11年ぶりに6月開催になった日本ダービーをクロワデュノールが勝ってから10日後の11日に大井競馬場で行われた東京ダービーはJRA所属のナチュラルライズがレースレコードタイムで勝った。昨年から中央所属馬に解放されたこのレースはこれで2年連続、中央馬が勝つことになった。以前からの交流競走の傾向から考えてもこれは想定内だったが、中央所属のダート馬にとっては選択肢が増えたことで歓迎すべきだが、地元の南関東の所属馬にとっては悩ましい結果かもしれない。ホープフルSを勝った時点で世代の中心と見られていたクロワデュノールについては多くのメディアが取り上げているのであえてここで触れる必要はないと思われるので3歳ダート路線のチャンピオンになったナチュラルライズのここまでキャリアを振り返ってみたい。

 デビューは7月の札幌ダート1700メートル。札幌の2歳戦でダート1700メートルのレースが行われるようになってから新馬戦を良馬場で1分46秒以下で勝ったのは同馬を含めて過去に2頭だけ。しかも2着に6馬身差をつけての完勝だったから当時から注目度は高かったが、その後は当初予定していたプラタナス賞をフレグモーネで回避。1勝馬ながらオープンのカトレアSに挑むことになった。後に東京ダービーで再対戦にすることになるクレーキングに0秒1差で勝ったが、内容は圧巻だった。3~4角から外に逃げ気味で直線も終始、右に行きたがりまともに追えない状態で勝ったのだ。「自己条件を使えなかったのは残念でしたが、結果的にここでオープンを勝っていたのがあとになってローテーションを組むうえで楽になりました」と伊藤圭師は振り返る。次走は2歳チャンピオンを決める全日本2歳優駿に駒を進めたが、同じ左回りでも小回りの川崎で外に逃げてしまって人気を裏切ってしまった。ここで陣営はひとつの決断を下すことになった。ケンタッキーダービーの出走ポイントが与えられるカトレアSを勝っているが、「今の時点では左回りはこの馬には合っていない。だからケンタッキーダービーは勿論、サウジやドバイのレースも目標にはしない」と師は判断したのだ。その後は右回りの日本の3歳ダート三冠路線に目標を切り替えて京浜盃を勝って、羽田盃出走の権利を獲ると、羽田盃、東京ダービーと3連勝で期待に応える走りを見せた。

 レコードで勝った東京ダービーの走りを見てもまだ課題があるのは確かで「左回りに関してはもう少し力をつけてからでいいと思っていますが、秋の目標は大井で行われるジャパンダートクラシックです。夏はファンタストクラブに放牧に出て休養させる予定です」と師。今では世界レベルで活躍しているフォーエバーヤングが昨年勝ったレースに向けて、どこまでパワーアップするか楽しみしかない。

美浦編集局 田村明宏

 田村 明宏(厩舎取材担当)昭和46年6月28日生、北海道出身、О型

 昨年までに比べて微妙な日程の変化があって1週早いタイミングで夏の福島が開幕。例年なら梅雨の真っただ中の時季だが、今年は早くも猛暑が到来。先が思いやられるが、今週は10年ぶりにルメール騎手が福島競馬に参戦する。注目馬は日曜5Rで騎乗予定のロスパレドネス。皐月賞馬ジオグリフの全弟で他にも活躍馬がいる血統。来年のクラシックを見据えたレースをしてくれそう。