ダービー当日に国立競技場で行われたラグビーリーグワンの決勝。入場者数は2年続けて5万人超え、シーズンを通しての入場者数も過去最高を記録。試合内容も接戦が多くなり、非常に盛り上がった半年だったような気がした。

 もちろん、プロリーグとしては野球やJリーグとはまだうんと差があって、課題も多いのは確か。それでも各チームが海外選手を積極的に迎え入れて、レベルは確実にアップ。場内もあの手この手で盛り上げて、お客さんの人数以上に盛り上がりを感じることは多かったような気がする。全体としていい方向に向かっているのは間違いなく、来シーズンも非常に楽しみになったのではないか。

 一方、自分の好きな競技のもうひとつ大相撲。ひと頃の氷河期を完全に乗り越えて、かつての若貴ブーム以上とも思われる熱気に包まれている。

 チケットを手にするのは至難の業。場内の売店も大抵は行列ができていて、買い物するのにもひと苦労。

 それもこれも一時期の八百長疑惑、賭博疑惑などにしっかり対処して、場内の雰囲気だけではなく、相撲内容も非常に厳しく、面白くなったことが大きな原因ではないだろうか。

 そして魅力的な関取も誕生。外国人観光者だけではなく、女性ファンがびっくりするほど増えたのはいろいろな努力の結果だったような気がする。

 ところが、少しいい景気になると組織内の問題もまた見過ごされるようになったりするのが世間の常でもあるのか。

 ここに来ての相撲協会の動き方を見ているとお客さんや今後の角界のことを考えてというよりは、自分たちの都合で物事を進めているような気がしてならない。

 豊昇龍を横綱に昇進させたのはいささか早かったのではないか?横綱審議委員会で決めることではあるけれど、そこに協会側が意向も加味はされていたはず。

 どうしても海外公演に向けて、横綱不在では都合が悪いといった思惑が透けて見えてしまう。

 そして今、話題になっている宮城野部屋の問題。

 日本の国技を守らなければならないという気持ちは分からないではないが、それにしてもあまりにもちゃんとした決まりがなく、ただ、宮城野親方に対しての不信感が全面に出ただけの処置ではなかったろうか。

 そもそも相撲協会は元横綱に対して冷たすぎる。

 横綱の現役の時は特別な思いを協会側も伝えているにもかかわらず、引退した後は他の親方と完全に同等の扱い。

 若貴などは間違いなく一大ブームを巻き起こして、協会側も相当な恩恵を受けた筈だ。

 それが幕内一杯一杯の親方と同じ扱いというのはいかがなものかと思ってしまう。

 その結果、本来、継承しなくてはならない高い技術があるはずの指導者がどんどん失われている。今だに根性論で解説する親方も少なくない。

 ネット系の相撲中継では元若乃花の花田氏が週末だけ解説している。これが非常に面白くて、今になって初めて知ることもたくさんある。より楽しく相撲を楽しめるようになった。

 月曜日の元白鵬、前宮城野親方の会見を聞いていると新しい相撲の在り方を模索しているようだ。

 困難は多いけれど、ちゃんとした指導者が、学生相撲の人や外国の方を指導するとなるとうんとレベルが向上する可能性がある。

 先場所、圧倒的な強さで横綱に昇進した大の里は入門から僅か13場所。つまりは2年ちょっとで頂点を極めたことになる。

 ひょっとすると大相撲のレベル自体が少し下がり始めているという見方ができないこともなく、となれば今は気にもかけられない相撲の新組織がいずれレベルで大相撲を上回ることも考えられなくはない。

 もちろん、そういう状況が望ましいとは思っていない。

 神事としての相撲の一面。そして興行として長く歴史を作ってきた大相撲が長く続いて、高いレベルの勝負を見せてくれることが何よりも望ましい。

 だからこそ、好調な今の段階でももっとちゃんとしたルールつくりをして、組織内でのなあなあは避けなければならないのではないか。

 ひと昔前は国技館も閑散としていて、平日なら当日にマスのチケットがどこでも手に入った。

 それはそれでファンとしてはありがたかったけれど、今の熱狂にはほど遠いい状況であったことは間違いない。

 これは競馬にも言えるかもしれない。

 今のところ、いろいろな改革が進んで、地方競馬との結束でダートの新路線も確立されつつある。

 海外グレード競走で芝よりもダートで日本生産馬が活躍しているのは分かりやすい例かもしれない。

 その反面、芝に関していえばイクイノックスが引退した後はスーパースターが不在。

 もちろん、このあたりは波があるのだろうけれど、常に問題点をあぶり出すのは大事な作業になる。

 とにもかくにも、自分が大好きな競技が盛り上がって、いい勝負を見せてくれるのが一番。

 まずは大井の東京ダービー。昨年以上の強さをナチュラルライズが見せてくれるのか。もしくは、他の馬が驚きの走りを見せてくれるのか。

 そして秋のジャパンダートクラシックでルクソールカフェと対戦などが実現すれば……

 ダート3冠レースも非常に夢の広がるものとして定着していきそうだ。

美浦編集局 吉田 幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。