を制して同年のJRA最優秀障害馬にも選ばれたアップトゥデイトは、オジュウチョウサンのGⅠ初舞台でこれを負かしたものの、以降1年半ものあいだ勝てず、ライバルは1999年の障害グレード制導入以降では初めのGⅠ4勝、障害重賞8連勝の大記録を打ち立て、史上最強と呼ばれる存在に。悠々と打ち負かされる競馬が続き、「何とか勝って自信を取り戻させたい」ともらす鞍上。悶々とした日々は続いた。
競走馬という生き物に勝って自信を取り戻すという観念があるのかどうか定かでないが、アップトゥデイトに関しては、昨年9月の阪神ジャンプSでの大勝が再浮上の契機になったように思う。次走があの中山大障害。そして、今年の始動レースの阪神スプリングJを8馬身差で楽勝。その後も至極順調な様子で、8歳の芦毛の馬体は白さを増すが、年齢を感じさせる類のものではなく、もりもりと隆起し、パンと張って一流アスリートの風格を取り戻している。「絶好調」とは林J。大げさでも控え目でもないこの人のコメントからはいつも馬の状態がストレートに伝わってくる。自身の騎手としての引き際を障害通算2000回騎乗に決めており、現在マジックは「7」。人も馬も熟達したベテランのコンビにもうひと花ないか。

栗東編集局 山田理子

山田理子(調教・編集担当)
昭和46年6月22日生 愛知県出身 B型
水、木曜のトレセンではCWをお手伝いしながら障害コース、Bコースを採時。日曜は隔週で坂路小屋へ。調教時間が何より楽しく、予想で最重要視するのは数字よりも生身の馬の比較。人気薄の狙い馬、危ない人気馬を常に探している。09年より関西障害本紙を担当。週刊誌では15年より新たに「注目新馬紹介」のまとめ役を引き継ぎ、新馬の観察に一層力が入っている。