6月7日に英国エプソムダウンズ競馬場で行われた英ダービーG1は逃げたランボーンがそのまま押し切りました。人気は同厩のドラクロワに譲っていましたが、チェスターヴァーズG3からの連勝で、父系祖父ガリレオ、父オーストラリアに続いて英ダービーG1の父系3代制覇となりました。英ダービーの父仔制覇は数え切れないほどあり、父系3代制覇もこれが9例目となります。現代の血統表にも登場するところでは、ミルリーフ(1968年生)~シャーリーハイツ(1975)~スリップアンカー~(1982)、ガリレオ(1998)~ニューアプローチ(2005)~マサー(2015)、そして今回です。
ケンタッキーダービーでの3代制覇は、レイカウント(1925年生)~カウントフリート(1940)~カウントターフ(1948)、ペンシヴ(1941)~ポンダー(1946)~ニードルズ(1953)の2例にとどまっていて、父仔2代制覇も1960年代以降だと、スワップス(1952)~シャトーゲイUSA(1960)、シアトルスルー(1974)~スウェイル(1981)、アンブライドルド(1987)~グラインドストーン(1993)などがありましたが、21世紀に入ると絶えてしまっています。
日本ダービーでは父仔制覇がカブトヤマ(1930年生)~
ジャパンダートダービー改め東京ダービーとなって2年目を迎えたダートの“ダービー”はキズナ産駒ナチュラルライズが制して、“ダービー”変則父仔制覇を達成しました。前身のジャパンダートダービーを含めると、2020年ダノンファラオ(父American Pharoah=ケンタッキーダービーG1)、2016年キョウエイギア(父ディープスカイ)、2012年ハタノヴァンクール(父キングカメハメハ)、2002年ゴールドアリュール(父サンデーサイレンスUSA=ケンタッキーダービーG1)、2000年マイネルコンバット(父コマンダーインチーフGB=英ダービーG1)と、日米英の“ダービー馬”の産駒による変則父仔制覇が達成されています。意外に多いですね。
そこで、自国のダービーと国境をまたいでよそのダービーを父仔制覇した例を下にまとめました(1960年以降)。
よく、日本馬が外国に遠征して負けると「異種格闘技戦だから仕方がない」といわれます。馬場、気候、コース形態、流れなど様々な異質なことへの適応などを考えるとそれはそれで正しい面もあると思われますが、父から仔へと代を経ると壁を越えられるものでもあるようです。ケンタッキーダービー→英ダービーなど相当な異種格闘技ですし、日本ダービー→英ダービーも同様です。それでも、克服できるものなのです。
競馬は地面の上をより速くより遠くへ走る点において、地域によって外観は随分と違っていても、その本質はひとつの競技だということなのでしょう。
英ダービーG1 | |||
年度 | 勝ち馬(仔) | 父 | 父の勝利ダービー |
2024 | City of Troy | Justify | ケンタッキーダービー |
2023 | オーギュストロダンIRE | ディープインパクト | 日本ダービー |
2012 | Camelot | モンジューIRE | 仏ダービー |
2011 | Pour Moi | モンジューIRE | 仏ダービー |
2007 | Authorized | モンジューIRE | 仏ダービー |
2005 | Motivator | モンジューIRE | 仏ダービー |
1991 | ジェネラスIRE | Caerleon | 仏ダービー |
1984 | セクレトUSA | Northern Dancer | ケンタッキーダービー |
1977 | The Minstrel | Northern Dancer | ケンタッキーダービー |
1970 | Nijinsky | Northern Dancer | ケンタッキーダービー |
ケンタッキーダービーG1 | |||
年度 | 勝ち馬(仔) | 父 | 父の勝利ダービー |
1986 | ファーディナンドUSA | Nijinsky | 英ダービー |
東京優駿G1(日本ダービー) | |||
年度 | 勝ち馬(仔) | 父 | 父の勝利ダービー |
2005 | ディープインパクト | サンデーサイレンスUSA | ケンタッキーダービー |
2003 | ネオユニヴァース | サンデーサイレンスUSA | ケンタッキーダービー |
2000 | アグネスフライト | サンデーサイレンスUSA | ケンタッキーダービー |
1999 | アドマイヤベガ | サンデーサイレンスUSA | ケンタッキーダービー |
1998 | スペシャルウィーク | サンデーサイレンスUSA | ケンタッキーダービー |
1996 | フサイチコンコルド | Caerleon | 仏ダービー |
1995 | タヤスツヨシ | サンデーサイレンスUSA | ケンタッキーダービー |
1972 | ロングエース | ハードリドンGB | 英ダービー |
1964 | シンザン | ヒンドスタンGB | 愛ダービー |
1961 | ハクショウ | ヒンドスタンGB | 愛ダービー |
東京ダービー(ex-ジャパンダートダービー) | |||
年度 | 勝ち馬(仔) | 父 | 父の勝利ダービー |
2025 | ナチュラルライズ | キズナ | 日本ダービー |
2020 | ダノンファラオ | American Pharoah | ケンタッキーダービー |
2016 | キョウエイギア | ディープスカイ | 日本ダービー |
2012 | ハタノヴァンクール | キングカメハメハ | 日本ダービー |
2002 | ゴールドアリュール | サンデーサイレンスUSA | ケンタッキーダービー |
2000 | マイネルコンバット | コマンダーインチーフGB | 英ダービー |
関西編集局・水野隆弘
昭和40年10月10日生まれ、三重県津市出身。1988年入社。週刊誌の編集、調教採時担当。長い上半期のG1シリーズに区切りがつきました。このごろは海外G1の馬券発売も加わって、本当に儲けるチャンスは増えるばかりです。競馬ブックではコンビニのマルチコピー機で300円で買える「G1特集版」のほか、海外競馬は1レース70円のネット新聞を用意しています。G1が終わったタイミングでいってどうするのかということですが、どうぞ秋まで覚えていてください。買ってください。