こんにちは。栗東の坂井です。

 年末や2月末など、競馬の世界にはいろんな区切りがありますが、ダービーも間違いなくそのひとつ。そのダービーが5月31日に終わりました。さあ、新しい1年の始まりです。今週から開催が改まり、東西で新馬戦がスタートします。初夏の日差しと開幕週の芝生の上にあどけなさの残る2歳馬が集います。何から何までぴっかぴかの季節です。

 「ダービーからダービーへ」を標榜してダービーの翌週に新馬戦が組まれたのは2012年から。今年で9年目を迎えます。そこでこれまでの8年、新馬戦第1週のあれこれを振り返ってみることにしました。

 2012年6月2日の新馬戦は東西で1鞍ずつ。翌3日にも2鞍が組まれ、4鞍で計40頭がデビューしました。以降2017年まで、毎年1週目は新馬戦は土日各2鞍ずつの計4鞍で推移します。2018年からは東京は土曜1鞍日曜2鞍の計3鞍、阪神は従前どおりの土日1鞍ずつの計2鞍で、土日で計5鞍組まれました。

 設定距離は、2012年と2013年は東京が1400mと1600m、阪神が1200mと1600m。2014年からは東京も阪神も1400mと1600mが1鞍ずつ組まれました。土日で5鞍組まれるようになった2018年からは、1400m2鞍(東西1鞍ずつ)と1600m3鞍(東京2、阪神1)。これは2020年も同様です。

 「ダービーからダービーへ」以前はどうだったのでしょう。2011年から2000年までを振り返ると、1週目にマイルの新馬戦が組まれはじめたのは2007年から。同時開催の函館や福島で1600mを組めないとはいえ、それ以前も阪神や京都で行われていた関西でマイル戦が組まれず、2006年以前の新馬戦39鞍のうち34鞍が1000mか1200mですから、やはり「新馬戦といえば短距離」でした。

 それがここ8年、1週目の新馬戦34鞍のうち18鞍が1600m、14鞍が1400mで、1200mは2鞍だけ。ロジユニヴァース以降、ダービー馬のデビュー戦がすべて1600m以上だったことを考えても、この番組構成にはやはり「ダービーへ」の強い意識が感じられます。広いコースのマイル戦ですから、大事なのは我慢することや力の入れどころ。「幼稚園児のかけっこ」にもたとえられた「ゲートを出てスピードで押し切る新馬戦」は、こと1週目の新馬戦に限れば姿を消したようにすら思えます。高い完成度が求められる新馬戦が、この2歳6月の1週目にはあるようです。

 2012年以降、6月1週目に行われた新馬戦は34鞍。このなかから13頭(のべ27頭)が3歳末までに重賞を制しました。GⅠ馬は、13年阪神JFのレッドリヴェールをはじめイスラボニータ(14年皐月賞)、ケイアイノーテック(18年NHKマイルC)、ステルヴィオ(18年マイルCS)、ダノンファンタジー(18年阪神JF)、グランアレグリア(19年桜花賞)、サリオス(19年朝日杯FS)と、7頭誕生しました。完成度が求められる新馬戦らしく、相応の水準にあるメンバーが集うのでしょう。

 しかしながら、14年イスラボニータ、そして先日のサリオスと2頭のダービー2着馬を出しながら、まだダービー馬は誕生していません。今週の新馬戦から、彼らを超える馬が現れるでしょうか。週末を、そして来年のダービーを楽しみに待ちたいと思います。

栗東編集局 坂井直樹

坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
2004年入社。毎週、競馬に臨むにあたって、ワクワク感のようなものは新たに持ち続けていますが、2歳馬は新馬戦が始まり、3歳馬は番組編成で年長馬との戦いへとステージが移るこの開催は、年間でも一番楽しみをもって臨む開催かもしれません。現場で競馬を見続けられる喜びと、それを伝える責任を噛み締めながら、今週も競馬場へ向かいます。