ご褒美の一日、収穫あり

 血糖値が悪化した。

 放ってはおけない数字になってます、と知らされたのは2ヵ月前。

 かつてないほど先生に緊張感が漂っている。

 そしてひとつひとつの言葉が厳しかった。

 自覚がないわけではなかったけれど、そこまで悪化しているとは…… 

 そこから結構、頑張った。

 体重は10キロ近く落ちて、数値もやや良化。

 緊急事態からは一歩後退。おおげさに炭水化物を摂らないように努めた生活がある程度は実を結んだと言える状態にはなった。

 ひとりの時は外食はほぼしない。みんなで外食したとしても、自分だけは主食の米やパンや麺は食べないルールを守り続けてきた。

 それでも食欲がなくなったわけではない。定食やラーメン。特に甘いものは無性に食べたくなる日が多かった。

 とりあえず2ヵ月我慢できた。少しはご褒美を上げてもいいか。

 もとのもくあみにならないか、不安がない訳ではないけれど、今後もこの生活を続けるためには息抜きも必要だ。

 どうせ食べるのなら一番好きなものがいい。

 イメージはとんかつだ。休みの月曜日に少し遠出してうまい店まで行くことを決めた。

 電車を乗り継いで30分。昼は僅か1時間半の営業時間の店。

 12時少し前についた時点では外に6人ほど並んでいる。それでも10分ほど並んだ程度で店の中へ。

 物価高の影響か、ロースかつ定食は200円ほど値段が上がって2000円。

 世間の厳しさを肌で感じながらも、じゅるじゅると揚がっていく音を聞いていると甘いあの豚肉の味を思い起こして頭の中が一杯に。

 待つこと約10分。久しぶりに食べるちゃんとした昼食。

 白いご飯にソースを垂らしたロースかつをそっと乗せる。

 あっと言う間に食うのはもったいない。いつもより時間をかけて、少しずつ口の中でかみ砕いて味わった……

 ため息が出るおいしさ。食べ終えるのにいつもの倍、20分もかかってしまった。

 満足感と少しの罪悪感。これが人生の醍醐味かもしれない。

 このまま帰っては体に悪い。川崎のナイターなら散歩がてらにちょうどいいか。

 もうひと足伸ばして、久しぶりの川崎競馬場に行くことにした。

 前に行ったのはコロナ前。ひょっとすると10年近く前かもしれない。

 入り口はちょっと違う印象。右手にタッチパネル式の券売機がある。これで普通に入場券を買うのだろうと思ったら、当日の指定席も買えるようになっている。

 選択肢がたくさんある。予備知識はゼロ。気合を入れてきたわけでもない。まずは値段を考えて、入場券と合わせて200円の屋外一般席を確保。この値段なら見にくかったり、居ずらければ普通にベンチにでも座ってやればいい。

 1号スタンド2階のゴール過ぎ。レースを見る角度としては肝心なところは見えないけれど、パドックが近くて返し馬は良く見える。

 そして何より馬が近くて迫力満点だ。

 まだ少し肌寒いせいか周りにはほとんど人がいない。これも最高。

 日が徐々に暮れて行って、鮮やかなナイター照明に変わる感じもいい。

 これで馬券が当たってとんかつ代が出れば言うことなしだったけれど、そうはうまく行かない。

 自分の目を信じてパドック、返し馬を中心に判断して馬券を買い続けたけれど、あとちょっとというところまで来ても馬券には届かない。

 つくづく、当日の感覚だけではなく、前もっての下調べが必要なんだと思い知らされた。

 しかし、リニューアルされた阪神競馬場もいろいろな面白い席ができているようだけれど、川崎競馬場も知らないうちにいろいろな席ができている。

 いろんなお客さんのニーズに合わせられるサービスで、凄くいいことだと感じさせられた。

 もっと早く知っておくべきこと。年のせいだけでなく、どんどん緊張感がなくアンテナの範囲も狭くなっている。

 ご褒美の一日だったはずが、競馬の成績を含めて反省ばかり。

 それでもいろいろ気付きもあったいい一日だったか。

 JRAはこれからGIシーズンで佳境のダービーへ。

 お客さんは席を確保するのも大変。ただ、今のシステムなら席さえ確保できればゆったりと競馬観戦はできるのかもしれない。

 もう少しスタンドの中にベンチは置いてほしい気もするけれど、環境としては確実に良くなっているのだろう。

 いずれにしても楽しい観戦といいGIシーズンにこしたことはない。

 自分もそのお役に立てれば。一生懸命、頑張らせてもらいますので、よろしくお願いします。

美浦編集局 氏名 吉田 幹太

吉田幹太(調教担当)
昭和45年12月30日生 宮城県出身 A型
道営から栗東勤務を経て、平成5年に美浦編集部へ転属。現在は南馬場の調教班として採時を担当、グリーンチャンネルパドック解説でお馴染み。道営のトラックマンの経験を持つスタッフは、専門紙業界全体を見渡しても現在では希少。JRA全競馬場はもとより、国内の競輪場、競艇場、オートレース場の多くを踏破。のみならずアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、マレーシア、香港などの競馬場を渡り歩く、案外(?)国際派である。