名残り雪のあとに(田村明宏)

 昔から春は出会いと別れの季節と言われている。一般社会では年度末の3月終わりから4月初旬にかけてのことだが、競馬の社会では1カ月ほど早く2月の終わりから3月初旬がそれに当たる。今年も多くの方々、主に定年を迎えた調教師がこの世界に別れを告げた。平均寿命が延びている現在では70歳と言ってもまだまだ元気な方もいるので一律に同年齢で引退というルールも替えられてもいいように思うが、どこかで区切りは必要なので皆さんにはお疲れ様でしたと労う気持ちしか湧いてこない。今年、定年を迎えた方々には個人的に親しい人はいなかったが、一般ファンの時代から知っていた河内調教師がその中にいたことは月日の速さを感じない訳にはいかない。

 区切りの3月1週目の土日は特に関東地方は好天に恵まれて春のポカポカ陽気というより初夏を感じさせるくらいの気候で早くも夏の猛暑の心配をしていたが、週明けには一転、冬の寒気が逆戻りして東京では今年一番の雪が降った。昔の流行歌ではないが、春の初めに降る雪は名残り雪と言って冬の終わりを惜しむ意味がある。競馬開催中に雪が降ると我々関係者には悪い影響があるが、終わった後なら開催には影響がない。先輩たちが配慮してくれたお陰かもしれない。

 アーモンドアイの初仔として注目されていたアロンズロッドが2月8日の東京競馬でようやく初勝利をあげた。当日は未勝利戦とは思えないような歓声に包まれてさあこれからと思っていた矢先に放牧先のノーザンF天栄で骨折が判明。全治6カ月と診断された。血統的な注目度からすると現状は物足りなさもあったが、休養を挟んで成長した姿を見せてくれることに期待したい。一方で弟のプロメサアルムンドについて国枝師は「北海道で見てきたが、順調に来ているし、父がモーリスに替わったせいか、スピードがあって軽い走りをしている。5月頃には入厩して夏にはデビューできるんじゃないかな」と語っていたように明るい話題もあった。春は三寒四温と言って一進一退の天気が続くが、徐々にでも暖かい日が増えてくるし、桜の季節も近い。別れを惜しみながらも春の到来を待ちたい。

美浦編集局 田村明宏

田村 明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 О型
万全な対策が取られていたこともあって週初の3、4日の雪の影響はあまりなかったが、8日には再び、雨もしくは雪マークが出ている。開幕週の中山記念こそレースレコード決着になったが、週末は天気が崩れそう。今週、注目しているのは土曜11Rに出走予定のエミュー。少し古い話になるが、2年前のフラワーCは中山の不良馬場をものともせずに差し切った。再現があるかも。