2012年有馬記念と中山大障害(山田理子)

 2012年のJRAの開催日程が終了した。炎上ともとれる不評判だった有馬記念翌日の開催は、実際行われると覚悟していた以上に体内リズムが悪く、私自身、年中行事や季節の移り変わりなどを競馬の暦に則して体感していたことを改めて認識した。金杯で気持ち新たに始まり、有馬記念で勝っても負けても大団円というのが馬券ファンの一年であり、中山大障害の後に障害未勝利戦が組まれているようでは情緒も何もない。祝日を利用した3日間開催に力を入れるのは結構。実際、売り上げ増につながっている。しかし、ラストウィークはスペシャルであって欲しい。2013年は決まったことだから仕方がないが、JRAの方にはぜひともご一考願いたい。

 有馬記念はゴールドシップの強さだけが際立った。ドリームジャーニー(09年)、オルフェーヴル(11年)兄弟に続いてのステイゴールド×メジロマックイーン配合の勝利となり、近4年のうち3年で、同配合から優勝馬が輩出。ステイゴールド産駒は有馬記念でゴールドシップ、オーシャンブルーがワンツーを決めたばかりか、同じ中山芝2500mの同日8Rグッドラックハンデキャップでもマイネルメダリストが勝利。遡れば、12月2日のサトノシュレン(古1000万)、9月22日のフェデラルホール(九十九里特別・古1000万)、9月16日のマイネルリヒト(古500万)が中山芝2500mで勝っており、出走機会目下5連勝中と凄まじい勝率となっている。このあたりはレースが終わってからあれこれいう私と違い、サラブレッド血統センターの桑田至啓氏は週刊競馬ブックG1特集「血統アカデミー」のコーナーで、“熱いぜ!ステイゴールド絶好調”と題して予言者のように2012年の有馬記念を言い当てておられ、会心の◎○的中! ゴールドシップ、ステイゴールドのキーホースに桑田氏の予言コラムが関連づけられ、今年最後のグランプリレースは私の記憶にするりと収まった。参考までに他の産駒が中山芝2500mでどうかというと、総合リーディング首位のディープインパクトは今年2頭が出走してトーセンラーが日経賞で4番人気12着、リベルタスが九十九里特別で3番人気6着と振るわず、ほとんど出走しないが、出走してくれば嫌って妙味ありの結論。07年以降の6年間では、勝ち鞍順にステイゴールド9勝、アグネスタキオン5勝、3勝でシンボリクリスエス、アドマイヤベガ、ゼンノロブロイとなっている。

 中山大障害は4歳馬で、大障害はもちろん中山コース自体が未経験だったマーベラスカイザーが優勝した。入社以来障害コースの調教を担当しているが、中山大障害と障害試験のイメージが直結したのは実は初めてで、感慨深いものがあった。マーベラスカイザーは2歳時にダノンバラード(現オープン)らを負かして2歳オープン勝ちしたポテンシャルの高い馬だが、ソエを気にしたり、折り合いやゲートに不安があって低迷が続き、3歳夏から早々に障害練習を開始。まだサラブレッドには厳しい暑さの残る9月に3週続けて試験を受けて97.6─63.5―48.9―35.6―12.3(一杯)、95.9―62.0―47.8―35.3―12.0(一杯)、95.0―61.8―47.4―35.1―12.1(強目余力)の超抜タイムを記録。全体の時計を詰めながらラストの脚勢には逆に余裕が出てくるから驚きで、飛越に関しては踏み切りが近かったりして安心できない面はあったが、当時から異色の存在だった。デビュー戦は2011年の阪神のナンバー2のタイムで後続を9馬身ち切っての圧勝。レース後に熊沢騎手は「3週連続で試験を受けてそれから中1週で競馬に使って、これだけ走るんだから大した馬だよ」とコメントしていたが、暮れの大一番前には当時を振り返り、「レースをしていくうちに大障害へ向かおうという気持ちが出てくる馬は何頭かいるけど、(マーベラスカイザーのように)最初から大障害を意識できた馬はそうそういない」と語っておられた。熊沢騎手の落馬負傷加療中に手綱を取った小坂騎手、北沢騎手も含め「底知れないスタミナがある」が共通意見。やはりまだゲートは遅いが、距離が4000m超えならさして影響はなく、初めて体験する大竹柵も赤レンガもバンケットもうまくこなして頂点に立ち、熊沢騎手は平地&障害の両G1達成の偉業を遂げた。マーベラスサンデー産駒はキングジョイが6、7歳時(08年、09年)にこのレースを連覇していて、昨年はドングラシアスが7歳で3着だからこれから息の長い活躍が期待できる。息の長いといえば、オペラハウス産駒の5歳馬マジェスティバイオもしかり。人気で敗れはしたが、マジェスティバイオもバアゼルリバーも飛越はノーミスで、大障害を飛ぶ姿は勝ち馬を凌ぐぐらいの貫禄があった。東のマジェスティバイオ、西のマーベラスカイザー、バアゼルリバーの熱いバトルは続きそうだ。

栗東編集局 山田理子