先週、JRAから4月19日までは無観客で競馬が開催されることが発表された。これで今春の阪神競馬はすべて無観客。自分は立場上、現場でレースを生観戦できているが、お客さんの歓声がないというのは、つくづく淋しいもの。ただ、通常だとかなり混む、競馬場周辺の道路はガラガラ。行き帰りの車がスムーズに動く点は有り難いが。

 7日にはついに新型コロナ感染拡大の緊急事態宣言が出され、対象地域は7都府県。その中には競馬場がある兵庫、東京、千葉も含まれている。今のところは無観客でできているが、これが出されている中で引き続き開催させてもらえるのか。ここ数日はヒヤヒヤとした気分で過ごすことになりそう。

 何しろ競馬開催が中止となると、競馬新聞の会社は作るもの、売るものがなくなってしまう。近年はもともと専門紙離れが見られ、営業的には苦戦を強いられている現状。2月末からの競馬場、ウインズの閉鎖によるダメージは想像以上にあったと聞いたが、開催中止となると、もうとどめを刺されることになってしまうかも。

 競馬は他のスポーツとは違い、開催して馬券を売ることにより、国に納付金が入る。ネット投票しか購入手段がない今、さすがに前年比割れの連続ではあるが、それでも先週の大阪杯は120億円もの売上げがあった。第一国庫納付金が10%だから、このレースだけで12億。春のトップシーズン到来で今週以降も同程度の売上げは見込めるわけで、この収入がストップしては、国もかなりの痛手だろう。

 今回の件でネット投票の加入者は加速的に伸びたよう。週末は家にいることを強く要請されている現状を考えると、家にいながら興奮を味わえ、うまくいけばお金も儲かる競馬は、貴重なレジャー。テレビ番組で触れるのをタブー視されていた感すらあったパチンコも、ここ数日でついに取り上げられるようになった。緊急事態宣言により、営業自粛の波は更に広がっていくだろう。どんな時代でもギャンブルは需要があるだけに、そうなると、競馬の存在意義は一層高まってくるのでは。

 他競技は軒並み中止でスポーツの話題が乏しくなっており、今週は珍しく月曜日に競馬の結果を一面で扱っているスポーツ紙があった。ここの心配をしている場合ではないのかもしれないが、最近は競馬開催日を除くと紙面はかなりペラペラ。野球関連は特集記事を組んだりしているが、2月のキャンプからやっているだけに、正直あまり興味は惹かれない。紙面作りにかなり苦労しているのが見て取れる。

 また開催中止となれば、馬主にとっては大打撃。レースがなければ賞金は入ってきようがないが、それでも馬はトレーニングして餌も食べるわけだから、預託料だけが引き続き発生。そんな事態が長引くようだと、馬を所有するのをやめてしまう人も出てきかねない。フリーの騎手は収入ゼロ。その他の厩舎関係者も収入は確実に減少と、負の連鎖がどんどん広がっていくこととなる。

 JRA職員の感染が新たに確認され、本当に予断を許さない状況。3月中はダービーが無観客なんてまさか、と思うところもあったが、今は何とか開催だけでもという考え方に変わってきた。まずは今週末、好メンバーの桜花賞が無事に開催されることを願いたい。

栗東編集局 青木行雄

 

青木行雄(調教取材担当)
昭和44年8月7日生 大阪府出身 A型
1993年入社。坂路調教担当。札幌開催時と西のローカル開催では本紙予想も担当。開催日はMBSラジオ「GOGO競馬サンデー!」、BS11「BSイレブン競馬中継」に出演。YouTubeで毎週配信している競馬ブックの予想動画ですが、今週はタレントの稲富菜穂さんに出演していただけることになりました。水曜の夕方にはご覧いただけるかと思いますので、どうぞお楽しみに。面識はないものの、昔はブログにコメントもしていたほどで、そこそこなファンだった。共演したかったが、撮影時間は当日の坂路調教をビデオで、ちまちまとチェックしている真っ最中。社内でチラッとでも拝見できれば嬉しいですけどね。